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インターポール(国際刑事警察機構)への要請はあるか?仏司法当局、拉致容疑で日本人妻に逮捕状発行。

プラド夏樹パリ在住ライター
請願のために欧州議会を訪れたフィショ氏(写真:ロイター/アフロ)

11月30日、フランス時間で16時、経済紙レゼコー紙は、フランス司法当局が日本に在住するフランス人男性の日本人妻に対して、未成年者の拉致・傷害の容疑で逮捕状を発行したことを報道した。その中で、「フランス政府がインターポール(国際刑事警察機構)に逮捕への協力を要請した場合」と、つまり国際逮捕手配が言及されている。昨日、筆者が発信した記事はフィガロ紙の記事を中心にしたものだったが、それに追加する形で、このレゼコー紙の記事を以下に翻訳し、フランスでの報道の大きさをお知らせしたい。

わずか11ヶ月の次女を車のトランクに閉じ込めて?

「2018年に東京で日本人妻に子どもを拉致されたヴァンサン・フィショ氏は、これまでに何度も東京の警察署に出向き、取り合ってくれと頼んだ。家の監視カメラには、妻がわずか11ヶ月の次女を車のトランクに閉じ込めて家を出ていく様子が映像が残っており、それも警察に証拠物件として見せたという。しかし、日本の警察は、プライベートな問題だからという理由で、いかなる被害届も受理しなかったのである。そして3年後の今日、フランス司法当局はこの事件に関して、フィショ氏の日本人妻に逮捕状を出した」と、事件の流れと傷害容疑の理由が書かれている。

「(中略)これは、tsubasa(6歳)とkaede(4歳)に再会するためにフィショ氏がこれまで続けて来た激しい戦いの一環である。日本の裁判所に対して行ったほとんど全ての申し立てが実を結ばなかったため、この元トレーダー39歳は、東京オリンピック期間中に3週間にわたるハンガーストライキを行った。それでも日本の裁判所はまったく動じなかったが、これを機会に、数百人の同じような境遇にある親たちが動き始めた。

日本の司法では離婚後の共同養育は存在しない(筆者注:フランスは親が結婚していても離婚しても共同親権で、様々なケースがあるが基本的には共同養育)。超保守的な(原文はUltra-conservateurs)判事は、『監護者の継続性原則』を貫くためという理由で、最初に子どもを「拉致」した親に、必ず監護権を与える。もし、監護権を持たない親が子どもたちに会おうと試みると、警察がすぐに出動し、取るに足らない理由をつけて(原文ママ motif futile)逮捕されてしまうこともある。

このようなメカニズムを弁護士と打ち合わせした上で、フィショ氏の日本人妻は子どもを連れて蒸発した。家庭裁判所が離婚成立までの間、彼女に単独監護権を認めるであろうことを計算した上でのことだ。彼女は、夫を訴えてすらいないのである。(中略)」

フランス政府がインターポール(国際刑事警察機構)に国際逮捕手配を要請する可能性

フランス司法当局が発行した逮捕状は、今すぐ、彼女を脅かす効力はないかもしれないが、2022年初めに決着がつく予定の離婚調停に影響を与えるかもしれない。フィショ氏は『私たちは、離婚の条件と子どもたちの今後の生活について交渉している最中です。フランス司法当局から重大な容疑で逮捕状が出ている人物に、単独親権を与えることができるのかどうか?』と言っている」

記事の最終段落に、「逮捕状発行で、この事件が別次元の事件に発展する可能性もある。フランス政府がインターポール(国際刑事警察機構)に逮捕への協力を要請する場合は、日本人妻に赤手配書、つまり国際逮捕手配書が発行され、彼女は逃亡者とみなされることになる。これは世界各国で重大な容疑を受けている人物の居場所を突き止め逮捕するための制度である。」とある。

(筆者注:赤手配書が発行されると、それぞれの国の間で犯罪人引き渡し条約が締結しているかどうかにかかわらず容疑者は身柄を拘束され、送還される)

これまで国際逮捕手配された事件といえば、よど号ハイジャック事件、日本赤軍事件といったテロ関連の事件を思い出す読者が多いかもしれない。しかし、欧州の人々にとっては、子どもの連れ去りは「プライベートな問題」の一言では済まされない、人権を踏みにじる重大事件だ。フランス政府がインターポールへ逮捕への協力を要請というのは「あり得る」こと、日本政府はどのように今後、対応するつもりなのだろうか?

※12月2日、日本時間朝1時半に、訂正しました。

※12月2日、日本時間6時20分に、訂正しました。

パリ在住ライター

慶応大学文学部卒業後、渡仏。在仏30年。共同通信デジタルEYE、駐日欧州連合代表部公式マガジンEUMAGなどに寄稿。単著に「フランス人の性 なぜ#MeTooへの反対が起きたのか」(光文社新書)、共著に「コロナ対策 各国リーダーたちの通信簿」(光文社新書)、「夫婦別姓 家族と多様性の各国事情」(ちくま新書)など。仕事依頼はnatsuki.prado@gmail.comへお願いします。

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