卓上スパイス、ロボシェフ…昔懐かしいナポリタンを次世代へ繋ぐ『鉄板ナポリタンゴンザレス』へ行ってみた
スパゲッティナポリタンが好きだ。
行動範囲は決して広くはないが、いろいろなところへ赴いてはその土地土地でナポリタンを食すようにしている。
喫茶店、洋食店、食堂。いろいろな業態の飲食店で、いろいろな立場でメニューにラインナップしているナポリタン。食べる度に、その街が、人が見えてくるのが楽しい。
阿佐ヶ谷・中杉通り「鉄板ナポリタンゴンザレス 阿佐ヶ谷店」
東京・阿佐ヶ谷の中杉通りのケヤキ並木を歩くと、とあるビルの2階に「鉄板ナポリタンゴンザレス 阿佐ヶ谷店」がある。
その名の通り、ナポリタンの専門店である。
もはや国民食と言えるラーメン、カレーの専門店が多くあるように、ここ10年ほどでナポリタンの専門店が定着してきたことはナポリタン好きとしては嬉しい限りだ。
2020年9月に中野北口店(現在は閉店)がオープンし、同年12月にこの阿佐ヶ谷店がオープンした。まだ2年ほどの新しいお店である。
コンセプトそのものが「ゴンザレス」だ!
「鉄板ナポリタンゴンザレス」を運営する株式会社IPPIN代表取締役・齋藤圭介さんは、東京・神保町でピッツェリアの店を手掛けていたが、コロナ禍で売り上げが激減。
コロナ禍で混乱した不安の多い時こそ「おしゃれに飲食」よりも、「もっと馴染み深くて食べてホッとするもの」ではないかと模索して辿り着いたのが「ナポリタン専門店」だったという。
齋藤さん:「ナポリタン専門店は既に存在していましたので、既存店との差別化を考えた時に、熱々の状態で提供できるということで鉄板ナポリタンで売り出すことにしました。名古屋ではナポリタンが鉄板で出されることは知っていましたが、実は食べたことがなくて。うちでは名古屋のように溶き卵を周りにかけないスタイルです。」
トッピングはデフォルトで輪切りにした玉ねぎのソテーが付く他に、フライドポテト、スパムなど、ジャンキーなものがオプションで選べる。
齋藤さん:「店名の『ゴンザレス』は力強いイメージから名付けました。ナポリタンそのものの味付けもしっかりしていますし、盛りやトッピングによるボリューム感やジャンク感など、すべてが『ゴンザレス』なんです。」
ロボシェフがナポリタンを次世代へ繋ぐ?
鉄板ナポリタンゴンザレスの特徴は「ロボシェフ」による調理である。
ナポリタンは老舗の名店ほど鉄のフライパンや中華鍋を操る傾向にある。
しかし鉄のフライパンや中華鍋は重いうえにモタモタしているとすぐ焦げ付いてしまうため、上達には時間を要する。近年は軽いテフロンのフライパンも進化しており、名店でもテフロンで美味しく作ることができるようになっているが、いずれにしても人手は必要である。
そこでロボシェフである。これさえあれば、省力化が実現し、安心してナポリタンを後世へ残すことができるだろう。
しかしこのロボシェフ、本来はアームが回転する鍋をかき回すのだが……。
齋藤さん:「アームだと麺が切れてしまうのですよ…。結局回転する鍋を人の手でかき回しています。これでも十分に省力化はできていると思います。試行錯誤しているさ中です。将来的には完全に機械化できるよう、あきらめずに考えていきます。」
実際にこのロボシェフでどのようにナポリタンが作られるのか。
店長の下坂皓介さんに作っていただこう。
下坂さん:「この道25年です(嘘)。ナポリタンは私も好きですが、いざ作ってみるとシンプルでありながら火の通し方で微妙に味が変わってしまうことが難しいところだと思います。」
鉄板ナポリタンゴンザレスのナポリタンに使う食材はシンプル。玉ねぎ、ピーマン、マッシュルーム、ウインナー。そしてスパゲッティ麺。ディ・マルティーノの2.4mmの麺を茹で置きで使用し、カゴメトマトケチャップでまとめている。
下坂さん:「ナポリタンと言えば2.2mmの太麺を使用するお店が多いと思いますが、うちは2.4mmでさらに太いです。茹で時間が30分もかかるのでかなり手間がかかります。これはもともとラグーなど、しっかりした味わいのソースに用いられる麺ですので、ナポリタンもしっかりした味付けにしています。」
下坂店長の調理を見ていると、回転する中華鍋に使用する手は片手のみなので、従来の両手を使用した調理に比べると幾分は省力化出来ていると思えた。
売上ツートップのナポリタンはコレだ!
店長の下坂さんに、2品のナポリタンを作っていただいた。
売上No.1の目玉焼きトッピング(普通盛・税込950円)と売上No.2のとろ~りチーズトッピングだ。
圧巻なのはとろ~りチーズトッピングである。熱々の鉄板に熱々のチーズを投入するからマグマのようにグツグツと見せつけられては否応なくジャンクな食欲が掻き立てられる。
熱々のナポリタンに熱々のチーズが絡みつく。やけどにも注意だが、カロリー過多にも注意したい。が、この際美味しければ、まあ良いか。
ちなみに麺の量は普通盛300gに大盛400g(値段は普通盛と変わらず)、特盛500g(プラス100円)に小盛200g(値段は普通盛と変わらずで目玉焼きかポテサラのトッピング無料)と選べる。写真は普通盛だが、それでも視覚的にはなかなかのボリューム感だ。
齋藤さん:「当初のターゲットは男性でしたが、小盛というカテゴリーを設けたことで女性の方もよく来てくださいます。意外と女性でも普通盛にトッピングで食べてくださったりもしますよ」
6種ある卓上スパイスで「味変」が楽しい
鉄板ナポリタンゴンザレスのもう一つの特徴が、豊富な卓上スパイスである。
粉チーズ、タバスコはどこにでもあるが、全6種類の中で、「Gスパイス」「しょうが山椒」「レモン果汁」に注目したい。
まずはGスパイスをかけてみる。にんにくチップに、数種類のスパイスを調合したやや辛い物。Gスパイスの「G」とは、齋藤さんいわく「ガーリック」のGであり、「ゴンザレス」のGでもある。激辛というわけではなく、マイルドな辛さで濃厚な味わいのナポリタンにマッチしている。にんにくチップの香ばしさがより一層ジャンキーになる。
つづいてしょうが山椒。ナポリタンに山椒?って驚く方も多いだろうが、これがまたしびれ系で実に心地良いのだ。しょうがとか山椒とか、香りの強いものもナポリタンは見事に包み込んでくれて、新しい味わいを引き出す。ナポリタンってつくづく不思議な料理だと思う。
そしてレモン果汁だ。
齋藤さん:「当店のナポリタンは濃い味でボリュームもあるので、最後の方はもしかしたら飽きてくるかもしれない。そこでこのレモン果汁はとても爽やかになるので最後の『味変』におススメしています。」(齋藤さん)
単純に酸っぱいのではなくて、大げさに言うと食後のデザートでも食べたような、そんなさっぱり感をもたらす。
ゴンザレスの卓上スパイスは、ナポリタンを新たな味わいに導く楽しいアトラクションだ。
阿佐ヶ谷の人々の温かさに救われています
コロナ禍で苦しんだ中で始めたナポリタン専門店。始めてから今日まで、コロナ禍はまだ収束には至っていない。
齋藤さん:「コロナ禍は続いていますが、そんな中で阿佐ヶ谷の地で鉄板ナポリタン専門店を約2年やってきて、阿佐ヶ谷の人たちの温かさに本当に救われたという思いが強いです。先日テレビの取材で当店に来てくれた阿佐ヶ谷姉妹のお二人に代表されるように、阿佐ヶ谷はやさしさに満ち溢れた街なんだと思います。この2年でナポリタンも徐々に安定してきました。ナポリタンをもっと多くの人の食べてもらえるよう、これからもこの地で頑張っていきます。」
ロボシェフ、卓上スパイス……。昔ながらのナポリタンを新たなフェーズへ導こうと試行錯誤しながら前進を続ける「鉄板ナポリタンゴンザレス」にこれからも注目していきたい。
【鉄板ナポリタンゴンザレス 阿佐ヶ谷店】
東京都杉並区阿佐谷南一丁目35番2号 ル・シャポー多丸家館
https://www.napolitan-gonzalez.com/