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史上最も危険な太平洋 強力台風・ハリケーン続々と

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
23日朝、ひまわり8号がとらえた台風25号の赤外画像。クレジット:気象庁

ちょっと大きすぎはしないでしょうか。

台風25号の目が異様なほどに大きすぎるのです。その幅、およそ110kmといったところでしょう。それでいて強い勢力のままで何日も存在しているのですから驚いてしまいます。こうした台風は海外では「環状台風」などと呼ばれ、長期間勢力を維持できる台風として知られています。

ところで、1つ前の台風24号はフィリピンの北で消滅しましたが、ルソン島で深刻な洪水などを引き起こし、少なくとも54名の方が亡くなっています。

今年は台風の数がいつになく多いことはよく知られていることですが、問題なのは数だけではないようです。台風の階級で最も強い「猛烈な台風」が、年平均1〜2個のところ、今年はすでに4つも発生しています。

世界で続々と発生する猛烈ストーム

エルニーニョによる海水温の上昇等により、太平洋では、いつになく多くのストームが作られています。ハワイ周辺の中央太平洋では、すでに8つのトロピカルストームやハリケーン(台風に相当する強さ)が発生、これは最多記録であった1982年の4個をゆうに上回る数です。

それだけではありません。およそ「非常に強い・猛烈な台風」の強さに相当するカテゴリー4と5の擾乱が、今年は太平洋だけで22個も発生しているといいます。これもまた史上最多記録。前回の記録は2004年の18個でした。

今最も警戒されているハリケーン

National Hurricane Center Facebookより
National Hurricane Center Facebookより

現在、今年最大級のハリケーン・パトリシアがメキシコに接近しています。日本時間金曜(23日)15時の情報によると、パトリシアはハリケーンの分類で最も強いカテゴリー5の勢力で、中心気圧は892hPa、最大瞬間風速は100メートルにも達しています。892hPaと言うのは、東部太平洋の記録で観測史上最低気圧です。アメリカのハリケーンセンターによると、カテゴリー5のままで、日本時間土曜日朝までに上陸する見込みです。

元来、メキシコ西岸は風の影響でハリケーンの上陸が少ないところです。これまでにカテゴリー5のハリケーンが上陸したのは1959年の一回のみ。この時は、1800人もの死者を出しているのです。

エルニーニョは、来年の春まで続くという予想が出ていますので、これからも引き続き、太平洋は海水温が高い状態が続きそうです。ただでさえ、毎年のように強大な台風が10月後半から12月にかけて発生し、フィリピンなどで壊滅的な被害をもたらしている昨今です。これから先、さらに強い嵐が発生するかもしれないのです。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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