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環境省の人事異動にみるカーボンプライシングの行方。炭素税の本格導入に向けた布石?

土居丈朗慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)
環境省の今夏の人事異動は、今後のカーボンプライシング論議に影響を与えるか(写真:西村尚己/アフロ)

菅義偉内閣が力を入れる「グリーン」。2050年のカーボンニュートラルに向けて、2030年の温室効果ガス排出量の削減目標を、2013年度比で従来の26%から46%に引き上げた。

この目標達成には、追加的な施策が必要とみられる。その中で、「炭素国境調整措置に、日本はどう対処すべきか:カーボンプライシング論議の行方」でも詳述されているが、カーボンプライシング(炭素の価格付け)も議論が進められている。

特に、今春には、EU(欧州連合)が炭素国境調整措置の検討し始めたことから、にわかに、その対応についてわが国で検討を迫られた。その背景は、「EUの炭素国境調整措置は、あなどれない。日米首脳会談を控え、わが国のカーボンプライシングはどうするか」でも触れたところである。

ただ、この議論を菅内閣として、2021年1月から始めたものの、2021年6月に閣議決定された「骨太方針2021」では、踏み込んだ方針は示されなかった。

今夏までの政策論議では、カーボンプライシングはいわば「不戦敗」状態である。経済界の反対と、その意を汲んだ経済産業省の姿勢が、そこに現れたといえる。

カーボンプライシング、中でも炭素税は、経済産業省と環境省が意思統一できなければ、税制を所管する財務省は税制改正要望を受け付けられない。財務省が率先して、炭素税の本格導入を企画することは、当面ない。なぜなら、目先の負担増について反対を押し切って導入できても、やがて税収が減って、長期的には財政収支の改善にはつながらないからである。

炭素税は、経済界が反対している中で、本格導入できたとしても、脱炭素化が進めば税収は減り、カーボンニュートラルが実現できれば税収はほぼゼロとなって、税収を恒久的に確保できる税目ではない。

ちなみに、ここでいう本格導入とは、炭素税に該当するわが国の税には、石油石炭税の一部である「地球温暖化対策のための税」があって、CO2排出量に応じた税率を課す税となっているが、これが特例措置として導入されていることや、CO2排出量1トン当たり289円と少額であることから、本格的には導入されていないとの認識に基づく。

こうした情勢で、わが国のカーボンプライシングは、このまま何も動きはないままとなるのか。と思いきや、今夏の環境省の人事異動で、今後に影響を及ぼしそうな顕著な特徴のある動きが見られた。

小泉進次郎環境大臣の下で、元来カーボンプライシングに積極的とされる中井徳太郎事務次官(1985年旧大蔵省入省)が続投となり、中井氏も歴任した大臣官房審議官の白石隆夫氏(1990年旧大蔵省入省)も留任となった。

それだけではない。今般の人事異動で、環境省幹部の要職である

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慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)

1970年生。大阪大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。慶應義塾大学准教授等を経て2009年4月から現職。主著に『地方債改革の経済学』日本経済新聞出版社(日経・経済図書文化賞とサントリー学芸賞受賞)、『平成の経済政策はどう決められたか』中央公論新社、『入門財政学(第2版)』日本評論社、『入門公共経済学(第2版)』日本評論社。行政改革推進会議議員、全世代型社会保障構築会議構成員、政府税制調査会委員、国税審議会委員(会長代理)、財政制度等審議会委員(部会長代理)、産業構造審議会臨時委員、経済財政諮問会議経済・財政一体改革推進会議WG委員なども兼務。

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