遅いというだけで危険な台風18号が南大東島近海で発生、8月の台風のように遅い動き
台風18号の発生海域
令和4年(2022年)9月28日21時、台風18号が沖縄県の南大東島近海で発生しました。
令和4年は、8月までは平年より少ない台風発生数だったのですが、9月に7個も発生したことから、ほぼ平年並みの発生数となりました(表)。
また、上陸数は、台風4号が7月5日6時前に長崎県佐世保市付近、台風8号が8月13日17時半頃に伊豆半島、台風14号が9月18日19時頃に鹿児島市付近に上陸と3個あり、平年並みとなっています。
フィリピンの東海上では、インド洋から南シナ海を通ってやってくる西風と、太平洋高気圧の南へりをまわる東風がぶつかり、モンスーントラフと呼ばれる気圧の低い領域ができています。
ここで、熱帯低気圧が発生し、その熱帯低気圧が台風に発達するのですが、ラニーニャ現象が起きると、モンスーントラフの位置が平年より北西にずれます。
このため、ラニーニャ現象のおきている今年、令和4年(2022年)8月から9月の台風の発生場所は、例年より北西、つまり、日本に近い海域にずれており、台風18号も同じでした(図1)。
台風18号の進路予報
台風17号は、日本の東にあって東北東から北東に進んでおり、9月30日(金)には千島の東で温帯低気圧に変わる見込みで、日本への影響はなくなりました。
しかし、発生したばかりの台風18号は、今後も南大東島の南を北よりに進み、9月29日(木)にかけて大東島地方に接近する見込みです(図2)。
大東島地方では、強風や高波に注意が必要です。最新の気象情報に注意してください。
台風18号の進む海域は、海面水温が台風発達の目安とされる27度を上回っていますが、渦がしっかりせず、暴風域を持つまで発達しないと考えられており、10月3日(月)には熱帯低気圧に変わる見込みです。
台風18号は9月末の台風にしては動きが遅いという特徴があります。
台風の進行速度
例年、9月末にもなると上空の強い西風が日本上空まで南下し、台風はその風に流されて北東進するようになります。
そして、同じ緯度でも、季節が進むにつれ、進行速度は上がってきます(図3)。
9月末であれば、北緯20度から25度では時速20キロくらいでも、北緯30度まで北上すれば、時速30キロくらいにあがるというのが台風の統計から言えることです。
しかし、今年は上空の強い西風が南下してこないため、南大東島近海で発生した台風18号は、現在は時速20キロくらいで北上していますが、北緯30度位に達したころから停滞する予報となっています。
まるで、8月の迷走台風のようです。
下層に暖かくて湿った空気が流入すると、大気が不安定となり、局地的に激しい雨が降る可能性があります。
台風18号の移動速度が遅いということは、台風周辺の暖かくて湿った空気が長時間にわたって日本列島に入ってくることを意味します。
また、雨が降る時間が長くなると、それだけ地中の水分量が増え、土砂災害が発生し易くなります。
遅い台風というのは、暴風域をもたない台風であっても、遅いということだけで危険な台風なのです。
タイトル画像、図2の出典:ウェザーマップ提供。
図1、表の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。
図3の出典:「饒村曜(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計(進行速度)、研究時報、気象庁」に筆者加筆。