懐かしいのに進化中。ロングセラー駄菓子「クッピーラムネ」の秘密
「クッピーラムネ」「フーセンガム」「フィリックスガム」「アルファベットチョコレート」「ミレーフライ」「さくらんぼ餅」…。これらはすべて名古屋市西区で作られている駄菓子。名古屋は実は日本有数の駄菓子の生産地で、超高層ビルが立ち並ぶ名古屋駅からほんの徒歩15分くらいの明道町界隈にメーカーや問屋が集積しています。
中でも代表格がカクダイ製菓のクッピーラムネです。口にふくむとほろりとくずれて、ほのかな甘みと酸味がシュワッと広がりスゥ~ッととけていく。独特の食感や味わいに懐かしさを感じる人も多いんじゃないでしょうか。
創業99年の老舗メーカーが貫く開発当初からの製法
カクダイ製菓は大正8(1919)年に和菓子メーカーとして創業し、戦後まもなくラムネ製造に乗り出しました。現在、ラムネ専業メーカーとしては国内最大規模だといいます。
およそ70年ほど前から変わらないのが湿式(しっしき)製法という作り方です。
「ラムネは口どけのよい湿式ラムネと、ぽりぽりと噛んで食べる乾式ラムネの2種類があり、うちはほとんどが湿式です。最近は乾式ラムネの方が商品の幅が広く、製造ラインを自動化しやすいため市場の大半を占め、湿式ラムネは全体の1割以下だと思います」と同社・相談役の阿部昭夫さん。
製造手順は生地をねり、型抜きし、乾燥させ、選別・梱包といたってシンプル。もちろん機械化はされていますが、手作業の工程も随所に残っています。
安全・安心志向に対応しベビー市場でも人気
昔ながらの手作業も大切にしながら懐かしい味を守っている…そんな風に感じますが、実は時代に合わせて材料の見直しも図っているといいます。
「クッピーラムネは離乳食後の赤ちゃんでも食べられ、ベビー市場でも人気があります。そのため、近年は特に安全・安心に配慮しています。かつては卵殻カルシウムを一部使用していましたが、一部のPB商品を除いて現在は不使用。レギュラー商品ではアレルギーの恐れのあるものは一切使っていません。2010年頃から着色料・香料を使用しない『1才ごろからのクッピーラムネ』を、昨年には着色料・香料・酸味料を使わない『無添加クッピーラムネピュア』も売り出しました」と総務課の藤井幸博さん。世の流れで安全・安心志向は必然的な方針とはいえ、「古くからのファンの方も多いので、原料を変えても『味が変わった』と言われないようにすることが苦心のしどころです」といいます。
実際のところどうなのか?と筆者も実食。いわれてみれば、甘味、酸味は記憶の中にある味よりも優しく自然な感じがしないでもない…とも思いましたが、子供の頃から慣れ親しんでいた味と大きな違いは感じませんでした。何より軽やかで爽やかな味と口どけのよさに、ついついくり返し手が伸びてしまいました。
コラボ商品も続々。販売店限定のオリジナルパッケージはレア度高し
さて、もうひとつの変化がパッケージです。実はこのところ、様々な施設やキャラクターなどとのコラボ商品が次々売り出されているのです。
最近では、ふなっしー、竹島水族館、中日ドラゴンズのマスコット・ドアラ、祭nine.(名古屋のイケメンアイドル、BOYS AND MENの弟分グループ)、東山動植物園、がブリチキン。(名古屋発の人気居酒屋チェーン。近日発売予定)などのオリジナルパッケージ入りの商品が登場しています。
「キャラクタービジネスが盛んになったのはここ数年のことで、ぬいぐるみやバッグ、Tシャツ、文具など、ラムネとは関係なく、キャラクターのかわいらしさを活かした様々な商品が作られています。こうしたグッズ類については当社が企画しているのではなく、各方面から持ち込まれるものがほとんど。どれくらいの商品があるのか私たちでも把握しきれないほどです」と営業部の中島功次さん。
発売当初、ライバル商品も多く売り上げが伸び悩んでいた同社のラムネがブレイクしたのは、昭和38(1963)年に現在のうさぎとリスのキャラクターを起用したのがきっかけなのだとか。当時を知る相談役の大橋さんは「クッピーラムネがこんなに愛され続けているのはキャラクターのおかげ」といいます。ちなみに大功労者である2匹のキャラクターは、うさぎが「クッピー」、リスが「ラム」の愛称で通っていますが、公式の名前はついていないそうです。
気づかないうちに進化し、活躍の場も広がっているクッピーラムネ。それでも愛され続けているのは、味もキャラクターも大きくは変わらず昔ながらのテイストが守られているからでしょう。名古屋が生んだ庶民派ロングセラー。口にふくめば、懐かしさとともに親しみやすい味わいが広がるはずです。