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国有地8億円値引した迫田英典氏を国会に!「安倍晋三記念小学校」疑惑の重要証人をかばい続ける自民党

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
「安倍晋三記念小学校」をめぐる安倍夫妻への疑惑は深まるばかり(写真:ロイター/アフロ)

国会で大問題となっている「安倍晋三記念小学校」。9億5600万円と評価された国有地を財務省が8億1900万円値引きし、さらに1億3200円を補助、実質200万円というタダ同然で学校法人「森友学園」に売り渡した件で、国側は、小学校を建設する国有地の地下に「生活ごみなどの大量の埋設物がある」ということを、値引や補助の理由としてきた。だが、この間の国会等での追及で、国側は実際にどの程度の埋設物が地下にあるか確認しておらず、さらに森友学園側が、埋設物を撤去したかも確認していなかったことが明らかになった。なぜ、このようなずさんなことが起きたのか。安倍政権の関与は本当になかったのか。野党の参考人招致の要求を拒否して、与党が必死にかばう人物が、この問題のカギを握っているのかもしれない。

○8億1900万円値引のキーマン、迫田英典氏

森友学園が「安倍晋三記念小学校」こと、瑞穂の国記念小学院の建設地として買った土地の価格を8億1900万円も値引きすると決定した時の財務省・理財局長は迫田英典氏。さらに、この迫田氏と安倍首相が、一昨年9月3日に面談していることが、産経新聞の「安倍日誌」で明らかとなっている関連情報)。

この翌日の4日、安倍首相は安保法制の審議をすっぽかして、大阪を訪問している。「テレビ出演」というのが、その口実であったが、さらに翌々日の5日、安倍首相夫人の昭恵さんが、森友学園の運営する塚本幼稚園で講演し、瑞穂の国記念小学院の名誉校長に就任している(テレビ東京の報道。今月24日に辞任)。安倍首相と、迫田氏の間で何が話されたのか。野党側は迫田氏の国会招致を要求しているが、これを与党側は拒否。真相は未だ闇の中だ。

○迫田氏は説明責任を果たせ

迫田氏は、安倍政権の下で、理財局長に就任した人物。さらにその後は、国税庁長官になっている。正にとんとん拍子の出世ぶりだ。財務省の事務方トップの財務事務次官の座も夢ではないだろう。歴代の次官たちには、国税庁長官を経て、その座に上り詰めた者も何人もいる。仮に、迫田氏が安倍首相の意向を受けて、国有地をタダ同然の値段で森友学園に譲り渡したとして、その論功行賞で出世した、というのは話が出来すぎているだろうか。筆者の仮説が事実と異なるのであれば、何もやましいことがないのであれば、迫田・国税庁長官は、ことの経緯を説明すべきだし、与党は迫田氏の国会招致を邪魔するべきではない

少なくとも、これまでの国会質疑で、森友学園の国有地の払い下げが非常に不透明であり、8億1900万円値引の根拠も揺らいでいる。政府与党には、ことの真相を究明する責任がある。迫田氏をかばえばかばうほど、疑惑は強まっていく一方なのだ。

(了)

以下、今月24日の衆院予算員会でのやり取り。官僚や自民党がいかに、迫田氏を国会で発言させるのを嫌がっているか、透けて見える。

福島伸享・衆議院議員「これね、なんか怪しいですよ。(財務省は)言い訳を作って、一生懸命、どうやったら安くできるか、と森友学園の側に立って、国民の財産である国有地をどんどん安くしていってるとしか言えないんですよ。私はですね、今回のこれらのスキームは、森友学園だけじゃできないと思ってます。その間に入ってる不動産のコンサルタントや弁護士ではできないと思ってます。ヒントはですね、麻生大臣はいつも『手続きは適正だ』と言っています。確かに、法令にのっとった手続きを取っていて、違法な手続きは今のところは見られません。しかし、針の穴を通すように、それぞれの制度の例外をうまく活用して、この事業が進められてきました。それは、役人じゃなきゃできません。この交渉の鑑定を行なった時の理財局長はどなたでしょうか?

佐川宣寿・財務省理財局長 「鑑定というのはいつの鑑定ですか?えーと、貸付の時の鑑定ですか。何年か前になりますから、ちょっと調べてきます」

福島議員「平成27年から28年。この国会でずっと問題になっている、8億円の土砂の除去のために必要だという積算、このような異例中の異例のですね、やり方でやっているときの理財局長。それはどなたでしょうか?

佐川理財局長「えーと、今手元に資料がございませんが…(中略)すみません、大至急、調べてきます」

(質疑を中断、速記止める)

佐川理財局長「前々任者ということであれば、え~と、中原でございます」

福島議員「前任者。なんでそんなとぼけるんですか?27年から28年、前任者の理財局長

佐川理財局長「昨年の夏からが私でございます。その前の27年の夏から28年の夏という意味で言えば、迫田でございます」

福島伸享議員 「(自身の前任者の名前を知らないわけがないのに)何でそんな演技をするんですか?今日は参考人招致をしてるんですよ?何で(与党の)皆さんはそんなに役所をかばうんですか?前任者の名前もわからない。しかも今日の参考人として(迫田氏を)招致していて、与党の皆さんは断ってるんですよ。その時の理財局長だから呼んでいるのに、知らないとか、通告がない、とかありえないじゃないですか。何でそこまで迫田さんの名前を出すことを嫌がるんですか?ますます怪しいと思うじゃないですか。私は当時の理財局長の、政治家との接触記録の提出をこの委員会に求めたいと思います

出典:2017年2月24日 衆院予算委員会

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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