ウクライナ軍のMiG-29戦闘機がJDAM-ER滑空爆弾を高高度から投下する実戦映像
6月17日、ウクライナ軍は空軍「ツェントル(中部)」航空司令部の直轄部隊である第40戦術航空旅団の宣伝動画を公開しました。同部隊の主力戦闘機はMiG-29です。幾つかある複数のシーンを継ぎ足してある動画です。
- 開始~07秒:MiG-29の離陸
- 08秒~14秒:MiG-29の巡航
- 15秒~27秒:MiG-29の空中戦闘(目標は巡航ミサイルないしドローン)
- 28秒~36秒:MiG-29の対地攻撃(AGM-88対レーダーミサイルの発射)
- 37秒~58秒:MiG-29の対地攻撃(JDAM-ER滑空爆弾の投下)
- 59秒~終了:MiG-29の薄暮ないし黎明での戦闘(推定AGM-88)
37秒からの対地攻撃で、MiG-29の操縦席の前方についている細長い鏡(空戦時の後方確認用)にアメリカ製のJDAM-ER滑空爆弾が写っています。ウクライナ軍によるJDAM-ERの使用は既に知られていることですが、実戦で使用した投下映像はおそらくこれが初公開です。
※映像拡大(識別点は黄色い帯)
※参考比較:2023年8月24日公表、ウクライナ軍のJDAM-ERの写真
※投下高度(高高度)
かなり高い高度からJDAM-ER滑空爆弾を投下していることが分かります。滑空爆弾の投下方法は大きく分けて二つあります。
- 高高度爆撃:射程は長くなるが敵の大型防空システムに狙われやすい。
- 低高度トス爆撃:低高度から機首を引き起こして爆弾を上に放り投げる。
JDAM-ER滑空爆弾は多くの防空システムの射程外から投下できるスタンドオフ兵器ですが、長射程の大型防空システムの中にはそれ以上の射程を持つものがあり、そのような相手が居る空域では高高度からの投下は危険を伴います。
そこで見付かり難いように低高度で敵に接近して(相手のレーダーから見えなくなる地平線の陰に隠れるように飛行)から爆弾を上に放り投げるトス爆撃を行うと、大型防空システムに狙われ難くなります。ただし高高度からの投下に比べると滑空爆弾の有効射程はかなり短くなります。
また低高度で接近すると今度は数多く点在する小型防空システムに引っ掛かってしまう確率も上がってしまいます。ただしそれでも大型防空システムに狙われ難くなるなら、総合的には生還率は上がります。
その上でウクライナ軍の戦闘機が高高度からJDAM-ER滑空爆弾を投下しているということは、付近にロシア軍の長射程の大型防空システム「S-400」が居ないということになります。元から配備されていない地域あるいは、ATACMS弾道ミサイルやAGM-88対レーダーミサイルなどによってS-400をこの付近から排除済みなのかもしれません。