「JR北海道は話題にしたくない」BSフジ小樽駅舎撮影への抗議で鉄道系YouTuberに広がる困惑の声
2024年度に入り、JR北海道はこれまで十分に取材実績のある全国メディアに対して「無断撮影」だという抗議を繰り返していることは、2024年6月29日付記事(BSフジ「今こそ鉄路を活かせ」にJR北海道が抗議 制作会社社長が激白「小樽駅の外観撮影が無断撮影と」)と2024年7月1日付記事(テレビ東京「所さんの秘境駅」にJR北海道が「放送待った」!? 下金山駅ロケ、再編集し2カ月遅れで放送)で詳しく触れた。
産経新聞の連載が発端だった
ことの発端は産経新聞が2024年6月20日から26日にかけて掲載した「北の鉄路を考える」という連載で、JR北海道は「安全を確認し、乗客の顔が写らぬように配慮してホーム上で撮った列車写真を、デジタル産経のニュースから削除するように求めてきた」というものだ。これに対して、産経新聞社はJR北海道に対して「報道目的でホーム上で撮影した写真を掲載してはいけない法的根拠を示すようお願いしたが、締め切りまでに明確なお答えがなかった」ことから、産経新聞は連載の最終回でこの件について「いつからJR北海道は、ホームなどでの列車撮影を事実上禁止している中国や北朝鮮並みになったのだろうか」としたうえで、鉄道系YouTuberがホームや車内から撮った映像が削除されていない中で、「サービス精神に欠けるとか、ダイヤ編成が悪いとか、本当のコト」を書いたため、嫌がらせを受けたのではないかと報じた。
さらに、2024年5月5日にフジテレビの衛星放送「BSフジ」で全国放送されたサンデ―ドキュメンタリー「今こそ鉄路を活かせ!地方創生への再出発」についてJR北海道からクレームがあったことが判明。これは、この番組の制作を行った制作会社社長が、大阪市のミニFM局「エフエムひめ」が6月29日に制作した番組内で語ったもので、JR北海道が、小樽駅の外観撮影と布部駅の外観撮影、根室本線の廃線跡の撮影について無断撮影だと局に対して抗議をしてきたということが明らかにされた。この制作会社は、今までも旅番組でJR北海道の路線をほとんど撮影してきたが、無断撮影でクレームを受けたのは今回が初めてだったという。
これだけではない。2024年6月28日にテレビ東京系列で全国放送された「所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ」の秘境駅特集でも、本来であれば4月19日に放送予定だったものが放送直前で延期になり、日中の下金山駅のホーム上でロケを行った安田大サーカスの団長安田さんの映像が全カットされた状態で2ヶ月以上遅れて放送された。これについても、駅ホーム上での撮影についてJR北海道がテレビ東京側に抗議を行ったものと思われる。所さんの秘境駅特集ではこれまでもJR北海道の函館本線・渡島沼尻駅や日高本線・浜田浦駅など北海道各地の秘境駅でロケを行っており、取材実績は十分にある番組だ。
そして、JR北海道はYouTuberに対する規制も強めていることから、鉄道系YouTuberからは「このままでは誰もJR北海道のことを見向きもしなくなる」と困惑の声が上がり始めている。
鉄道系YouTuberも問題提起
鉄道系YouTuberの「女子鉄まほろ/としあき(中の人)」さんは、7月4日に配信したショート動画で、JR北海道が「駅舎の外観撮影すら大手メディアに対して抗議を行う」状態に対して問題提起を行った。動画では、撮影許可などの手続きが煩雑になれば今後「JR北海道を利用する番組は作らないという方向になると思います」と断言。さらに、「実際、旅番組などへもクレームを入れているようなのでJR北海道の観光列車などを取り上げる旅番組もなくなるかもしれない」「こんな感じでは北海道への旅行者も減りかねない」「YouTuberなどへも規制を強めていることからJR北海道は誰も話題にせず忘れ去られる運命かもしれない」と警鐘を鳴らした。
そして、「昨今では、鉄道系YouTuberなどにどんどん魅力を広めてもらおうとする鉄道会社も増えている中で、テレビすら拒絶するJR北海道はどこに向かっているのか」と締めくくった。
JR北海道のこうしたメディアに対する姿勢で、今後、北海道の鉄道を扱った番組やYouTube配信が減ることになれば、それはJR北海道の問題にとどまらず、鉄道沿線地域の観光振興に対しても大きなマイナスとなり、地域経済にも悪影響を与えかねない。このような組織体が本当に北海道の鉄道経営を行うのにあたってふさわしいのか再考する必要があるのではないだろうか。
(了)