「政治とカネ」せめて一般国民、企業並みにせよ
またぞろ「政治とカネ」の問題だ。
日本は世界でもクリーンな国だが、政治資金だけは何十年も変わらぬ「後進」ぶりだ。毎回、マスメディアはスキャンダルとして一時大騒ぎするだけで、問題の整理すらしない。政治家はせいぜい小手先の法律改正をするだけだ。この辺で打ち止めにしたい。
小渕優子議員の場合、お金の出入りも使い方もあまり把握していなかったようだ。
なぜこんなことが起こるのだろうか。理由は次の二つだ。一つは、政治家の「財布」がたくさんあって議員本人ですら全体を把握していない人が多いこと。もう一つは、政治資金の流れや使い方をチェックするしくみがほとんどないこと。どちらも会社などなら考えられないことだ。以下、少し詳しく見て、処方箋も示したい。
まず、国会議員の「財布」について。
国会議員は政治資金を受け取る際、政党支部、資金管理団体、政治団体という三種類の「財布」を持っている(図 参照)。企業や労働組合などの寄付が政党支部でしか受け取れないこと以外は、後の二つはほぼ同じだ。しかも、政党支部と政治団体はいくつでも持つことができる。さらに、政治団体の場合は代表者が議員以外のことも多い。実質的に十を超える政治団体を持っている議員もいるという。これらの「財布」それぞれにお金の出入りがあるのだが、それらの収支報告を連結するなど、ひとまとめにしなくてよいのだ。加えて、報告する先が総務省だったり、都道府県選管だったりするから、議員の政治資金の全体像を知るのは並大抵のことではない。議員本人も分かっていない背景にはこんなしくみがある。二世議員の場合、親の代からのベテラン秘書などに任せっきりになるのは無理ない面もある。もちろん、この不透明なしくみを意図的に利用して政治資金の不当な使い方をしている議員もいるだろう。
そこで処方箋の第一は、議員の「財布」を資金管理団体に一本化し、さらに議員が代表を務める政党支部(政党支部といっても、公明、共産両党以外は、実態は議員個人の政治団体と変わらないものが多い。)を連結することだ。会社なら当然のことだし、個人でも「別ポケット」を作ったりすると、すぐ「脱税だ」ということになる。政治資金が非課税なのは、世の中のため(公益)に使うからという理由なのに、それをいいことにしてお金の把握すらできないような状態は直ちに正すべきである。なお、これらの他、議員歳費に加えて全議員に毎月100万円支給される「文書通信交通滞在費」など議員個人の「財布」もある。これら個人に入るお金は国費であるのに領収書の添付どころか報告義務すらないが、ここではふれない。
次に、資金のチェックについて。
資金の出入りが明確になれば、次はその集め方、使い方が適正かどうかチェックしなければならない。会社ならば会計士や監査法人など外部の専門家によるチェックが義務付けられ、不祥事がある度に厳しくなってきた。政治資金については、2009年から「登録政治資金監査人」による監査が義務付けられたが、「登録政治資金監査人」には弁護士、税理士の資格があれば実質的に誰でもなれる。この監査のチェック項目も、「帳簿が保存されているか」「明細が記載されているか」「計算が合っているか」など、極めて初歩的、外形的なチェックにすぎない。使い方の妥当性など実質的なチェックにはほど遠い。これは国会議員も地方議員も同じで、だからずさんな使い方がまかり通ることになるのだ。会社法上のルールに加え、税務調査も厳しく行われる会社と比較すると信じられないアンバランスで、会社の会計担当者など、これを見ると怒りをおぼえるだろう。
処方箋の第二は、議員の政治資金全体への会社に準じた外部監査義務付けである。
以上に加え、収支報告書のコピーやインターネット上での公開・印刷がいまだに義務化されていないため、有権者がチェックしようにもしにくいという問題もある(インターネットで収支報告書原本を公開している選挙管理委員会は47都道府県のうち17都府県)。政治資金情報を役所には提出しても有権者にはなるべく見せないようにしていると言われてもしかたない。
政治資金の問題が出るとすべての国会議員が疑惑の渦中に入り、マスメディアは「身体検査はしたのか」などとつまらないことを書く。制度が不透明性を許しており、故意と過失の区別が付かないためだ。政治にある程度のお金はかかる。要は、お金の流れの透明性を確保することだ。そうすれば、「真の悪」も明らかになる。大多数の議員にとってはその方がすっきりするだろうし、それを理由に審議をストップするなど国会運営の無駄もなくてすむ。
くり返しになるが、問題の核心は「政治家のカネの出入りの全容が見えるようにすること」だ。
1.政治資金管理の一本化
2.外部監査の義務化
3.すべての収支報告書のコピーとインターネット公表の義務化
の三点を国民の声で実現したい。