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「2/3段選択GBI」が迎撃試験に成功、米本土弾道ミサイル防衛システム改良型

JSF軍事/生き物ライター
米ミサイル防衛局より「2/3段選択GBI」

 12月11日、米ミサイル防衛局は米本土弾道ミサイル防衛システムGMD用の迎撃ミサイルGBI改良型の迎撃試験FTG-12に成功したと発表しました。これは3段式ロケットモーターのうち1段のみを使用せず2段モードで交戦することが可能になった「2/3段選択GBI」と呼ばれる改良型で、目標が接近した状態でも交戦が可能となります。GBI改良計画は5年間の休止期間を経て再始動しました。

Homeland Missile Defense System Conducts Successful Intercept Of Target - Missile Defense Agency

 迎撃実験では「2/3段選択GBI」の3段目をわざと点火せず、大気圏外迎撃体EKVを早期に放出して、より近距離で交戦を行っています。標的はIRBM(中距離弾道弾)で、C-17輸送機からの空中投下で行われました。GBIは固定サイロに装填された超大型の迎撃ミサイルで、本来はICBM(大陸間弾道弾)を迎撃する用途ですが、これでより射程が短いIRBMなどとも柔軟に交戦が可能になりました。またICBM相手でも不意打ちや飽和攻撃を受けて初期迎撃に失敗して敵ミサイルに懐に潜り込まれても、GBIの2段モードを用いて接近迎撃で対応することが可能になります。

 なお米ミサイル防衛局は今回の発表でも従来通り、「米本土弾道ミサイル防衛は北朝鮮やイランなどの”ならず者国家”を対象としたもので、ロシアと中国の弾道ミサイルを阻止する目的のものではなく、そのような能力も無い」と名指しで説明しています。これは迎撃システムで大国間の核抑止力の均衡を崩すと核軍拡競争を招いてしまうからです。アメリカはわざと本土防衛用の迎撃システムの能力と数を自主規制し、ロシアと中国による全力のICBM等の発射による核飽和攻撃は防げない程度に調整して、北朝鮮やイランなどの”ならず者国家”の発射する少数の弾道ミサイルならば完封できる丁度よい能力の保有を目指しています。

 しかしそれは当然になりますが、北朝鮮やイランなどの”ならず者国家”の弾道ミサイル戦力がどんどん増強されるほど、迎撃側の能力の調整が難しくなります。アメリカが過剰な迎撃能力を手にしたら、ロシアと中国を刺激してしまうことになるでしょう。北朝鮮は既にICBMを手にしました、まだ数は少ないですが、将来はどうなるでしょうか。イランは今のところ欧米を刺激しないように、自身の弾道ミサイルを射程2000km以下に自主規制する制限を課していますが(欧州の主要部を射程に入れない目的)、将来方針が転換される可能性は否定できません。

 なお実は2段式GBIは欧州弾道ミサイル防衛の初期構想で計画されていたことがあります。これは段選択可能ではなく単なる3段式GBIの小型版でしたが、ロシアを刺激し過ぎることを警戒した当時のオバマ大統領が中止を決めて、2段式GBIより速度が遅くなる欧州イージスアショア(SM-3)に変更されたという経緯があります。

 新しい「2/3段選択GBI」は能力で言えば2段式GBIと同じことが可能になったと言えます。それはIRBMにも対応できることを意味しており、今のところ計画は全くありませんが、米本土以外への配備も再び選択肢に入れることも可能です。

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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