トルコ占領下のシリア北部で自由シリア軍(TFSA)所属組織どうしが激しく交戦
トルコによって占領されているシリア北部。アレッポ県北部の「ユーフラテスの盾」地域(2016年占領)、アレッポ県北西部の「オリーブの枝」地域(2018年占領)、「平和の泉」地域(2019年占領)からなる同地で戦闘が絶えない。
戦闘は、トルコの支援を受ける自由シリア軍(Turkish-backed Free Syria Army:TFSA、正式名は国民軍)とシリア軍、あるいはTFSAとクルド民族主義民兵組織の人民防衛隊(YPG)を主体とするシリア民主軍との間で行われているのではない。
むろん、アレッポ市北のタッル・リフアト市一帯地域(いわゆるシャフバー地区)、ラッカ県北部のM4高速道路沿線では、トルコ軍、TFSAとシリア軍、シリア民主軍が散発的に戦火を交えている。だが、トルコ占領地内で戦っているのはTFSAに所属する組織どうしだ。
ラアス・アイン市での衝突
「平和の泉」地域の拠点都市の一つであるハサカ県ラアス・アイン市(クルド語名はスィリー・カーニヤ)では7月3日、TFSAに所属する武装集団どうしが重火器を使って激しく交戦した。
交戦したのは、ハムザート師団とスルターン・ムラード師団。
きっかけは定かではない。だが、英国を拠点とする反体制系NGOのシリア人権監視団は、市内マハッタ地区(アルーク石油ステーション一帯)への生活用の送電が停止したことが発端だと発表、国営のシリア・アラブ通信(SANA)は、略奪品の分配をめぐる口論がきっかけだったと伝えた。
衝突発生を受け、内務治安部隊(いわゆる自由警察)とトルコ軍が介入し、戦闘は一時収束した。
だが、ハムザート師団とスルターン・ムラード師団は再び交戦した。
最終的には国民軍に所属する東部自由人連合がラアス・アイン市に至る街道を封鎖、ハムザート師団とスルターン・ムラード師団の兵力を引き離すことで、事態は収束した。
YPGに近いハーワール・ニュース(ANHA)によると、戦闘はラアス・アイン市郊外にも拡大し、双方合わせて数十人の死傷、シリア人権監視団によると、戦闘員4人が死亡した。
また、戦闘で住宅などにも被害が及び、ANHAやSANAによると、女児1人が巻き添えとなって死亡、女性1人が負傷した。
タッル・アブヤド市での衝突
ラアス・アイン市と並ぶ「平和の泉」地域の拠点都市であるラッカ県タッル・アブヤド市(クルド語名はギレ・スピ)でも7月4日、TFSAに所属する武装集団どうしが激しく交戦した。
交戦したのは、マジド軍団とシャーム戦線。
戦闘は、マジド軍団が本部として使用していた農業銀行をシャーム戦線が制圧したのを受けて発生、重火器での撃ち合いにより7人が負傷した。
(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)