米商務長官「中国の半導体は米国の数年遅れ」、対中輸出規制の効果あらためて強調
ジーナ・レモンド米商務長官は、中国・華為技術(ファーウェイ)のスマートフォンに搭載されている半導体について、「米国製に劣る」と述べ、バイデン政権による対中半導体輸出規制が効果を上げているとの考えをあらためて強調した。英ロイター通信や米CNBCがこのほど、同氏とのインタビューを報じた。
米政府を驚かせたファーウェイのスマホ半導体
米CBSニュースの番組のインタビューでレモンド米商務長官は、「米国に比べて何年も遅れている。米国は世界で最も高度な半導体を有しているが、中国はそうではない。私たちは中国を上回るイノベーションを実現した」と述べ、「これは(中国に対する)輸出規制が機能していることを表している」と自信を示した。
米政府による輸出規制を受けているファーウェイは2023年、5G(第5世代移動通信システム)への接続機能と、7ナノメートル(nm)技術の半導体を搭載したスマートフォン「Mate 60 Pro」を発売した。これは、半導体受託生産(ファウンドリー)大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)が製造したとみられている。
世界トップ企業の最先端半導体と比べて何世代か後れを取っているものの、米国が中国の技術開発を阻止しようと試みていた水準は上回っていた。米国の制裁下にありながら、高度半導体を自国で製造できるその技術力は、驚きをもって受け止められた。
背景に米国の技術
米ブルームバーグ通信などによると、SMICは、米国の半導体製造装置大手であるアプライド・マテリアルズ(Applied Materials)とラムリサーチ(Lam Research)の技術を使用し、ファーウェイ向け半導体を製造した。米政府は先端半導体に関して中国向けの輸出を制限しているが、SMICはこの規制が導入される22年10月より前に装置を入手していたとみられている。
ただ、米政府がファーウェイを安全保障上の脅威とし、同社に対する禁輸措置を講じたのは、それ以前の19年である。このことから、SMICは米国法に反してファーウェイに高度半導体を提供した可能性があると、米商務省はみている。
一方、Mate 60 Pro発売後の23年10月、バイデン政権は輸出規制を強化すると発表。この新規制によって、中国などの「懸念国」に対する米国製先端半導体や製造装置の禁輸対象を拡大した。
これを受け、中国当局は米国の政策を繰り返し非難している。また、中国に主要な顧客を持つ米国の半導体メーカーは、中国市場へのアクセスを失うことに懸念を表明している。
レモンド氏は今回のインタビューで、「米国は多くの分野で中国とのモノとサービスの取引を望んでいる」としながらも、「しかし、国家安全保障に影響を与える技術に関しては、ノーだ」と断言した。
米政府、国内半導体生産を後押し
米国では22年8月に半導体の生産や研究開発に527億ドル(約8兆2000億円)の補助金を投じる「CHIPS・科学法」が成立した。同法はバイデン政権の産業政策の中心に位置付けられ、国家安全保障と経済成長に不可欠とされるハイテク部品の国内生産を復活させるために政府資金を活用する。
米商務省は、この補助金の配分も監督しており、先ごろは米インテルや韓国サムスン電子、台湾積体電路製造(TSMC)、米マイクロン・テクノロジーなどに計数百億ドル(数兆円)を割り当てた。これらの企業はいずれも米国内での生産能力を拡大中だ。レモンド氏はCNBCとのインタビューで、「割り当てられた補助金は年末までにすべて送金される」と説明した。
筆者からの補足コメント:
米国は1990年代に世界半導体生産の3分の1以上を占めていましたが、そのシェアは2020年に約12%まで低下しました。こうした状況を見て、レモンド米商務長官は先ごろ記者団に対し、「米国のサプライチェーンは極めて脆弱(ぜいじゃく)な状態にある」と懸念を示していました。「CHIPS・科学法」による補助金は、インテルに対し最大85億ドル、サムスン電子に対しては最大64億ドル、TSMCには最大66億ドル、マイクロンには61億ドルを支給することが決まっています。
- (本コラム記事は「JBpress」2024年5月10日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)