イランが弾道ミサイル約180発でイスラエルを攻撃
10月1日の現地時間夜間に、イランが弾道ミサイル約180発でイスラエルを攻撃しました(飛来数はイスラエル軍の発表)。7月31日にハマス政治指導者イスマイル・ハニヤがイランの首都テヘランで暗殺され、9月27日にヒズボラ最高指導者ハッサン・ナスララがレバノン首都ベイルートで暗殺され、そのどちらもイスラエルによる仕業であったことから、イランは子飼いの勢力の指導者が次々に暗殺された事への報復に打って出た形です。
4月14日にもイランはイスラエルに対してミサイル攻撃を仕掛けています。この時は4月1日にシリアのイラン大使館領事部がイスラエルによって攻撃され将官7人が死亡したことへの報復でした。
4月14日の攻撃の際はイスラエル軍からの発表ではイランの攻撃は約320目標が飛来し、内訳は自爆ドローン(170発)、弾道ミサイル(120発)、巡航ミサイル(30発)でしたが、自爆ドローンと巡航ミサイルはイスラエルとアメリカの戦闘機によって空中邀撃されて全機撃墜されており効果が全くありませんでした。
そこでイランは10月1日の攻撃では自爆ドローンと巡航ミサイルは発射せず、弾道ミサイル180発と増やして最新鋭の固体燃料式の弾道ミサイル「ファッターフ1」や「ハイバルシェキャン」などを投入しています。4月14日の攻撃で使用した弾道ミサイルはやや旧式の液体燃料式の「エマド」などが主でした。
今回目標となったのはネバティム空軍基地など幾つかの航空基地とモサドの本部などです。テルアビブ市街地やディモナ核施設などは狙われておらず、なるべく市民の死傷を出さないように目標を選定してあります。ただし迎撃で残骸の破片が市街地に落下しており、民間人1名の死亡が報告されています。
2024年10月1日:着弾するイランの弾道ミサイル
目の前に着弾する様子
アロー2防空システムによる迎撃(大気圏内)
大気圏外迎撃の様子。アロー3またはSM-3(米イージス艦)
今回の迎撃は全体的に見てあまり上手くいっていないように見えます。イスラエル軍の弾道ミサイル防衛システムは「アロー2(大気圏内)」と「アロー3(大気圏外)」なのですが、4月の迎撃戦で消耗した分の迎撃ミサイルを半年では補充しきれなかった可能性があります。
なお有名なアイアンドームはロケット弾迎撃用であり弾道ミサイル迎撃はできませんので注意してください。イスラエルの弾道ミサイル迎撃はアローの役目になります。また地中海に展開している米イージス艦もSM-3大気圏外迎撃ミサイルで戦闘に参加しています。
ただし迎撃があまり行われていないように見えるのは、あるいはイランが弾道ミサイルをわざと人口密集地でも軍事基地でもない場所に着弾させてイスラエル軍は無視して迎撃しなかった可能性もあります。
イランとしてもイスラエルとの全面戦争は避けたいので、手加減した攻撃を実施していると見られます。ただし全く打撃を与えられなければ面目も立たないので、一定程度の損害は与える積りだったのでしょう。また夜間攻撃を選んだのもミサイル攻撃の様子が映像で見えやすいように示威行動としての狙いがあったのかもしれません。
現在まだ詳しい被害報告や迎撃戦果の集計は出ていませんが、今のところ確認できる損害は民間人1名死亡となっています(なおガザ出身のパレスチナ人との報告)。ただし後から情報は更新されるでしょう。
イラン側からは弾道ミサイル発射地点の一つがイラン北西部のタブリーズであると報告されています。タブリーズからイスラエルまでの射線にはシリアが入っており、シリア上空での迎撃戦闘が行われた模様です。
またヨルダンの首都アンマンに撃墜されたイラン弾道ミサイルの残骸が幾つか落下しているので、ミサイル発射地点は複数ありイラン中央部や南部からも発射された可能性があります。
なおヨルダン川西岸にも多数のイラン弾道ミサイルの残骸の落下報告がありますが、これはイランが狙ったわけではなくイスラエルの迎撃で意図しない場所に落下してきたものになるでしょう。シリアやヨルダンに落下した残骸と同じです。