【マイクロチップ】は知っていた?柴犬の輸出で偽の証明書提出容疑でブリーダー逮捕
改正動物愛護法が6月1日に施行され、ペットショップやブリーダーが販売する犬猫にマイクロチップ装着が義務化されました。一般の飼い主は、努力義務なのでマイクロチップの装着をどうしようかと考えている人も多いようです。
そんななか、関西国際空港でマイクロチップが関連した事件が起きました。この事件の詳細を知ることで、マイクロチップの仕組みがわかりやすいので、そのことを見ていきましょう。
柴犬輸出で偽の証明書提出容疑でブリーダー逮捕とは?
この事件について説明します。
柴犬2匹をブルガリアに輸出するさいに、偽造した証明書を提出した疑いでブリーダーの男が逮捕されました。
犬を輸出するさいには、「健康診断証明書」が必要です。それを偽造した疑いで、逮捕されたのです。 カンテレは、警察によると証明書には実在する獣医師の印鑑が無断で押されていて、調べに対し容疑者は「費用がかかるから」と容疑を認めていると伝えています。
警察は、このブリーダーに不信感を持っていたので、証明書に印鑑が押してある獣医師に問い合わせたところ、このブリーダーが多量の書類をその獣医師のところに持って行ったときに、獣医師のすきを狙って勝手に印鑑を押したそうです。
なぜ、偽の証明書だとわかったか?
EUに輸出するさいに、犬にマイクロチップを埋め込むことが条件となっているのですが、動物検疫所でこのブリーダーの犬からチップを読み取れなかったため事件が発覚したのです。
つまり、このブリーダーが装着したマイクロチップが専用のリーダーで読み取れなかったのです。動物検疫所は、なにかあやしいと思っていたのかもしれません。
マイクロチップが読み取れないってどういうこと?
マイクロチップが読み取れないということは、マイクロチップが装着されていないか、もしくは日本で一般のルートで流通しているものではないかです。
日本で一般のルートでのマイクロチップは、専用のリーダーで全て読み取ることができます。
ペット用のマイクロチップには、いくつかの規格がありますが、日本で統一して流通しているマイクロチップは国際標準化機構(ISO)11784及び11785に適合するものです。
それ以外のマイクロチップが装着されていると、専用リーダーでは読み取れない可能性があります。
専用のリーダーで読み取れないマイクロチップって?
マイクロチップは、世界にひとつだけの15桁の数字が記録されているのに、専用のリーダーで読み取れないマイクロチップは困りますね。世界中で、マイクロチップと専用リーダーの互換性がないという疑問があがると思います。
世界で流通しているマイクロチップは、さまざまあります。そのため、互換性がないものもあるのです。
ISO国際規格を採用している地域
・ヨーロッパ
・オセアニア
・日本を含むアジアの一部
ISO国際規格の国のマイクロチップだと日本の専用リーダーで読み取れます。
ISO国際規格ではない規格を採用している国・地域
・アメリカ
米国獣医師会や規格協会等はISO規格を推奨しているのですが、切り替えは難航
・カナダ
アメリカより一足先にISO規格への切り替えが行われましたが、まだそれぞれの規格が混在
・香港
AVID社のオリジナル規格を政府が採用
・台湾などの他のアジア
マイクロチップの規格が混在
ISO国際規格でないものは、日本の専用のリーダーで読み取れないです。
日本で一般に売られているマイクロチップのリーダーで読み取りができないマイクロチップはどうするのか、という問題があります。動物検疫所には、マルチリーダーなるものがあり、それで番号を読み取ることができるそうです。
筆者は、このブリーダーが装着したマイクロチップ(この行為は、獣医師法違反になります)は、ISO国際規格ではないものだった、と推測しています。このブリーダーの自宅から、未使用のマイクロチップが押収されていますので、詳細は判明するでしょう。
マイクロチップの15桁の意味とは?
マイクロチップを装着してもらい、15桁の数字がランダムに並んでいるな、と思われているかもしれません。それには、意味があります。電話番号で03なら東京、06なら大阪とわかるように。
15桁の番号のうち頭の3桁が日本国番号392で、次に2桁の動物コードを設定しています(以下は、「日本獣医師会 マイクロチップを用いた動物の個体識別」で紹介)。
犬や猫のペットにマイクロチップを装着した場合
39214〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
牛にマイクロチップを装着した場合
39210〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
馬にマイクロチップを装着した場合
39211〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
JRA、日本軽種馬登録協会、地方競馬全国協会では2007年より個体識別のためのマイクロチップ導入を行っています。
豚にマイクロチップを装着した場合
39212〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
日本では今までに12社がマイクロチップを輸入販売しており、以下のコードを使用しています。
3921410~(以下8桁が個体番号) 富士平工業株式会社
3921411~ 株式会社コスミックエムイー
3921415~ 株式会社日立ハイテクマテリアルズ
3921420~ 日本マイクロチップ技術開発株式会社
3921430~ 株式会社共立商会
3921440~ 日本マイクロチップネットワーク株式会社(共立製薬株式会社)
3921450~ サージミヤワキ株式会社
3921460~ 共立製薬株式会社
3921470~ バイオリサーチセンター株式会社
3921480・3921481~ DSファーマアニマルヘルス株式会社
3921490~ 日特エンジニアリング株式会社
3921499~ ワールドネットワーク株式会社
つまり頭から数えて6番目、7番目の数字で会社がわかります。
一般の飼い主が愛犬や愛猫にマイクロチップを装着するかどうかは、努力義務です。じっくり考えてから、装着すればいいと思いますが、このようなマイクロチップの知識があると、装着したときに、よりその番号に愛着が持てるのではないでしょうか。
まだまだ、マイクロチップについてわかりにくいこともあると、思いますが、今回の場合のように、マイクロチップを通して逮捕につながることもあるのです。