夏の夜、流れ星に願いを!
遠く地球の裏側、南米ブラジルのリオデジャネイロでオリンピックが始まりました。リオと日本の時差は12時間。このため、深夜から午前中にかけて応援したい試合が目白押しです。また、この数日の猛暑で、夜はなかなか寝付かれないという方も多いことでしょう。 一方、毎年8月は8月6日、9日の原爆の日、月遅れのお盆、15日の終戦記念日と平和や歴史、人びとの幸せや祖先への感謝など、心を静めて自分を取り巻くさまざまな事に想いを馳せる時期でもあります。
そんな時期だからこそ、夜空を見上げて星空や流れ星を楽しんでみていかがでしょうか。夏の夜空は日々の生活で疲れた心をも癒してくれるに違いありません。星ぼしの間を飛び交う流星に願いを込めるのもよいでしょう。
今週は夏の星空を見るのに最適の一週間。まず、今年の伝統的七夕は8月9日(火)です。宵空には上弦前の月(旧暦7月7日の月)が南西の空に輝いていますが、空が暗い所では、月が沈むとともに天の川がくっきりと浮かび上がり、その両岸におりひめ星、ひこ星が輝きます。
今週、深夜の時間帯になると、北から東の空にはカシオペヤ座の下方にペルセウス座が姿を現しています。夏の星空の風物詩とも言えるペルセウス座流星群(以下、ペルセ群)がすでに活動を始めています。ペルセ群は、毎年7月末頃から8月後半まで一か月近く出現する年間通じてもっとも活発な流星群の一つですが、毎年8月12~13日頃にその出現のピークを迎えます。最も流星群が活発な時を極大と呼びます。
今年は、日本時間で8月12日22時前後にペルセ群の極大を迎えると予想されています。しかし、12日の夜のみならず、その前後、10日から15日頃までは多くの出現が期待できそうです。観察のお勧めは上弦過ぎの月が沈んだ後、すなわち、深夜から明け方にかけてです。夕食後に仮眠を取り、ちょうど、オリンピックの競技開始に合わせて夜空を見上げるとよいでしょう。空の暗い場所で観察すれば、1時間に30個以上もの流星を見るチャンスもありそうです。
流星(流れ星)とは、宇宙空間にある直径1mm~数cm程度の塵粒(ダスト)が地球の大気とぶつかり、地球大気や気化した塵の成分が光を放つ現象です。流れ星には、散在流星と群流星があります。散在流星とは、いつどこを流れるか全く予測が付かない流星で、群流星とは、ある時期に同じ方向から四方八方に飛ぶようにみられる流星のことです。一方、群流星が飛んでくる方向を放射点(または輻射点)と呼びます。放射点がどの星座に含まれているかで、その流星群の名前が決まります。ペルセ群(ペルセウス座流星群)の場合、放射点はペルセウス座ガンマ星の近くにあります。8月中、放射点は夕方には地平線の上にありますが、実際に群流星を目にし始めるのは、もう少し放射点が高くなる午後9時から午後10時頃からとなります。明け方まで放射点は高くなり続けるので、真夜中頃から空が白み始めるまで観察しやすい時間帯が続きます。
それでは、流れ星を見る方法を具体的に説明しましょう。流星観察では、望遠鏡や双眼鏡は必要ありません。肉眼で観察しましょう。望遠鏡や双眼鏡を使うと見える範囲が狭くなってしまうため、一般の方の流星観察には適しません。まず、屋外に出てから暗さに目が慣れるまで、最低でも15分間は観察を続けるようにしましょう。人間の目の瞳孔は明るい所で小さく、暗い所で大きくなりますが、その順応には時間が必要です。個人差がありますが、10分以上、地上の明るい光源(水銀灯やネオンサインのような街明かり、車のヘッドライトなど)が直接、目に入ってこないようにしましょう。
流星は空のどこを飛ぶかは予測が付きません。流星群の場合も、放射点のある星座でのみ流星が見えるのでは全くありません。群流星の場合、放射点近くでは、ゆっくりとした動きで短い経路のみ輝きます。一方、放射点から離れた方向では、素早い動きで長い線を引いて輝きます。したがって、放射点の位置さえ確認すれば、自分の見ている方向では、どちらの方向からどちらに向ってどんなスピードで群流星が流れるかを予想することが出来ます。
虫に刺されないような防虫対策をしっかりおこないリラックスした服装・姿勢で無理をせずに楽しんでください。
国立天文台では、出現数が多いと予想される流星群の場合、流れ星を数えてウェブ上で報告しあおうという流星観察キャンペーンを行っています。今年のペルセウス座流星群では、8月10日夜から15日朝まで、「夏の夜、流れ星を数えよう2016」と題して、ウェブ上での参加型キャンペーンを行います。ぜひご参加ください。