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12式地対艦誘導弾能力向上型の試作ミサイルが初公開

JSF軍事/生き物ライター
令和6年(2024年)版「防衛白書」より「12式地対艦誘導弾能力向上型」の試作品

 7月12日、防衛省から令和6年(2024年)版「防衛白書」が発表されました。その中で開発中の長距離対艦ミサイル「12式地対艦誘導弾能力向上型」の試作品が初めて公開されています(10ページ、29ページ、272ページに写真掲載)。12式地対艦誘導弾の能力向上型(改良型)を名乗っていますが、実際には大きさも形状も全く異なっており完全新型の別物で、ステルス形状を持つ大型の亜音速対艦ミサイルとなっています。

12式地対艦誘導弾能力向上型(試作品)

令和6年(2024年)版「防衛白書」より「12式地対艦誘導弾能力向上型」の試作品
令和6年(2024年)版「防衛白書」より「12式地対艦誘導弾能力向上型」の試作品

 写真の12式地対艦誘導弾能力向上型(試作品)はブースターが装着されていない状態で、クレーンで吊っているのでラグ(懸吊環)が装着されています。

  • 地発型(地上発射型) ※基本形。4連装発射機の地対艦ミサイルを予定
  • 艦発型(艦艇発射型) ※護衛艦搭載。他に潜水艦用の水中発射型も検討
  • 空発型(空中発射型) ※戦闘機搭載。F-2戦闘機及び次期戦闘機GCAP用

 空発型のみブースターが無い仕様ですが、発射母機の戦闘機によって速度と高度が稼げるので、投下高度次第ですが最大射程はむしろ空発型が一番長くなるでしょう。

12式地対艦誘導弾と能力向上型の形状比較

防衛省の公式資料より新旧の地対艦誘導弾の形状を比較(どちらもブースター付き)
防衛省の公式資料より新旧の地対艦誘導弾の形状を比較(どちらもブースター付き)

 ただしこの比較図の縮尺比率は厳密には正確ではありません(推定される大きさからなるべく合わせてはあります)。大きさも形状も全く異なる別物で、能力向上型(改良型)とは名ばかりで全く別の新型ミサイルであることが分かります。あまりにも違うので正式採用時には別の新しい名前が与えられるかもしれません。

関連:自衛隊が開発中の長距離スタンドオフ兵器「12式地対艦誘導弾能力向上型」の公式概要図(2024年7月10日)

直前の写真流出事件

 なお令和6年度版防衛白書を発表する2日前の2024年7月10日に、産経新聞から以下のような報道がありました。航空自衛隊の飛行開発実験団から12式地対艦誘導弾能力向上型(空発型)の写真がSNSのディスコードで流出したという記事です。

 令和6年度版防衛白書で12式地対艦誘導弾能力向上型(試作品)の写真が公表されたのは、この流出事件を受けて隠しても仕方がないとばかりに写真を差し替えて掲載したのか、それとも全くの偶然で元々掲載する予定だったのか、どちらだったのでしょうか。赤色と黄色に塗装されたミサイルの写真はモザイクが掛けられて形状がよく分かりません。なおミサイルは翼が折り畳めます。

令和6年版防衛白書より12式地対艦誘導弾能力向上型を再掲

令和6年(2024年)版「防衛白書」より「12式地対艦誘導弾能力向上型」の試作品
令和6年(2024年)版「防衛白書」より「12式地対艦誘導弾能力向上型」の試作品

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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