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「ヤンチャで手に負えない」と子犬を3日で放棄...飼い主の本音と問題点に迫る

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:イメージマート)

保護犬・保護猫活動に取り組むNPO法人「みなしご救援隊犬猫譲渡センター」(本部・広島)の投稿が、SNS「X」で約1.4万回リポスト(再投稿)されるなど話題となっています。まいどなニュースによれば、あるゴールデンレトリバーの子犬が購入からわずか3日で飼い主によって保護センターに引き渡されたということです。

購入したばかりで、まだかわいい盛りの子犬をたった3日で手放すとは、一体どういう事情があったのでしょうか。

ヤンチャで飼えない子犬を手放した飼い主とは

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まいどなニュースによりますと、飼い主の男性は一人暮らしで、テレビ番組を見て犬との暮らしに憧れ、ブリーダーから子犬を購入しました。しかし、わずか3日後に「ヤンチャで手に負えない」として保護センターに引き取りを申し出たといいます。

男性は「ブリーダーから『すごく飼いやすい』と言われたから飼ったが、実際は違った」と話していたそうです。

子犬を飼うという意味

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子犬を飼うことは、その命を守り、育てる責任を負うことを意味します。かわいい姿に癒やされる一方、犬の習性を理解し、適切に対応する知識と努力が必要です。特に子犬の時期は、手間や時間を多く割く覚悟が求められます。

この男性の場合、一人暮らしで子犬に十分な時間をかけられなかった可能性があります。以下は、子犬を飼う際に押さえておきたい注意点です。

1、トイレのしつけ

トイレのしつけは重要です。トイレのしつけがうまくできず、手放す人は多いです。

最初はトイレですることを失敗するのが当たり前ですが、叱るのではなく、成功したときに大げさに褒めることで、正しい場所で排泄する習慣をつけましょう。

子犬は膀胱がまだできあがっていないために容量が少ないので排泄のタイミングが頻繁になります。食事や遊びの後にはトイレに連れて行くようにしましょう。

2、やっていいこと、悪いことを教える

子犬にはやっていいこと、悪いことを教えることが大切です。

人間社会で一緒に生活するためには、子犬の頃から教えないとトラブルになりやすいです。

たとえば、噛んだり、人に飛びついたりする行動を放置すると、成犬になってから問題行動として定着することがあります。不適切な行動をしたらその場で静かに注意し、代わりに噛んでよいおもちゃなどを与えるなど、望ましい行動を誘導しましょう。

3、食事の管理

子犬は成長期に体を作っていくので、食事は大切です。

健康な体を作っておかないと成犬になって病気しやすい犬になってしまいます。

子犬用の完全栄養食のフードを与えてください。手作り食を与える場合も専門家に相談して栄養が偏らないように注意してください。

人の食べ物を与えることは避け、消化器官や成長に悪影響を与えないよう気をつけましょう。オヤツを与えるときも吟味してあげないと、下痢や嘔吐の原因になることもあります。

子犬との生活は手がかかる部分も多いですが、適切なケアと愛情を注ぐことで、健やかな成長と強い絆を築くことができます。この責任と喜びをぜひ楽しんでください。

ゴールデンレトリバーの性格

今回のケースは、大型犬のゴールデンレリトリバーです。

この犬種は、優しくて社交的な性格で知られています。その温和な気質から、家族犬としても非常に人気があり、また、他の動物や人とも友好的に接することができます。基本的に穏やかで攻撃性が低いため、飼いやすいです。

非常に知能が高く、しつけやトレーニングに対する適応力が優れているのも特徴です。この性質から、ゴールデンレトリバーは盲導犬や介助犬、セラピードッグとしても活躍しています。飼い主に対して忠誠心が強く、人の指示に従う意欲が高い一方で、愛情深さも際立っています。

なぜ、購入後3日で手放しが起きるのか?

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ゴールデンレトリバーは確かに、知能が高くフレンドリーな犬です。それは子犬の時期にトレーニングをしっかりした結果なのです。


ゴールデンレトリバーは成犬になると体重が30kg前後に達する大型犬で、子犬であっても家の中を走り回れば家具が倒れるなどの問題が起きることもあります。また、性格的に活発で落ち着きがないこともあります。そして、子犬ときは、はしゃぎすぎることがあるのが、この犬種の特徴です。

家族の一員として人と触れ合う時間を大切にするため、長時間の留守番は苦手な傾向があります。活発で遊び好きな一面もあり、外での運動や遊びを楽しむことが大好きです。特に、水遊びやボール遊びなどは彼らの得意分野です。

ただし、運動不足になるとストレスが溜まる可能性があります。そのため、留守番時間が長いと家の中でものが破壊されるということもあります。SNS上では、羽枕を破って部屋中が羽だらけという投稿もあります。

ネット社会のいま、犬を購入するときの注意点

犬を飼いたいと思ってネットで調べていると、いまの社会はその情報ばかり目につきます。

SNS上でのゴールデンレトリバーは、赤ちゃんと一緒にいる、帰宅すると玄関で出迎えてくれる、ソファで飼い主と一緒に座ってテレビを見ているなどの平和でかわいい画像にあふれています。

その投稿は真実だと思いますが、それはゴールデンレトリバーのできごとの一部なのです。それ以外は、飼い主は犬のトイレの世話をしたり、1時間の散歩をしたり、病気の犬を動物病院に連れて行っているかもしれません。

日常の全部をSNSで投稿しているわけではないので、大型犬のゴールデンレトリバーの子犬を飼う大変さなどはわかりにくいのかもしれません。

まとめ:大型犬を飼いたい人へ

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SNS上の情報ではなく実際の犬を見て、その犬を飼っている飼い主に実際に会って話を聞いてみましょう。

文字でゴールデンレトリバーが成犬になって30kgになると読んでも実感がわかない人がいます。こんなに大きくなるとは思っていなかったという飼い主もいます。

大型犬は小型犬より短命だし、フィラリア症の予防薬もチワワなどの小型犬より数倍の料金になります。

購入後にすぐに手放すような事態を避けるためには、購入前に犬種の特性や成犬時の大きさ、必要な世話について十分な情報を収集することが不可欠です。ペットは単なる商品ではなく、命ある存在です。飼い始める前に責任感を持つことが何より重要です。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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