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「勝負の3週間」ツイッター上の雰囲気はどう変わった?

鳥海不二夫東京大学大学院工学系研究科教授
GoToも一時停止(提供:koni/イメージマート)

日本でも第三波が来てしまった新型コロナですが,11月25日に「勝負の3週間」として感染対策の徹底が呼びかけられました.その勝負の3週間が終わった現在,残念ながら新型コロナの新規感染者数の増加は未だ収束の気配がなく,ついにGoToキャンペーンの一時停止が決まってしまいました.

そこで,ソーシャルセンサーの考えを用いて,ツイッター上ではこの勝負の3週間の感情に変化はあったのかを調べてみました.

勝負の3週間直前1週間の感情と,勝負の3週間の感情との類似度の変化を見てみましょう.具体的には,コロナ関係のツイートに現れた感情をML-Askを用いて抽出し,正規化したうえで類似度を比較しています.

勝負の3週間の感情の変化(著者作成)
勝負の3週間の感情の変化(著者作成)

図中の青いラインが11月24日の感情との類似度,オレンジのバーがPCR検査陽性者数です.このグラフでは1に近いほど11月24日に近い感情がツイッター上に存在することを意味します.

こう見ると,ツイッター上の感情には大きな変化があったとは言えないように思えます.12月15日の段階でも11月24日との相関が0.6とかなり高い相関を示しています.

では,勝負の3週間にはあまり効果がなかったということは,やはり我々は油断して感染拡大を招いてしまったのか?という疑問が生まれます.そこで,この12月15日の感情と,過去の感情との類似度を比較してみました.

12月15日の感情との類似度(著者作成)
12月15日の感情との類似度(著者作成)

これを見ると,直近までの感情と類似していた過去の期間は,第1波のピークが終わりはじめた5月初旬や,第2波のピークが終わり始めた8月下旬であることがわかります.

波が引き始めたタイミングと類似しているというのをどう見るのかは難しいところですが,その後感染者数が減少している時期の感情と類似しているというのは少なくとも油断している時期ではないということができるのではないかと思います.

ということで,実は「勝負の3週間」といった11月24日の時点で,すでに(少なくともツイッター上では)人々の感情は第1波,第2波と同レベルに警戒しており,その状態が継続されていたと考えたほうがよさそうです.

にもかかわらず,いまだ感染者数が減少に転じないのは,単に我々の油断以外にも要因がありそうな気がします.感情面では危機感を感じていないということはなさそうなのですが.

第1波,第2波の時はこの状態から徐々に感染者数が減っていきました.第3波でもここをピークに減少に転じてくれることを願っています.

東京大学大学院工学系研究科教授

2004年東京工業大学大学院理工学研究科機械制御システム工学専攻博士課程修了(博士(工学)),2012年より東京大学大学院工学系研究科准教授,2021年より現職.計算社会科学,人工知能技術の社会応用などの研究に従事.計算社会科学会副会長,情報法制研究所理事,人工知能学会編集委員長.人工知能学会,電子情報通信学会,情報処理学会,日本社会情報学会,AAAI各会員.「科学技術への顕著な貢献2018(ナイスステップな研究者)」

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