au新料金は「マネ活」 節約に向かう流れを変えられるか
8月23日、KDDIが金融サービスの発表会を開き、資産形成などに取り組む「マネ活」をテーマにしたスマホの新料金プランを発表しました。
スマホの料金プランに金融を融合したのは業界初としています。本当におトクなのか、さっそく中身を見ていきましょう。
資産形成に取り組む「マネ活」を支援
最近、ポイ活から資産形成に興味を持つ人が増えています。KDDIはこれを「マネ活」と定義し、スマホの料金プランに組み込んできました。
新料金プランの名称は「auマネ活プラン」で、基本料金は月額7238円(税込)と、現行の「使い放題MAX」と同じに設定されています。
しかし毎月最大で800円相当のau PAY残高がもらえるので、少し安くなる計算です。料金の一部をau PAY残高として還元することで、利用を増やしたいという意図が感じられます。
その代わり、家族割引を受けることはできなくなりますが、家族割との共存は考慮されており、他の家族には影響しないようです。
特にポイント還元が大きくなるのは、「au PAYゴールドカード」とあわせて利用する場合です。カード決済で合計で1.5%還元になり、PayPayに対抗している印象です。
ゴールドカードの特徴である通信料金の還元は、これまでの最大10%から1年間限定で最大20%に増えます。カードの年会費(1万1000円)を確実に上回るポイントを得られそうです。
また、新NISAで競争が激化する投信積立のクレジットカード決済では、auカブコム証券にNISA口座がある場合、ゴールドカードなら合計で3%還元(13か月目以降は2%還元)になります。
6月にポイント還元率を引き上げた楽天との比較では、年会費が同じ楽天プレミアムカードが「1%還元」であることを考えると、目を引く数字といえます。
低コストの投資信託を売っても証券会社にほぼ利益はないとみられ、このようなポイント還元は持続的ではないとの声もありますが、そこは通信料金やゴールドカードとの組み合わせでまかなっている印象です。
auじぶん銀行の金利優遇は、これまでの年0.20%から年0.30%に高まります。年0.30%という点ではHabittoと同じですが、auは上限が1000万円と大きく、これは預金保険で保護される最大額でもあります。
実際にどれくらいおトクになるかは、個人の使い方によって変わりますが、Webサイトではこれを簡単に計算できるシミュレーターを提供しています。
KDDIによるモデルケースでは、毎月4348円相当、1年で約5.2万円相当の還元が得られるとしています。
注意点として、通信料金や投信積立の特典は12か月間となっています。上記の例では、13か月目以降は通信料金で約500ポイント、投信積立で330ポイントが減り、還元額は毎月3500円相当になります。
全体的に見て、auやPonta経済圏を使っている人には魅力的なプランといえます。今後も新NISAに向けて、各社から新たな施策が登場してくる可能性はあるものの、auの優良顧客をつなぎとめる効果はありそうです。
また、こうした金融に関する新サービスでは、システム開発や関係各所との調整に多大な時間がかかるなどの「悲鳴」を聞くことがあります。そういう意味では、9月1日にこれを始められることがKDDIの強みといえるかもしれません。
「節約」に向かう流れを変えられるか
ところで、KDDIの他のブランドであるUQやpovoはどうなっているのでしょうか。質疑応答で質問は挙がったものの、現時点では特別な施策は発表されていません。
ここで気になるのは、ポイ活が盛り上がる背景として、物価上昇などに対する節約意識の高まりがあるという点です。
資産形成を始めると、こうした節約志向はさらに進むと筆者は考えています。資産を増やすのは難しいのに対し、支出を減らすのは簡単だからです。
そこで真っ先に目を付けられるのが、毎月のスマホ料金です。UQ mobileや格安ブランドを活用し、スマホ料金を浮かせるという風潮はますます高まるでしょう。
これに対してauの新料金プランは、使い放題をフルに楽しみつつ、より多くの還元を得られるというもので、「おトク」の方向性が異なります。
どこまで受け入れられるかは分かりませんが、何でも「節約」に向かう流れに一石を投じているのは興味深いところです。