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梅雨前線のない梅雨入り 今年は梅雨入りのタイミングが難しい

饒村曜気象予報士
あじさいと女の子(ペイレスイメージズ/アフロ)

気象庁では、梅雨のない北海道を除いた日本を12の地域(沖縄、奄美、九州南部、九州北部、四国、中国、近畿、北陸、東海、関東甲信、東北南部、東北北部)に分け、気象予測をもとに「○○日ごろ梅雨入り(明け)したと見られます」という速報を発表します。

季節現象である「梅雨入り」を、気象庁がわざわざ発表している理由は、「防災上の注意喚起」が目的です。

梅雨の期間は大雨による災害が発生しやすいことから、防災のためには、梅雨入り前に、遅くても梅雨に入ってすぐの段階で、大雨に備える必要があるからです。

ここで、九州北部には山口県が入り、中国には山口県が入っていません

これは、九州北部と山口県が似た気候であることに加え、関門海峡重視という歴史的なできごとによってです。

速報と統計値

気象台の「梅雨入りの発表」は、「梅雨を観測し、観測結果を発表」するのではなく、「梅雨を予報し、予報結果を速報で発表」しています。

そして、梅雨の季節が過ぎてから、春から夏にかけての実際の天候経過を考慮した検討をし、9月の初めに「梅雨入りと梅雨明けを統計値として確定」しています。

つまり、9月の初めに「梅雨の観測結果を発表」しているのです。

表 平成29年の梅雨入り
表 平成29年の梅雨入り

温暖前線で梅雨入り

鹿児島地方気象台は6月6日11時に「九州南部は6月6日ごろに梅雨入りしたと見られます」と発表しました。平年より6日遅い梅雨入りです。

また、福岡管区気象台は6月6日11時に「九州北部と山口県は6月6日ごろに梅雨入りしたと見られます」と発表しました。平年より1日遅い梅雨入りです。

華中の発達中の低気圧から南西に延びる温暖前線の影響で、九州が6月6日に梅雨入りしました(図1)。

図1 地上天気図(平成29年6月6日12時)
図1 地上天気図(平成29年6月6日12時)
図2 予想天気図(平成29年6月8日9時の予想)
図2 予想天気図(平成29年6月8日9時の予想)

そして、6月7日11時に、気象庁本庁と大阪管区気象台、名古屋・広島・高松の各地方気象台は、おのおのが担当する、関東甲信、近畿、東海、中国、四国地方で梅雨入りしたと見られると発表しました(6月7日13時追記、表の差し換え、最後の節の文章の一部修正)。

梅雨前線が停滞して梅雨入りの年が多いのですが、今年の西日本から東日本は、停滞した前線の北側の上空に寒気が入って大気が不安定となり、曇りや雨の日が多くなっています。梅雨前線が停滞して梅雨入りの年が多いのですが、今年の西日本から東日本は、停滞した前線の北側の上空に寒気が入って大気が不安定となり、曇りや雨の日が多くなっています。

華中の低気圧は弱まり、梅雨前線が九州の南海上に離れるため、九州では7日は大雨の可能性があるものの、週の後半は晴れてくる見込みです(図2、図3)。

図3 週間天気予報(福岡県、大阪府、東京都)
図3 週間天気予報(福岡県、大阪府、東京都)

日本の梅雨は、雨期とは違います。雨や曇りの日が多くなるという季節現象です。

九州・山口県は、梅雨入り後に雨が連日というわけではありません。

気象庁が発表しなくても、梅雨はやってきます。

第一、「何月何日に梅雨入りしました」というように、はっきりした境があるわけではありません。このため、気象庁の梅雨入りの発表文では「…ごろ」、「…みられます」という言葉がついています。

今年の梅雨入りは難しい

週間天気予報によると、大阪では9日(金)に晴れるものの、雨や曇りの日が多い一週間です。

東京にいたっては、一週間を通して雨や曇りが主体の一週間です。このため、西日本から東日本は、いつ梅雨入りしてもおかしくない一週間で、梅雨入りのタイミングが難しくなっていました。

関東から西の地方が7日に梅雨入りの発表となったのは、結果的に曇や雨の天気が一週間続くと考えたからと思います。

しかし、梅雨前線の位置は通常の梅雨入りのときとは違っています。

梅雨前線が南海上に下がっていたり、消えかかっていても、上空に寒気が入って不安定となることがあり、その時は、晴れて地上付近の気温があがると、局地的に積乱雲が発達して激しい雷雨の可能性があります。

気象情報をこまめにチェックする必要がある梅雨が始まりました。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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