北海道では鉄道も行政も「批判をすると嫌がらせを受ける…」 小樽市在住YouTuberが漏らした本音
産経新聞が2024年6月20日から26日にかけて掲載した「北の鉄路を考える」という連載を発端とし、JR北海道がこれまで十分に取材実績のある全国メディアに対して「無断撮影」だと抗議を繰り返していることが明るみに出た。2024年5月5日にフジテレビの衛星放送「BSフジ」で全国放送されたサンデードキュメンタリー「今こそ鉄路を活かせ!地方創生への再出発」では、JR北海道からBSフジに対して小樽駅舎や布部駅舎の外観撮影が「無断撮影」だとして抗議が寄せられていたことも発覚したことから、一部の鉄道系YouTuberにも困惑の声が広がっていることを2024年7月6日付記事(「JR北海道は話題にしたくない」BSフジ小樽駅舎撮影への抗議で鉄道系YouTuberに広がる困惑の声)で触れた。
小樽市在住YouTuberが漏らした本音とは
こうした中で、「【北海道】乗り物大好きチャンネル」を運営する北海道小樽市在住のYouTuber「北のたぬき」さんは、「最近は、JR北海道とか北海道の話題に触れたくないという人が増えた。YouTubeの動画も北海道の鉄道動画がかなり少なくなり、不穏な感じがする」と本音を漏らす。さらに「道庁や鈴木知事の批判をするとあちこちから嫌がらせを受ける」ともいう。
JR北海道はこの3月のダイヤ改正で特急列車の往復割引切符の廃止と全席指定席化を推進。割引切符については、「えきねっと」への誘導を図ろうとしたものの、その使い勝手の悪さが利用者に敬遠されたのか、中距離を結ぶ特急列車では高速バスにかなりの乗客を奪われた。特に札幌―室蘭間を結ぶ特急すずらん号での客離れが深刻で、ダイヤ改正以降、空席が目立つ車内の様子が相次いでSNS上に投稿された。こうした中で、5月の連休明けに行われたJR北海道の綿貫社長の定例記者会見では特急すずらん号の問題について記者からの質問が相次ぎ、綿貫社長は「全席指定席化と割引切符の廃止が影響している」という考えを示し、乗客が「高速バスや普通列車に流れていると想定している」と回答した。JR北海道は2025年4月から運賃の値上げを行うことを発表しているが「安易な値上げは客離れを招くことから、値上げ相応分の増収効果は見込めないのでは」という指摘もある。
さらに北海道庁が主導する北海道新幹線並行在来線対策協議会では、2022年3月密室協議の場で函館本線長万部―小樽間の廃止を強引に決定。この協議の場には地元のバス会社が呼ばれていなかったばかりか、廃止を決定してから1年以上が経過した2023年5月になってから鉄道代替バスの引き受けについてバス会社に相談をしようとしたところドライバー不足などを理由に引き受けを断られ、その後1年以上に渡って協議が止まったままの異常事態となっている。並行在来線のうち、余市―小樽間については輸送密度が2000人を超えており通常では鉄道廃止の対象とはなり得ない区間であり、仮にこの区間の鉄道をバスで置き換えようとした場合には、通勤・通学の時間帯だけで新たに十数台のバスと運転手の確保が必要になるという指摘もある。
鈴木直道知事が夕張市長時代に自らJR北海道に石勝線夕張支線の廃線を提案した「攻めの廃線」については、鉄道時代よりもバスが増便されて便利になったと喧伝されたが、その実態は、鉄道と比較して運賃も所要時間も大幅に伸びたことでかえって利便性の低下を招くことなり、夕張は外部から訪問しにくい街になってしまった。さらに、ドライバー不足の中、2023年10月には夕張市と札幌市を結ぶ夕鉄バスの路線バスが全廃された。今年の2024年10月には北海道中央バスが運行する札幌行の高速ゆうばり号と岩見沢行の路線バスも廃止され、夕張と市外を結ぶバス路線が消滅する。まさに夕張は交通崩壊の危機を迎えている。
これが北海道の実態であるが、こうした現状をSNSやYouTubeなどで指摘をすると「脅迫まがいのコメントを受けることがあり、北海道にはモノ言えぬ雰囲気がある」と北のたぬきさんは話す。民主主義を掲げるわが国において、北海道でこうしたモノ言えぬ雰囲気がまん延することは健全な議論の妨げとなり、より一層、北海道の衰退を招くことにはならないか、非常に不安である。
(了)