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4月から大企業で増えるであろう「ハラスメント」とは?

横山信弘経営コラムニスト
「帰れ」と言われても、仕事が終わらないと帰れない(写真:アフロ)

■ ジタハラが増えるか

4月から大企業で増えるであろう「ハラスメント」とは、ずばり「ジタハラ(時短ハラスメント)」です。

残業時間の上限規制を柱とする働き方改革関連法が、4月1日から施行されます。(残業上限規制に関しては、大企業は19年4月から。中小企業は20年4月から適用される)

2016年の12月に、日本企業が直面する新たなリスク ~「時短ハラスメント(ジタハラ)」の実態の記事を書いたころは、このように社会のルールそのものが変わるとは私も予想していませんでした。しかし「時短ハラスメント(ジタハラ)」が、昨年「新語・流行語大賞」のノミネート30語にも選ばれたことからもわかるように、世間の関心は強く高まっています。

「残業が多い=頑張っている」

という風潮から、

「残業が多い=管理能力が低い。だらしない」

という風潮へと、急激に変化しているのです。

「昨日、終電まで仕事してたよ」と同僚に言っても、誰も「お疲れさん、大変だったね」と返してくれません。まるで「お客様のところへ遅刻しちゃった」と口にしたかのように、「ちゃんとしろよ。最近たるんでるんじゃないのか?」と言われてしまう時代です。

■ もしも6ヵ月連続で45時間残業したら

新ルールにおいては、残業の上限が原則「月45時間」「年360時間」になります(特別条項付き協定を結べば別)。

「年360時間」ということは、平均すると「月30時間」。しかし月単位の上限は45時間です。これはどういうことか。簡単にシミュレーションしてみると、イメージがわくことでしょう。

たとえば最初の6ヵ月間、マックスの45時間の残業をしつづけたとします。「45時間×6ヵ月=270時間」ですから、上限360時間のうち「270時間」を最初の半年で消化した計算になります。

こうなると、残りの半年間で残業できる上限は、マックス90時間。月平均にすると「15時間」です。いきなり残業を3分の1に減らすことができればいいですが、組織の風土、人の習慣はそう簡単に変わりません。このような実態を会社側がキャッチすれば、管理本部から現場へ強烈なプレッシャーをかけてくるはずです。

違反すれば会社が罰則を受けます。罰則の内容は、「6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金」。この内容が重いか軽いかは、人それぞれ受け止め方は違うでしょう。ただ、先述したとおり「遅くまで仕事をしている=管理能力が低い。だらしない」と受け止められる時代です。

会社が罰則を受けたと世間に公表されれば、「管理能力が低い。だらしない会社」とレッテルを貼られるのは必至。超人手不足の時代ですから、会社側は何としてもこのような事態を避けようとします。

だからジタハラが発生するのです。

■ ジタハラの構図

パワハラは、上司と部下との関係で起こることが大半です。

しかしジタハラは、上司と部下との関係では起こりにくい。現場を知らない管理本部と、現場をあずかる責任感の強い管理監督者との間で起きるものです。

ワークライフバランスを重視する部下は早く帰宅してしまうが、直属の上司は「結果を出せ」「部下を育てろ」と成果を求めてきます。お客様はドンドンと要望を吊り上げ、「納期を厳守しろ」「明日までに配達してくれ」と言ってきますし、あげくの果てに管理本部が、

「どうして昨日は夜の9時まで残ってたんだ。今週は毎日、夜の7時には退社しろ。いいな!」

と言ってきたら、頭がおかしくなってきます。

「そうは言われてもお客様が……」「会議が長い本部長に言ってくださいよ……」「新人の部下は、仕事が遅い割に、早く帰宅するし……」

と言い返しても、「そんなこと知らん」「ちゃんと部下を育てろ」と怒鳴られるだけです。管理本部としては、お客様からクレームが来ようが、業績が悪化しようが、「法令遵守」という大義名分があります。

「それなら会社が罰則を受けてもいいと思ってるのか?」

と詰め寄られたら、誰も「知ったこっちゃない」と言えません。社長でさえ反論できないでしょう。

ジタハラは中小企業よりも、大企業で起こりやすい。なぜなら、労務管理をする管理部や人事部と、それぞれの現場との距離が遠いからです。小規模事業主ほど、現場との距離が近いため、現場担当者の心情を理解したうえで、どう問題を解決するか一緒に考えてくれるはずです。

残業の上限規制は、2019年4月1日からスタートします。あと一週間もありません。私は現場に入ってコンサルティングしていますが、やはり、そう簡単に残業は減りません。人を増やしたり、情報システムを導入すれば解決するものでもない。

風土や意識の問題が8割です。意識改革しなければ、恒常的な残業を減らすことは無理です。

まだ十分な対策をとっていない会社は、今すぐすべきです。甘く見ていると、「管理能力が低い。だらしない」会社としてレッテルが貼られ、ブランドイメージを大きく落とす原因となります。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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