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【スタートの前に試してみて!】飲まなくてもOK、スポーツドリンクの効果

たくや/ランナー医師、ランナー、ランニングコーチ

糖分の摂取が、持久力競技のパフォーマンスに役立つことは以前から証明されています。ですが近年、口腔内の感覚信号が人間の身体能力に影響を及ぼす可能性があることが分かり、2004年には「糖分を口に含んで出す、いわゆるうがい」でも持久力に効果があるという文献が公開されました。以降サイクリングやランニング、筋トレにおいてまで数々の研究がなされています。

1.スポーツドリンクのうがいの効果

糖分の摂取の効果は以前から証明されています。ですが糖質を多く摂取すれば、その分胃腸障害が生じやすくなります。さらにレース終盤では水分や固形物の摂取が困難になることもあります。そんなとき口に含んで出す「うがい」が有効となるのです。

炭水化物とプラセボのうがいについて、出力効果でパフォーマンスを研究した7つの文献:de Ataide e Silva T et al.Nutrients.2013
炭水化物とプラセボのうがいについて、出力効果でパフォーマンスを研究した7つの文献:de Ataide e Silva T et al.Nutrients.2013

2013年に公開された糖質、いわゆる炭水化物含有のうがいの総説論文では、11件中8件で、炭水化物含有のうがいにより運動パフォーマンスの改善(タイムトライアルの完了時間の短縮、走行距離の延長、または疲労困憊までの時間の延長)が認めらたとあります。さらに出力効果でプラセボと比較した7件の研究についてみてみると、7件中6件でプラセボより効果があったという結果でした。

その後2018年にはサイクリングについての総説論文2022年にはマルトデキストリンベースの炭水化物含有のうがい(要はスポドリでのうがい)の総説論文が公開されていますが、やはり一定の効果はあるようです。

2.暑い季節は、水うがいもOK?

2023年に公開された平均25歳の12人の持久力のあるランナーを被検者にしたマレーシアの研究で、暑熱下(30度、相対湿度70%)で炭水化物含有うがいvs水分うがいvs炭水化物など飲用を比較したところ、70%VO2maxで疲労困憊になるまで運動した時間×3回分が、54.7±5.4分と53.6±5.1分と48.4±3.6分であったとのことです。これは少し極端かもしれませんが、暑熱下ではスポドリでなくても、水のうがいも効果あるのでは?ということです。
そして、糖質や水以外のものでのうがいの研究もあります。

3.スポーツドリンクや水だけではない、うがいの効果

3-1.メントールのうがいはスポーツドリンクと同等だが、上乗せ効果はない

もともとペパーミントオイルミント水を飲用すると、ランニングで疲労困憊となるまでの時間が延長することが知られています。ですがうがいの場合はどうなのでしょうか。

用いる液体ごとの、出力・心拍数・直腸温におけるパフォーマンス:Best R et al.Nutrients.2021
用いる液体ごとの、出力・心拍数・直腸温におけるパフォーマンス:Best R et al.Nutrients.2021

2021年のニュージーランドからの文献では、8人の男性にサイクリングで試みられています。暑熱馴化のしていない冬に、気温32度・湿度40%に設定された部屋で40kmのタイムトライアルを行い、その間に計4回のうがいを行っています。その結果スポーツドリンク、メントール、スポーツドリンク+メントールに差異はなかったとの結果です。2024年のイギリスの研究でも同様に、暑熱下でのサイクリングにおいてスポーツドリンクにメントールを上乗せしても、効果は変わらなかったとの報告があります。要はスポドリもメントールのうがいも暑熱下において効果はあるが、相乗効果はないよ!ということです。

3-2.カフェイン含有のうがいは微妙?

カフェインのうがいについても、諸々の研究がなされています。例えば2021年のトルコの文献では、スポーツドリンクとカフェインのうがいを行うことで、筋力・筋持久力が向上したとの報告しています。ですが今のところ、カフェインうがいが有効であるとの結果が得られた研究は少ないようです。2021年に公開された総説論文では「基本的に効果はなさそうだが、空腹時や運動中に繰り返しうがいをすると、パフォーマンスが向上する可能性がある」としている程度です。

4.まとめ

多くの文献ではうがいは20~30mlの液体を5~10秒程度口に含むとしています。メントールは簡単に手に入らないと思いますので、スポドリを利用してはいかがでしょうか。のどが渇いていなくても、少しだけ口に含んで口の中に行き渡らせてから飲む。レース終盤で息が上がっていて、とても水分を摂れる状態でなくても、一口だけ口に含んで飲む。暑熱下でもそうでなくても、そうすることでランニングのパフォーマンスは上がるかもしれません。

医師、ランナー、ランニングコーチ

41歳まで某大学病院の消化器肝臓内科で勤務、現在は都内の一般病院で内科医をしています。また、中学でランニングを始めて走歴は約40年、その経験を活かしてランニングステーションでコーチもしています。総合内科専門医・消化器病専門医・肝臓専門医・抗加齢医学会専門医、JMJA公認ランニングドクター他、資格は多数。フルマラソンの完走は67回でベストタイムは2時間50分31秒(2019湘南)。ランナーからよく聞かれることやランナーに伝えたい事を、科学的なエビデンスと経験をもとに記事を書いています。

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