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「全世代型」社会保障検討会議、当事者不在の有識者会議に有効な解決策は生み出せるのか

室橋祐貴日本若者協議会代表理事
(写真:つのだよしお/アフロ)

2019年9月20日、全世代型社会保障検討会議が開催された。

2019年の出生数が90万人割れする可能性が高いと報道されるなど、少子化は止まらない一方、ライフスタイルの多様化、「人生100年時代」と、社会保障の再構築が求められる中、最重要政策の一つになっている。

しかし、構成員を見ると、社会保障や労働経済の専門家、企業の代表者たる経団連会長はいるものの、労働者や医療・介護関係の代表はいない。

さらに、「全世代」と言っているにもかかわらず、平均年齢は高く(約64歳)、若者(子育て世代も含めて39歳以下と定義する)は一人もいない。

(有識者)

遠藤 久夫 国立社会保障・人口問題研究所所長(65歳)

翁 百合 株式会社日本総合研究所理事長(59歳)

鎌田 耕一 東洋大学名誉教授(66歳)

櫻田 謙悟 SOMPO ホールディングス株式会社 グループ CEO 取締役 代表執行役社長(63歳)

清家 篤 日本私立学校振興・共済事業団理事長(65歳)

中西 宏明 株式会社日立製作所 取締役会長 兼 執行役(73歳)

新浪 剛史 サントリーホールディングス株式会社 代表取締役社長(60歳)

増田 寛也 東京大学公共政策大学院客員教授(67歳)

柳川 範之 東京大学大学院経済学研究科教授(56歳)

出典:全世代型社会保障検討会議 構成(年齢は筆者が追記)

もちろん、「有識者」会議であり、平均年齢が高くなるのは必然だと思うが、それでも代表性、正統性担保のために、原則、主要ステークホルダーの代表、労使と老若男女の代表者を最低一人ずつは入れるべきではないだろうか。

変化が激しく、テクノロジーの活用が必須なこれからの時代においては、若者の方が新しい価値観や知見を持っていることも多く、こうした意思決定の場に若者がますます求められる。

10月8日の衆院本会議で、安倍総理の所信表明演説に対する代表質問で、国民民主党の泉健太政調会長が同様の指摘を行なったが、今までと異なり、「全世代」と訴えているからには、若者も入れるのが当然だと思われる。

【全世代型社会保障検討会議】

先月、政府に『全世代型社会保障検討会議』が発足しました。ただ「全世代型」と言いながら、会議メンバーに若い世代と労働者の代表が入っていません。総理、若い世代代表や労働者代表もメンバーに入れるべきではありませんか。

出典:国民民主党・泉健太政務調査会長 代表質問

これに対し、安倍総理は「様々な立場の方々から幅広くご意見を伺う機会を設ける方向で検討」すると答弁した。

「全世代社会保障改革に関係する政府内の各会から代表者を集める形で構成されています。今後検討会議において、様々な立場の方々から幅広くご意見を伺う機会を設ける方向で検討してまいりたいと思います」

出典:安倍総理の答弁

「当事者」不在の有識者会議が多数存在する

こうした「当事者」不在の有識者は、この「全世代型社会保障検討会議」だけではない。

10月から始まった幼児教育・保育の無償化策で、認可外保育施設の無償化範囲などを検討した有識者会議「幼稚園、保育所、認定こども園以外の無償化措置の対象範囲等に関する検討会」は、子育て世代が不在で、批判の声が挙がった。

林 文子 横浜市長

(座長代理)樋口 美雄 慶應義塾大学商学部教授

(座 長)増田 寛也 東京大学公共政策大学院客員教授

無藤 隆 白梅学園大学大学院子ども学研究科特任教授

出典:幼稚園、保育所、認定こども園以外の無償化措置の対象範囲等に関する検討会

さらに、アフターピルのオンライン診療検討会(厚労省)は女性が1人しかおらず、本来は男女の問題であるにもかかわらず、若い女性に責任を求める発言が目立った。(参考:「若い女性は知識がない」「若い女性が悪用するかも」。アフターピルのオンライン診療検討会で出た意見【検討会の経緯まとめ】

他にも具体例を挙げ出したらキリがないほど、有識者会議の構成員の正統性に対する批判は多い。

不思議なのは、ここに、無戸籍当事者の実情を知っている人が誰一人入っていない、ということだ。

出典:不思議すぎる無戸籍者解消「有識者会議」

結果的に、有識者会議でまとめた提言に対して、当事者から批判の声が挙がることも多い。

障害当事者抜きに障害当事者のことを決めて人権を侵害していた過去に一切学ばず、当事者抜きで子育て支援政策を語っている限り、我が国の子育て支援政策は、いつまで経ってもリアリティが欠如した「それじゃ無い感」満載のトンデモ路線から抜け出ることはないでしょう。

出典:子育て当事者「排除」の有識者会議は、幼児教育無償化を語れるのか

筆者が代表を務める日本若者協議会では、2015年から「行政モニター、審議会・委員会等の構成員にもっと若い当事者を参加させる」ことを提言しており、ぜひ早急に実現して頂きたい。

日本若者協議会 政策提言一覧

日本若者協議会代表理事

1988年、神奈川県生まれ。若者の声を政治に反映させる「日本若者協議会」代表理事。慶應義塾大学経済学部卒。同大政策・メディア研究科中退。大学在学中からITスタートアップ立ち上げ、BUSINESS INSIDER JAPANで記者、大学院で研究等に従事。専門・関心領域は政策決定過程、民主主義、デジタルガバメント、社会保障、労働政策、若者の政治参画など。文部科学省「高等教育の修学支援新制度在り方検討会議」委員。著書に『子ども若者抑圧社会・日本 社会を変える民主主義とは何か』(光文社新書)など。 yukimurohashi0@gmail.com

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