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白鵬対照ノ富士で「世代交代」が実現か? ドラマティックな9年ぶり全勝対決

飯塚さきスポーツライター/相撲ライター
写真:日刊スポーツ/アフロ

冷静な大関と”奇襲”を仕掛けた横綱

千秋楽で対峙する横綱に力水をつけてもらい、虎視眈々と白星を、優勝を、そして綱を狙う大関が、ゆっくりと土俵に向かった。相手は、自身の復活から1勝4敗と分がよくなかった関脇・高安。しかし、今場所の大関は、この高安をまったく問題にしなかった。

立ち合いから、両者低い姿勢での差し手争い。照ノ富士はじっくり攻める。そして、左上手をつかんだ瞬間、引きつけて一気に出て寄り切り。危なげない相撲だった。場所を通して、綱取りとは思えない冷静さが際立つ。

14連勝のバトンを受け取るように、照ノ富士から力水をつけられた横綱・白鵬。しかし、この日は不思議な”奇襲”に出た。

軍配が返ると、なんと俵ギリギリまで下がったところに仕切ったのだ。館内も困惑のどよめき。そのままふわりと立ち、激しい張り手を食らわせながら、じりじりと正代に詰め寄る。両者いったん体が離れるが、横綱がしっかりまわしを取ってつかまえると、その体勢で前に出て、最後は浴びせ倒した。

どんな意図の立ち合いだったのか定かではない。ただ、結果として、ここまで場所を牽引してきた二人の全勝同士の対戦が、千秋楽に実現することとなった。

大横綱と次期横綱による奇跡の一番が実現

9年前の名古屋場所千秋楽でも、白鵬は全勝対決を演じた。迎え撃ったのは、当時まだ大関だった日馬富士。この時は、勢いに乗る日馬富士が、スピードを生かした堂々の相撲で横綱を寄り切り、自身初の全勝優勝を果たした。

あれから9年。またしても全勝対決に臨む横綱・白鵬。9年経って再び全勝優勝争いをするという事実だけでも驚異的だ。しかも、相手はかつて対峙した日馬富士の弟弟子である照ノ富士ときている。なんとドラマティックな展開だろう。

戻ってきた横綱が、見事なカムバックの象徴としての全勝優勝を果たすのか。はたまた、序二段からの奇跡の復活劇を見せた照ノ富士が、確実とされる横綱昇進に花を添え、白鵬との「世代交代」を見せつけるのか。

梅雨明けと共に、名古屋は一段と暑い一日を迎える。

<参考>優勝争いの行方

▽14勝 白鵬 照ノ富士

白鵬と照ノ富士の勝ったほうが全勝優勝

スポーツライター/相撲ライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライター・相撲ライターとして『相撲』(同社)、『Number Web』(文藝春秋)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書に『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』。

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