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史上最多・最少を集めました、2017年子どもの統計

平岩国泰新渡戸文化学園理事長/放課後NPOアフタースクール代表理事
(提供:アフロ)

もうすぐ2017年が終わろうとしています。今年も子ども関連の統計が出揃いました。史上最多・最少が数多くありましたので、集めてみました。史上最多・史上最少の統計から、子どもたちの今が見えてくると思います。

まずは2017年史上最少部門です。

<史上最少の部>

1、子どもの出生数

2017年推計:94万1,000人

(2016年確定:97万6,978人) *厚生労働省発表

昨年に続き、子どもが生まれる数が最少の代表格の数字になってしまいました。今年も出生数が昨年よりもさらに3.6万人減りました。昨年は「1899年の統計開始以降初めて100万人を割り込む!」と100万人割れショックが話題になりましたが、もはや100万人割れは当たり前になりつつあります。残念ながら、しばらく私たちはこの出生数史上最少を更新し続けることになりそうです。

ちなみに年間の死亡者数は134万人でした。差し引きで40万人の人口が自然減です。40万人の都市と言うと、東京都品川区、神奈川県横須賀市、大阪府豊中市、宮崎県宮崎市、これらの市区が毎年丸ごとなくなるような人口減少を続けていることになります。

2、赤ちゃんの体重

2015年 男子:3,040g 女子:2,960g

(1975年 男子:3,240g 女子:3,150g) *厚生労働省「人口動態統計」

赤ちゃんの体重が小さくなっています。出生時の体重は、この40年概ね継続して低下を続け、200gほど減りました。逆に、全体における2,500g未満の赤ちゃんの割合は増え続け、男子:10.6% 女子:8.4%(1975年頃 男子:5.5% 女子:4.7%)とほぼ倍増しました。赤ちゃんが小さくなっているのは他先進国とは逆の傾向だそうで、出産の高齢化や救命医療技術の向上など様々な要因が言われています。

3、高校の中途退学者

2016年:4万8千人

(2015年:4万9千人) *文部科学省「平成28年度児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」

高校の中途退学者は年々減っています。近年のピークは1990年の12.4万人でしたので、平成に入って3分の1になりました。もちろん高校生の人数も減っていますので、それに応じてということもあります。しかし、中途退学率もずっと減少を続けており、2016年の中途退学率は1.4%です。近年のピークは2.6%ですので、ほぼ半減です。人数の減少と退学率の減少の掛け算で退学者数が年々減っているわけです。

4、少年犯罪

14-19歳の検挙人数 2016年:3万2千人

(2015年:3万9千人) *警察庁「平成29年警察白書」

これは厳密には史上最少かははかりかねますが、近年ずっと少年犯罪が減っています。14-19歳の検挙人数は2007年には10万4千件ありましたので、この10年で3分の1近くに減りました。全検挙人数に占める少年犯罪の割合は14.1%でこれも減っていて2007年の同数字は28.4%で半減しています。つまり「犯罪そのものが減っていて、少年による犯罪はより減っている」ということになります。ちなみに少年と言うと男子をイメージしますが、分類上の用語で男女合わせた数字です。少年犯罪の中で男女の割合は、男子:88% 女子:12%です。年々女子の割合が減っていて、2007年には女子の割合が24%ですので、半減しています。先ほどの記載に付け加えると「犯罪そのものが減っていて、少年による犯罪はより減っている、中でも女子が大きく減っている」と言えます。

5、出会い系サイトの被害

出会い系サイトに起因する事犯 2016年:42人

(2015年:93人) *警察庁「出会い系サイト及びコミュニティサイトに起因する事犯の現状と対策について」

ちょっと意外なデータかもしれません。出会い系サイトに起因する事件が減って、被害児童数は史上最少になりました。しかしこれにはからくりがあります。かわりにコミュニティサイトに起因する事犯は、2016年に1,736件(昨年1,652件)と史上最多になっていて、2017年も最多を更新する見込みです。若者が騙されてしまう場はSNSに急速に移っているのです。

6、虫歯になる中高生

虫歯の割合 2017年:中学生37.3%、高校生47.3%

(2016年 中学生37.5%、高校生49.2%) *文部科学省「学校保健統計調査」

虫歯になる子は近年ずっと低減傾向で、昨年に続き中高生は過去最少になりました。幼稚園35.4%(昨年35.6%)、小学生47.1%(48.9%)も昨年より改善傾向です。未処置の歯がある子の割合も小学生23.0%、中学生16.2%、高校生19.7%と過去最少になりました。未処置の歯がある子の割合は30年前は現在の3倍ほどの割合でした、歯の健康はずっと継続して進んでいます。

続きまして、2017年史上最多部門です。

<史上最多の部>

7、保育園の児童

2017年:255万人

(2016年:246万人) *厚生労働省発表

こちらも史上最多の代表格の統計、保育所の入所児童数です。昨年も史上最多ですが、昨年より8.8万人保育園児童が増加し、記録を更新しましました。こちらももうしばらく更新を続けることになりそうです。ちなみに幼稚園の園児数は134万人で、前年の140万人より6万人減りました。

8、学童保育の利用児童

2017年:115万人

(2016年:108万人) *全国学童保育連絡協議会資料

こちらも毎年最多を更新し続けています。ちなみに学童保育の数は約3万ヶ所まで増えて、これも史上最多です。日本の小学校の数は約2万校ですので、小学校1校に1.5ヶ所の学童保育があることになります。小学1年生の学童保育利用者数は37万人、日本の小学1年生の数は106万人ですので、小学1年生の35%が利用していることになります。この比率も年々上がっています。

9、学童保育の待機児童数

2017年:16,929人

(2016年:15,839人) *同協議会資料

学童保育の利用者数に続いて、待機児童数も昨年に引き続き史上最多を更新しました。学童保育も一生懸命数を増やして受け入れ人数を拡大していますが、追いつかない状況です。保育園の待機児童数は2.6万人です。学童保育の待機児童数も保育園同様に社会問題として認識をしていかないと対策が追いつかない状態です。その状態から「小1の壁」と呼ばれる社会問題が深刻化しています。

10、いじめの件数

2016年度:32万3,800件

(2015年度:22万5,100件) *文部科学省発表

いじめの認知件数は今年も史上最多を更新しました。しかも、昨年比約10万件増の急増となりました。内訳を見ると小学校:23万8千件(昨年比157%)、中学校:7万1千件(昨年比120%)と小学校の急増が目立っています。今年もいじめが原因と見られる自殺のニュースを見ることがありました。2013年にいじめ防止対策推進法が施行され、各自治体や学校でも努力が続けられていますが、なかなか対策が追いつかない状況です。

11、児童虐待の相談件数

2016年度(速報):122,578件

(2015年度:103,300件) *厚生労働省資料

児童相談所での児童虐待相談対応件数が過去最多になりました。昨年と比べて約2割の大幅な増加となりました。子どもは減り続けているのに虐待相談件数が増加し続けているところに深い闇を感じます。最も多いのは心理的虐待で6.3万件(昨年比5割増)でした。都道府県別で見ると、最も多いのは東京都:1.2万件、次いで大阪府:1.0万件。昨年比で最も増加率の高いのは福岡県の昨年比187%、最も減少率の大きいのは高知県の昨年比77%でした。難しい家庭が孤立しないように社会で支えていく取り組みが今後も必要です。

12、家庭内暴力

2016年:2,676件

(2015年:2,531件) *警視庁「平成28年中における少年の補導及び保護の概況」

家庭内暴力が年々増加しています。10年前の2007年は1,213件ですので倍増です。中学生・高校生は全体と同様に概ね倍増ですが、小学生は10年前に比べて4倍に急増しています。「保護者の虐待も最多、子どもの家庭内暴力も最多」並べて見ると相当悲しくなるデータです。来年以降、改善に転じたいものです。

13、目の悪い子ども

視力1.0未満の子どもの割合 2017年:小学校:32.5% 中学校:56.3%

(2016年:小学校:31.5% 中学校:54.6%) *文部科学省「学校保健統計調査」

近年子どもの視力は低下傾向が続いており、小中学校で裸眼視力1.0未満の子の割合が史上最多となりました。原因はやはりスマホやゲームの影響であることは否定できないでしょう。40年前の同じ数字を見ると、小学校17.9% 中学校35.2%です。随分視力が下がって来ていることがわかると思います。

14、耳の病気

2017年 耳の病気にかかった子の割合:小学生6.2%、中学生4.5%、高校生2.6%

(2016年 小学生6.1%、中学生4.5%、高校生2.3%) *文部科学省「学校保健統計調査」

中耳炎や外耳炎など、耳の病気にかかった子どもの割合が、調査を始めた1995年以降最も多くなりました。ちょっと意外なニュースでした。先ほど見た通り、虫歯になる子は年々減っており、昔と比べて子どもの健康はしっかり手入れされているからです。「スマホの普及でイヤホン使用頻度が増えたから?」いやいや「耳掃除のし過ぎでは?」などと要因分析がされています。

皆さま、いかがだったでしょうか。子どもたちの今が見えてきたでしょうか。2017年、今年も子ども関連の色々なニュースが流れ、悲しい事件も多々ありました。「イマドキの子」が何か昔と違う生き物になってしまったかのような伝えられ方がすることがありますが、日々彼らを見ていて思うのは「子どもは元気だ」ということです。現代の子どもたちも昔と変わらず元気です。

とはいえ、子どもが減り続けていることは変わりがないですし、まだまだ子育てに不安が大きい社会であると思いますので、不安を安心に、そして希望に変えていけるように、来年もまた頑張りたいと思います。

新渡戸文化学園理事長/放課後NPOアフタースクール代表理事

1974年東京都生まれ。1996年慶應義塾大学経済学部卒業。株式会社丸井入社、人事、経営企画、海外事業など担当。2004年長女の誕生をきっかけに、“放課後NPOアフタースクール”の活動開始。グッドデザイン賞4回、他各種受賞。2011年会社を退職、教育の道に専念。子どもたちの「自己肯定感」を育み、保護者の「小1の壁」の解決を目指す。2013年~文部科学省中央教育審議会専門委員。2017年~渋谷区教育委員、2023年~教育長職務代理。2019年~新渡戸文化学園理事長。著書:子どもの「やってみたい」をぐいぐい引き出す! 「自己肯定感」育成入門(2019年発刊)

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