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「ピッチ・クロック」の導入で最も影響を受けそうな、投球間隔の長い投手は…

宇根夏樹ベースボール・ライター
ケンリー・ジャンセン(アトランタ・ブレーブス)Apr 16, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 来シーズンから導入される新ルールの一つに、ピッチ・クロック(ピッチ・タイマー)がある。

 走者がいない時は15秒以内、いる時は20秒以内に投球動作を始めないと、1ボールがカウントされる。マイナーリーグで導入しているピッチ・クロックの場合、捕手からの返球を受けた時点でタイマーがスタートしているので、メジャーリーグでも同様だと思われる。

 スタットキャストが表示しているピッチ・テンポは、それとは少し異なる。1人の打者(1打席)に対して投げた球の、リリースから次のリリースまで――例えば、1球目と2球目の間――の時間だ。

 ただ、まったく同じでなくても、ピッチ・テンポの遅い、投球間隔が長い投手ほど、ピッチ・クロックの影響を受ける可能性は高いはずだ。

 今シーズン、250球以上を投げている投手のうち、走者がいない時のピッチ・テンポ(平均)が遅い2人は、26.1秒のケンリー・ジャンセン(アトランタ・ブレーブス)と26.0秒のジオバニー・ガイエゴス(セントルイス・カーディナルス)だ。走者がいる時も、この2人が遅い。こちらは、ガイエゴスが31.6秒、ジャンセンは31.5秒となっている。

 彼らは、どちらもリリーバーだ。ガイエゴスはセットアッパー、ジャンセンはクローザーとして投げている。ガイエゴスがFAになるのは2024年のオフだが、ジャンセンは、昨オフに続き、今オフもFA市場に出る。昨オフ、ロサンゼルス・ドジャースと交わしていた5年8000万ドル(2017~21年)の契約が満了し、1年1600万ドルの契約でブレーブスに入団した。

 ピッチ・クロックの導入は、今オフ、ジャンセンを迎え入れようと検討する球団にとって、懸念材料になり得る。ピッチ・クロックの制限時間を超えないよう、投球間隔を短くすることにより、パフォーマンスが低下するかもしれない。

 ちなみに、今シーズン、ダルビッシュ有(サンディエゴ・パドレス)のピッチ・テンポは、無走者時が20.9秒、有走者時は25.0秒。大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)は、21.4秒と26.5秒。メジャーリーグ全体の平均は、18.1秒と23.3秒だ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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