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「何年かかっても潰しに来い」とマリコ様イズムを発揮した伊藤麻希と、珠理奈から栄魂継承した荒井優希

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
伊藤デラックスで荒井優希にギブアップ勝ちした伊藤麻希(東京女子プロレス提供)

 SKE48の荒井優希のプロレスデビュー戦で、大きな壁として立ち塞がった伊藤麻希。

 試合後のマイクアピールでは「何年かかっても伊藤麻希を潰しに来い」と荒井に檄を飛ばしたが、このシーンを見た48グループ・ファンの脳裏には、2012年に開催された第4回AKB48選抜総選挙のシーンがフラッシュバックしたはずだ。

「潰すつもりで来てください」と後輩に檄を飛ばした篠田麻里子

 第4回総選挙で5位となった篠田は、「後輩に席を譲るという方もいるかもしれません。ですが私は、席を譲らないと上に上がれないメンバーはAKB48では勝てないと思います」と語り、「悔しい力をどんどん先輩たちにぶつけて、潰すつもりで来てください。私はいつも待っています」と後輩に世代闘争を呼びかけた。

 篠田が口にした「潰しに来い」と同じ言葉を叫んだ伊藤。篠田が48グループを愛し、その未来までを考えたように、伊藤もまた東京女子プロレスを愛しているからこそ吐いたセリフだった。

 麻里子様の発言に危機感を抱いた48グループの次世代メンバーは、その1年で大きく成長して、翌年の第5回総選挙では若手が大きく躍進。その姿に満足した篠田は、「私、篠田麻里子はAKB48を卒業します」とグループからの卒業を発表した。

 この第5回総選挙で初めて神7入りを果たしたのが、姉妹グループSKE48の松井珠理奈(6位)と松井玲奈(7位)のダブル松井。初めて1位を獲得したHKT48の指原莉乃と合わせて、姉妹グループのメンバーたちが新しい風を吹かせた総選挙だった。

AEW参戦で世界に目を向けた伊藤麻希

 あの頃の麻里子様のように、伊藤が東京女子からの卒業を考えているとは思わない。

 だが、伊藤の野望は日本だけではなく、プロレスラーとして世界を舞台に活躍することだ。

 今年2月にアメリカ第2のプロレス団体であるAEWが主催したAEW女子世界王座次期挑戦者決定トーナメントに出場した伊藤。1回戦で敗退したが、そのファイトスタイルとキャラクターが評価されて、3月に行われたAEWのペイパービュー大会に招聘され、アメリカのビッグイベントを経験。それだけでなく、AEWの新番組「AEW Dark Elevation」ではメインイベントに抜擢されるほどにアメリカのプロレスファンから受け入れられた。

 東京女子とAEWは高木三四郎とケニー・オメガの強い信頼関係があり、コロナが収まって日米を自由に行き来できるようになれば、東京女子の選手がAEWのリングに上がる機会も増えていくはずだ。AEWに移籍するのではなく、東京女子に在籍したまま日米両方のリングで戦う。そうなるときを見据えて、伊藤は荒井に厳しくも愛がある言葉を吐いたはずだ。

SKE48加入当時の珠理奈を彷彿させるプロレスラー荒井優希

 プロレス本格デビュー戦を果たした荒井優希の姿を見ていると、SKE48に初期メンバーとして加入直後、11歳でAKB48の10枚目シングル「大声ダイヤモンド」のセンターに大抜擢を受けた松井珠理奈の姿が重なる。

 アイドルとしての経験はないのに、将来性と潜在能力の高さからセンターを任された珠理奈。荒井もプロレス本格デビュー戦から大きな話題となり、荒井のデビュー戦はメインイベント以上の注目を集め、大きく報じられた。松井と荒井のどちらも話題性が実力を大きく上回った状態で大役を任された。

 珠理奈がSKE48だけでなく48グループ全体のトップに立つアイドルへ成長したように、荒井も東京女子だけでなく女子プロレス界全体のトップに立てる可能性を秘めている。

 豆腐プロレスのエースとしても活躍した松井は、48グループとプロレスの橋渡し役と栄魂の継承者として荒井を後継者に指名。

1年くらい前に、卒業が決まっていた珠理奈さんに急にバスの一番後ろの席に呼ばれて「私がいなくなった後にプロレスの仕事をしてほしい。SKEから1人呼ばれるってなったら荒井優希が出てほしい」って、すごい真っすぐな目で言われたことがあったんです。(東京スポーツ:プロレスデビューのSKE48・荒井優希が独占激白! 受け取った「松井珠理奈さんの思い」

 プロレス本格デビューが決まってからも松井と荒井は頻繁に連絡を取り、珠理奈はアドバイスを送り続けてきた。

 小学生だった珠理奈が「大声ダイヤモンド」のセンターに抜擢されて、名古屋から一人でAKB48の中に入ったときに、真っ先に声をかけてくれて面倒を見てくれたのは麻里子様だった。

 「プロレスラーとして認めました。成長を楽しみにしてようと思います」と言う伊藤も彼女なりのツンデレなやり方でプロレスの世界に入ってきた荒井を気遣っている。

 麻里子様と珠理奈が強い絆で結ばれたように、荒井を評価した伊藤と荒井もリングでの戦いを通じて信頼関係が芽生えた。

 始まったばかりの伊藤と荒井のストーリーはこれからどのように発展していくのだろうか?

荒井優希をスリーパーホールドで締め上げる伊藤麻希(写真提供:東京女子プロレス)
荒井優希をスリーパーホールドで締め上げる伊藤麻希(写真提供:東京女子プロレス)

スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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