Yahoo!ニュース

まもなく沖縄地方で梅雨入り、熱帯域では台風の発生も

饒村曜気象予報士
沖縄近海で東西に連なる雲(5月8日15時)

5月に入り増えた夏日

 令和2年(2020年)の4月の気温は、大陸からの寒気の影響を受けやすかったため、全国的に低くなり、特に西日本と沖縄・奄美ではかなり低くなりました。

 このため、4月に最高気温が25度以上という夏日を観測することはほとんどありませんでしたが、5月になると一転して気温が高くなりました。

 5月1日には、高気圧におおわれて広い範囲で晴天となり、気温が上昇して東京都心や大阪で最高気温が25度を超え、今年初めての夏日となりました。

 そして、夏日を観測した地点数が急増し、前年の平成31年(2019年)~令和元年(2019年)の夏日の地点数に迫っています(図1)。

図1 平成31年(2019年)と令和2年(2020年)の夏日の累計
図1 平成31年(2019年)と令和2年(2020年)の夏日の累計

 ゴールデンウィーク明けの5月7日は、全国921の気温観測地点のうち116地点(全観測地点の13%)が、5月8日は129地点(14%)が夏日でした。

 5月9日から10日の土日は、低気圧が東シナ海から日本海に進むことから、ほぼ全国的に雨が降る予報です(図2)。

図2 地上天気図(令和2年(2020年)5月8日9時)と48時間後の予想天気図(5月10日9時の予想)
図2 地上天気図(令和2年(2020年)5月8日9時)と48時間後の予想天気図(5月10日9時の予想)

 しかし、この雨は、寒気が南下しての雨ではなく、暖気が北上しての雨ですので、気温は大きく下がりません。

 夏に向かう暖かい雨の見込みです。

沖縄の梅雨入り

 沖縄付近には、現在ほぼ東西に連なる雲があります(タイトル画像参照)。

 これは、中国大陸にある低気圧から延びている温暖前線に対応する雲ですが、低気圧が日本海に進むにつれ北上し、沖縄から離れます。

 しかし、低気圧が日本海から北日本を通過すると、寒冷前線が南下し、東シナ海で停滞するようになります。

 このため、沖縄付近では週明けから曇りや雨の天気が続くようになります。

 週明けは沖縄で梅雨入りするかもしれません。

 沖縄の梅雨入りは、ほとんどが5月上旬から中旬で、平年は5月9日です(図3)。

図3 沖縄の梅雨入り(昭和26年(1951年)~令和元年(2019年)の69年間)
図3 沖縄の梅雨入り(昭和26年(1951年)~令和元年(2019年)の69年間)

 なお、沖縄の梅雨入りは、早ければ、昭和55年(1980年)の4月20日、遅ければ昭和38年(1963年)の6月4日という記録があります。

 ウェザーマップの「16日先までの天気予報」によれば、那覇では11日に傘マーク(雨)があり、来週のほとんどは黒雲マーク(雨の可能性がある曇り)がついています(図4)。

図4 那覇の16日先までの天気予報
図4 那覇の16日先までの天気予報

 白雲マーク(雨の可能性が少ない曇り)は、土曜日だけです。

 また、再来週は傘マークが多くなり、すべての日が黒雲マークです。

 平年より若干遅い5月11日の月曜には、沖縄で梅雨入りするかもしれません。

 ただ、降水の有無の信頼度は、12日から15日まで、5段階表示で一番低いEですので、このときの予報が晴れるほうに変われば、梅雨入りが遅れるかもしれません。

 いずれにしても、沖縄はまもなく梅雨入りですし、そのほかの地方も、梅雨入りは遠くありません。

台風1号発生か

 台風の統計が行われている昭和26年(1951年)以降で、台風1号が一番早く発生したのは1月1日(平成31年(2019年))となっています。

 また、一番遅く発生したのは7月9日(平成10年(1998年))となっています(図5)。

図5 月別の台風1号の発生
図5 月別の台風1号の発生

 しかし、これは、あまり意味をなさない統計です。

 というのは、台風は熱帯の暖かい海で発生・発達しますので、前年の暖かさが残っていると1月にも台風が発生するからです。

 つまり、資料が集まれば、一番早い台風発生は自動的に1月1日になってしまいます。

 つまり、台風の新年度を、一年で一番寒くなったところからスタートとすると、3月スタートです。

 台風の新年度を3月とすると、台風1号の発生は、3月が32%、4月が36%もあります。

 つまり、多くの年は、4月までに台風1号が発生していますので、令和2年(2020年)は、台風発生が遅い年となっています。

 北西太平洋の熱帯域では、積乱雲が少ない状態が続いていましたが、ここへきて積乱雲が増え、まとまってきました。

 いますぐ、熱帯低気圧や台風が発生するわけではありませんが、積乱雲が集まり、渦を巻き始めています(図6)。

図6 赤道付近の雲の渦(図中の白丸、5月8日15時でタイトル画像と同じ時刻)
図6 赤道付近の雲の渦(図中の白丸、5月8日15時でタイトル画像と同じ時刻)

 まもなく、台風1号が発生するかもしれません。

本格的な雨の季節の前に新型コロナウイルス対策の効果

 日本では、毎年のように梅雨や台風による雨で災害が発生しています。

 その雨の季節が着実に近づいています。

 新型コロナウイルスの流行中に本格的な雨の季節を迎えると、命を守るために、密集空間に避難する可能性があり、「水害・土砂災害で死にますか、新型コロナで死にますか」という悪夢の選択もありえます。 

 自治体では、避難所の運営などの防災活動に新型コロナウイルス対策が加わり、人手と手間がより多くかかって、これまでのような防災活動ができない可能性もあります。

 現在、本格的な雨の季節が先か、外出自粛によって新型コロナウイルス対策の効果が出てくるのが先かという競争になっています。

タイトル画像、図4、図6の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:ウェザーマップ資料より著者作成。

図2の出典:気象庁ホームページ。

図3、図5の出典:気象庁資料より著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

饒村曜の最近の記事