ブラックホールはどんな天体?NASAが公開した最新シミュレーション映像がヤバすぎる
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「ブラックホールはどんな天体?NASAが公開した最新の理解に基づくシミュレーション映像がヤバイ」というテーマで動画をお送りしていきます。
●ブラックホールのでき方
本題の映像を紹介する前に、まずはブラックホールのでき方や基本構造など、映像をよりよく理解するために必要な前提知識を解説していきます。
ブラックホールは、超大質量の恒星が一生を終える際にその中心部に残ると考えられています。
太陽のような恒星は質量が大きい天体なので、中心部が物凄い高温高圧な環境になっており、そのような極端な環境でしか起きない「核融合」という反応が起き、その反応で供給されるエネルギーで明るく輝き続けています。
核融合は、原子核同士が衝突し、融合する反応です。
最初は最も小さく軽い水素という元素の原子核から始まり、それらがぶつかり合う事でヘリウム、炭素、酸素等といったさらに重い元素がどんどん作られていきます。
重い元素ほど核融合で生成されるために高い温度と圧力が必要なので、恒星の中でも大質量で重力が強く、中心部が高温高圧な恒星ほどどんどん重い元素が作られます。
そして太陽の8倍以上重い恒星の場合、最終的に核融合で鉄という元素ができます。
鉄は最も安定した元素なので、これ以上核融合で重い元素ができることはなくなります。
普段恒星は中心部で起こる核融合反応による外側に膨張していく力と、重力による内側に落ち込んでいく力が釣り合っているためその形状を維持したまま存在できます。
ですが太陽の8倍以上重い星の中心部で鉄ができると核融合が止まり、外側に膨張する力が弱まり、自身の重力に対抗する力を失い、星の中心に向かって急激に圧縮が起きます。
その結果圧縮された星の核は超高密度の中性子星という天体になるか、もしくはその中性子星すらも重力で潰されると今回の主題であるブラックホールになります。
具体的には太陽の8-30倍程度の質量の恒星だと中性子星が、大体30倍以上重いとブラックホールが残るそうです!
●ブラックホールの基本構造
続いてブラックホールの基本的な構造を紹介します。
太陽の30倍以上重い恒星の最期、あまりの重力で星の核が圧縮され中性子星すら耐え切れなくなった時、重力の崩壊は止まらず中心の一点に向かって無限に圧縮が続きます。
このように重力に対抗する力がなくなり、物質が際限なくそこに落ち続けるようになったブラックホールの中心の一点は、「特異点」と言います。
この体積0の特異点にブラックホールの持つ全質量が集中しているとされます。
そんな特異点の周囲では、重力が異次元に強く、特異点に近付くほど無限大に発散します。
特異点の周囲では、強大すぎる重力により、宇宙で最高速の光の速度ですらそこから抜け出せません。
ですが特異点から離れると少しずつ重力が弱くなり、次第に光の速度ならそこから抜け出すことができるようになります。
この脱出に必要な速度が丁度光速と等しくなる境界面は、「事象の地平面(地平線)」と言います。
事象の地平面より内側に入ると、この世の速度の上限である光速ですら抜け出せないので、そこから出てくることが絶対にできなくなります。
つまり完全に一方通行の世界です。
そこからは光も情報も一切出てこないので、事象の地平面の内部の世界は外側から知る事は絶対にできません。
そして事象の地平面内部からは光すら出てこないので、外から見ると真っ黒に見えています。
事象の地平面は脱出速度が光速を超えるか超えないかの境目というだけなので、ブラックホールの黒い部分に触れても何かにぶつかるということもなく、ただ特異点に向かって落ちそうです。
ただし事象の地平面以内の領域は外からは観測不可能なので、これまで解説した基本構造は、あくまで理論的に考えられている有力な説に過ぎません。
ブラックホールの内部について、正確なことは誰もわかりません。
ここまでが一般的にブラックホールの本体として扱われることが多いですが、その周囲の構造にも触れていきましょう。
まず事象の地平面の周囲には、「降着円盤」と呼ばれる円盤状の構造が渦巻いています。
これはブラックホールの重力に捉えられ周囲を公転する物質で構成されています。
ここに存在する物質はブラックホールの重力でとてつもないエネルギーを与えられ、光り輝いています。
続いては「宇宙ジェット」についてです。
ブラックホールの中には、光速に近い速度でジェットを放っているものもあります。
このジェットは宇宙ジェットと呼ばれます。
よく、「なぜ事象の地平面の中からは何も出れないのにジェットを噴出しているのか」という質問がありますが、ジェットはブラックホールの内部からではなく周囲から放たれていると考えられています。
実は降着円盤の物質のほとんどが、ブラックホールの内部に飲み込まれることなく極方向に辿って行ってジェットとして外に放出されると考えられています。
つまりジェットは事象の地平面の内部ではなく、外から放たれています。
●ブラックホールの最新シミュレーション
では今回の本題に入ります。
2019年、NASAは最新の物理学の理解に基づき、単体のブラックホールと降着円盤についてどのように見えるかを詳細に示したシミュレーションを公開しているので、見ていきたいと思います。
僕がTwitterに掲載した動画を用いて、解説を進めていきます。
一度入ったら絶対に出てこれないほど重力が強い領域「事象の地平面」からは光さえ出てこないので、先述の通り真っ黒に見えています。
そしてブラックホールの重力によって、降着円盤からの光の進路が歪められ、右奥からブラックホール本体の後ろを通って左から出てくるはずが、ブラックホールを飛び越えるようにしてこちらから見えています。
さらに降着円盤の下側へ放たれた光もブラックホールの重力で歪められて、ブラックホール本体の下側から飛び越えるようにして見えています。
そしてブラックホール左側の降着円盤は光速に近い速度で観測者の方向に向かっているため明るく、右側は遠ざかっているため暗く、左右非対称に見えるそうです。
さらにNASAは2021年には、ブラックホール同士の連星系の詳細なシミュレーションも公開しています。
大きく赤く描かれた方が太陽の2億倍、小さく青く描かれた方が太陽の1億倍の質量をそれぞれ持っている設定です。
青い方のブラックホールの事象の地平面の半径は約3億、赤い方は約6億にもなり、太陽半径の数百倍~1000倍近くにもなります。
これほど巨大だと、周囲に形成された降着円盤は実に数百万年単位で持続すると考えられています。
赤く重いブラックホールに青く軽い方のブラックホールが隠れるアングルから見てみると、本来赤いブラックホールに隠れて見えないはずの青いブラックホールが、赤いブラックホールの周囲にリングをまとうように見えています。
反対に青いブラックホールから赤いブラックホールを見ても、やはり背後のブラックホールが歪んで見えますね。
これは先ほどの単体ブラックホールのシミュレーションでも起きていた現象ですが、背後のブラックホールの降着円盤が放った光が前のブラックホールの重力で進路を歪められ、本来あり得ない姿で見えていることになります。
さらに連星系を上から見たアングルから青く小さいブラックホールの事象の地平面付近を覗くと、もう一方の赤いブラックホールを公転軌道面から見た際の姿が、その公転に合わせて移動している様子が見て取れます。
これは赤いブラックホールから放たれた光の進路が、青いブラックホールによって直角に歪められ、上から見ている私たちの目線に届いているということになります。
よく見ると赤いブラックホールにも青い像が映されています!
そして軌道面からブラックホールが重なる瞬間をさらに詳細に見てみると、ブラックホール同士が放った光の進路をお互いに重力で歪め合うことで、一方のブラックホールの姿があらゆるところに現れている様子が見て取れます。
さらにこの横から見たアングルでは、相対論の効果でブラックホールが遠ざかる際は大きく、近づく際は小さく見える奇妙な現象も起こることが示されています。