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WCCの試合で何度も勝利に貢献し、NCAAトーナメントに向けて自信を深めている八村塁

青木崇Basketball Writer
ネットカットは優勝の証。今季は貢献度アップの八村 (C)Takashi Aoki

 NCAAディビジョン1、ウエストコースト・カンファレンス(WCC)トーナメント準決勝のサンフランシスコ大戦、ジョナサン・ウィリアムスのスティール後にボールを確保したザック・ノーベル・ジュニアからパスをもらうと、八村塁は速攻から一気にゴールへアタック。利き手でない左手で叩き込んだダンクは、相手のファウルをもらってのバスケット・カウントとなる。その瞬間、テレビ放映していたESPNの名物解説者、ディック・バイタルは"Oh, are you serious?(マジか?)"と絶叫していた。

 準々決勝のロヨラ・メリーマウント大戦で自己最多となる10リバウンドを記録し、サンフランシスコ大戦も17点をマークするなど、八村の貢献度はシーズンの経過とともに増している。ブリガムヤング大との決勝では、後半スターターの出来が非常によく、10分以上出番がなかったことでリズムに乗れず、4点、5リバウンドに終わる。それでも、「チームのみんなで勝ち取ったというのがあるので、すごくうれしかったです」と、八村は笑顔を見せた。

 1年生の時はコート上だけでなく、オフコートでもいろいろ順応しなければならないことが多く、コンスタントに出場する機会はなかった。しかし、2年生となった今季は、シックススマンといえ得点源の一人となり、WCCのレギュラーシーズン18試合で記録した平均12.9点とFG成功率60.3%は、いずれもチームNo.1の数字。八村をリクルートしたアシスタントコーチ、トミー・ロイドは、「我々は塁を身体能力が高く、強靭な選手と見ている。塁は自分を鏡で見ると細身と感じ、自分の可能性をわかっていなかったけど、それを理解するようになってきた。それは大きな意味がある。身体をどう使ったらいいかを学び、それをアドバンテージとして使えるようになった。彼はすばらしいシーズンを過ごしている」と説明する。

サンフランシスコ大戦での八村はダンク2本を含む17点と活躍  (C)Takashi Aoki
サンフランシスコ大戦での八村はダンク2本を含む17点と活躍  (C)Takashi Aoki

 試合終盤もコートにいることも増えているのは、課題だったディフェンスの向上により、マーク・フューコーチの信頼度が上がっている証。特にボールを持った選手への対応に関しては、サイズと身体能力を生かして複数のポジションをこなせるようになったのが大きい。バスケットボールIQをもっと高くすることと、ボールのないところにおけるディフェンスがまだまだ課題としながらも、ロイドは八村がオンボール・ディフェンダーとして成長していることを評価する。

「彼はどんな選手でもディフェンスできるようになった。相手のセンターでも、相手のポイントガードでもディフェンスできる。ボールを持った選手に対する万能さは特別なものであり、いくつかの試合で我々のディフェンスが素晴しかったことへとつながった。彼はディフェンスでも万能な選手になってきており、今後も学び続けて取り入れることができれば、塁がプロとなってからの強みがディフェンスになるかもしれない」

 ロイドの言葉を象徴していると思われたシーンが、準々決勝で顔を合わせたロヨラ・メリーマウント大戦の終盤にあった。ゴンザガ大は後半途中まで苦戦を強いられたが、終盤に引き離した時間帯で八村は27点と好調だった183cmガード、ジェームス・ベイトモンとマッチアップ。クイックネスを生かしたドライブで得点を狙いに行ったベイトモンだったが、フットワークと長い腕を生かしてブロックショットを決めたのだ。八村はこう語る。

「コーチとずっと話していることなんですけど、オフェンスでもディフェンスでも、小さい人をガードしたり、小さい人を相手にオフェンスしたり、大きい人をガードしたら大きい人をオフェンスしたりと、何でもできるように練習してきている。試合でそれができているのではないかと思います。最後“あいつを止めてこい”と言われて途中から出てきたので、止められてよかったじゃないかと思っています」

 昨年の11月下旬にポートランドで行われたPK80を見た時に比べると、八村のプレーはまちがいなく自信のレベルが上がったと感じさせる。強豪との対戦が続くNCAAトーナメントでは、活躍してチームの勝利に貢献するだけでなく、“何か特別なことをやってくれるのでは?”という期待も膨らむ。ノースカロライナ大に惜敗しての準優勝に終わった昨季、ファイナル4で八村の出番はなかった。しかし、今季は八村の活躍がゴンザガ大の命運を左右すると言えるし、自身もそれを理解している。

「僕たちはもう1回ファイナル4に行けるチームだと思っている」

 マーチマッドネスは3月13日に開幕し、サンアントニオがファイナル4の舞台となる。昨年あと一歩のところで届かなかったNCAAチャンピオンという大きな目標達成を目指し、八村は新たなチャレンジに意欲満々だ。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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