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沖縄からナポリタンの新たな潮流!その名も「うちなーナポリタン」

田中健介ライター

戦後横浜で生まれたとされるスパゲッティナポリタン。その70年ほどの歴史の中で、日本経済は飛躍的に向上し、食文化も豊かになって、ナポリタンも全国的に親しまれている。

本格的なイタリア料理が普及し、「スパゲッティ―」が「パスタ」と呼ばれるようになって久しくなってからは、ナポリタンは古き良き喫茶店や洋食屋などでその空間と共に味わう、というやや限定的な楽しみになりつつあったが、ここ10数年は日本式スパゲッティー料理であるナポリタンの良さが見直され、オシャレなカフェなどでも見かけるようになった。そして2013年から「カゴメナポリタンスタジアム」が四年に一度のペースで全国からナポリタンのコンテストが開かれるようになってからは各地で「ご当地ナポリタン」が生まれるようになり、さらには筆者が以前紹介した「鉄板ナポリタンゴンザレス」(東京都杉並区、現在は東京都武蔵野市へ移転)や「Banzai Naporitan」(茨城県つくば市)などのように、ナポリタン一本で勝負するナポリタン専門店が増えつつあるという、ナポリタン好きにとってはワクワクしかない状況が続いているのだ。

そこにナポリタンがあるのならどこへでも

琉球王朝の時代から諸外国との交流を通じ、独特の食文化を築いてきた沖縄にもナポリタンの専門店があると聞いた。沖縄と言えば汁麺だけでなく、焼きそばとしても親しまれている汎用性の高い沖縄そばがある。ご当地ナポリタンとして沖縄そばはパワーアイテムだ。そこにナポリタンがあるのなら、出来る限りどこへでも行きたいと思っているので、慣れない飛行機に久しぶりに乗った。

那覇空港に降り立ち、即座にゆいレールに乗る。美栄橋駅を降りて5分ほど歩き、那覇市の久茂地というエリアに来た。ここは那覇市街の中でもオフィスビルや雑居ビルが多く建ち並ぶ。そんな界隈に、「うちなーナポリタン赤翡翠(あかしょうびん)」の幟旗を見つけた。

確かに「ナポリタン専門店」とある!いや、「うちなーナポリタン専門店」だ!

那覇市久茂地の「うちなーナポリタン赤翡翠(あかしょうびん)」

「うちなーナポリタン赤翡翠」の店舗外観。一見してナポリタンの専門店とは思いにくいが、前述の幟旗で専門店であることを視認できる。シンプルな感じもそれがまた沖縄感が演出されて良いのかもと思えてくる。

いざ入店する。
どこか居酒屋な雰囲気が漂う一枚板のカウンター席に座り、メニュー拝見。
メニューには「うちなーポリタン」となっている。まあまあ、細かいことは気にしない。
フードメニューはナポリタンだけ、選べるのは麺の量、そして具材を好みで調整できるのみ。
創業60年の宮古島の沖縄そばの銘麺「ハワイ製麺」から取り寄せた沖縄そばで作るナポリタン。「うちなー」は沖縄を意味し、「うちなーナポリタン」は「沖縄ナポリタン」ということになる。

うちなーポリタンTシャツに気を取られる

お店のお姉さんに500gでオーダーし、作っていただく。

ハワイ製麺の麺を見せていただいた。沖縄そばは茹で置きが基本と思っていたが、見せていただいたのは生麺だった。角切りの太麺。沖縄そばとしてはオーソドックスなタイプだ。これをオーダー毎に茹で上げる。

麺を茹でる用の寸胴に火を入れ、まずはトッピングの目玉焼きを焼いていく。

麺を茹で、具材の玉ねぎ、ピーマン、ウインナーを炒めていく。

「うちなーナポリタン赤翡翠」のオリジナルソースを見せていただいた。

デルモンテのトマトケチャップをベースに、マリナラソースをブレンドしたものだそう。

麺が茹で上がり、麺と具材、ソースが一体となって炒め続けていく。

ここで調理するお姉さんが着用している「ねぎヌキ?ピーヌキ?」などと書かれた「うちなーポリタンTシャツ」に気を取られてしまい、肝心な炒めシーンの撮影が出来なかったことを深くお詫びしたい。

これがうちなーナポリタンだ!

「うちなーナポリタン赤翡翠」のうちなーナポリタン500gが完成した。

中心の目玉焼きとマカロニサラダはデフォルトである。

目玉焼きの裏に隠れているのはチェダーチーズ。ジャンク感満載。

フォークに巻き付けてみる。本来箸で食べる沖縄そばは、フォークでも何不自由なく巻き付けることができる。

ソース、油、麺が一体となった乳化状態の照りは見事である。ここでもう一度言うが筆者は小・並・中・大・特・超の6ランクある麺の量の中から超の500gをオーダーした。
「もういい加減にしなさいよ!」と、そろそろ家族からも医者からも言われそうな40代後半だが、もうどうなったって構わない、そう思うほどに食欲を掻き立てる照りである。

ひと口頬張って、言うまでもなく美味い。トマトケチャップの甘みと酸味にマリナラソースの爽やかさがハワイ製麺のモチモチとした沖縄そばに絶妙に絡んでいる。沖縄そばのトマトケチャップ焼きそばは以前から存在していたが、それらとは一線を画す、沖縄ならではのナポリタンである!

シークワーサーが爽やかなマカロニサラダは禁断の箸休め

お皿の角度を変えると、マカロニサラダが皿の端でどっさりと盛られている。

シークワーサーが隠し味となっていて、実に爽やかな味わい。濃厚なナポリタンに対して絶妙な箸休めとなる。

しかし、冷静に考えるとナポリタンにマカロニサラダだ。炭水化物を炭水化物で箸休めって、わけがわからない。シークワーサーが爽やかなマカロニサラダの美味さに脳内は完全に騙されている。

卓上の味変アイテムもバリエーション豊富だ。タバスコ、粉チーズはもちろん、クォーターペッパー、マヨネーズ、お好み焼ソースに「シャア専用」がある。

・・・・・・ん?シャア専用って何だ??

食べながらぼんやり店内を眺めていると、ガンダムのフィギュアが、しかもシャア専用の赤いモビルスーツがメインで所狭しと飾ってある。

なるほど、そういうことか・・・・・・いや、どういうことだ??

ここでオーナーの眞部隆志さん登場、うちなーナポリタンについての思いを語る!

と、そこへ「うちなーナポリタン赤翡翠」のオーナーである株式会社キングフィッシャー沖縄の代表取締役・眞部隆志さんが登場。これまでの経緯と思いについてインタビューしていく。

筆者:赤翡翠(あかしょうびん)という店名のルーツは何でしょうか?

眞部さん:沖縄にいる赤いカワセミ「アカショウビン」から取りました。英名でKingfisher、社名のキングフィッシャーが赤翡翠のルーツとなっています。

筆者:なるほど、株式会社キングフィッシャー沖縄ではどんな業務をされているのですか?

眞部さん:沖縄でスキューバダイビングや魚釣り、船上バーベキューやマリンスポーツ全般のサービス業がメインです。飲食業はここ赤翡翠だけです。

筆者:赤翡翠はいつオープンされたのですか?

眞部さん:「うちなーナポリタン赤翡翠」としては2022年6月で、まだ一年ちょっとです。元々はこの場所はバーとして登録していました。

筆者:バーからナポリタン専門店にしようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

眞部さん:もともと喫茶店のナポリタンが大好きで、このお店の近くにある「沖縄料理ひとひねり 離 ~Hanare~」のオーナーが同級生で仲良くしているのですが、これからはナポリタンが面白いんじゃないかって話してて、美味いナポリタンのレシピを教えてくれたので、ナポリタン専門店にしちゃおうってことで始めました。

筆者:バーという夜がメインの営業から、日中の営業にシフトして大きな変化があったと思いますが、今のお客さんはどんな方たちに人気ですか?

眞部さん:この久茂地というエリアがオフィス街なので、サラリーマンの方がランチで多く来られますね。あとは私が朝からキングフィッシャーの業務で海に出ていることが多くて、海帰りに人を連れてきてナポリタンを食べてもらっています。

「シャア専用」の秘密、遊び心満載のオーナーによる卓上味変アイテム

筆者:卓上の味変アイテムもなかなか豊富に置いてあると思うのですが、「シャア専用」について伺いたいと思います。ガンダム好きってことはもうわかりました。

眞部さん:ガンダムの中でもシャア・アズナブルが好きということで、シャアのイメージカラーの赤いソースをオリジナルで作ったわけです。とうがらしベースですが、タバスコとはまた一味違う辛さですね。

シャア専用色のシャア専用。味としてはシラチャ―ソースを思わせるが、辛さの中にコクがあり、ナポリタンとマッチしている。

筆者:マヨネーズはナポリタンに、というのはなんとなくわかりますが、お好み焼ソースって言うのは珍しいですよね。

眞部さん:私が大阪出身なので、マヨネーズを置くならお好み焼ソースもだろうと、シャレみたいなもんで。ナポリタンには普通かけないと思うでしょ?でもね、置いとくとみんな結構使うんですよね、フフフ。

筆者もまた、置いてあったからお好み焼ソースをかけてみた一人だ。

ただ、お好み焼ソースは決してミスマッチというわけではなく、ちょっとした味変としては申し分ない。
デーツの甘みが、沖縄そばで作ったナポリタンをよりカオスな世界へといざなう。

「うちなーナポリタン」が沖縄観光の新たな選択肢に

筆者:うちなーナポリタンは、今後どのように発展していくのでしょうか。

眞部さん:沖縄のナポリタン文化はありそうでいてそれほど定着していないので、那覇市内をはじめ、県内で広まっていけたらいいなと思います。

「うちなーナポリタン赤翡翠」。

沖縄ならではの食材で作るうちなーナポリタンは、美味しいだけでなく、遊び心満載のオーナーの思いが随所にちりばめられ、とても面白かった。

観光資源がこれでもかというほど豊富な沖縄に「沖縄へ行ってナポリタンを食べよう」という新たな選択肢が加わり、「うちなーナポリタン」をはじめとした沖縄のナポリタン文化がますます定着することを期待したい。

筆者はまた沖縄へ行くことがあれば、必ずここを訪れたいと思っている。

【うちなーナポリタン赤翡翠(あかしょうびん)】

沖縄県那覇市久茂地2-22-16

https://www.instagram.com/uchina_napolitan/

ライター

2010年3月著書「麺食力」(ビズ・アップロード)出版、2017年4月~「はま太郎」(星羊社)連載、2019年4月~リクルートHOTPEPPERグルメ「メシ通」執筆。2009年よりスパゲッティ・ナポリタン発祥の地・横浜で「日本ナポリタン学会」会長。マイクロツーリズムの楽しさを主に伝えていきます。

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