一時的にマンション価格が下がる「供給過多」が、地価上昇を続けるあの大都市で発生か
駅から徒歩2分の地上25階建て超高層タワーマンションで、58平米台1LDKが3900万円台から。20階以上の上層階の73平米台3LDKでも7900万円台。売り主は2月に発表されたオリコン顧客満足度調査・新築マンション(首都圏)で、5年連続1位となった野村不動産……このマンションが建設されている場所はどこなのか想像していただきたい。
土地価格が抑えられた首都圏・近畿圏の郊外?もしくは地味目の地方都市?
いずれも、ハズレ。
じつは、このマンションが建設され、販売されているのはリニア中央新幹線開通を見越して再開発が進む名古屋市内。それも、名古屋駅に近い場所だ。
マンション名は「プラウドタワー名古屋丸の内ステーションマークス」。地下鉄桜通線・鶴舞線の丸の内駅から徒歩2分で建設中の超高層マンションである。
そう知って、驚く人が多いだろう。名古屋の中心部は全国的に見ても地価の上昇が著しく、新築マンションの価格も高騰。バブル状態だったのではないか、と。実際、名古屋駅周辺で分譲されている新築マンションならば、50平米台で5000万円以上、超高層の上層階であれば1億円を超えるケースが多い。
それが、この価格とは。もしや、名古屋のバブルが崩壊したのか、と先走った見方も生じそうなので、急いで正しい状況を解説したい。
マンション建設ブームが起きていた名古屋中心部
名古屋の中心部では、リニア中央新幹線の開業を見越した再開発が進んでいる。名古屋駅周辺では多くのビルが建て替えられ、その中にトヨタ自動車も本社機能の一部を移転。街の様子が大きく変わっている。
栄エリアでも中日ビルの建て替え(冒頭の写真)など再開発が進行。名古屋駅と栄駅を結ぶエリアではオフィスビルとともに分譲マンションも次々に建設され、マンションブームと呼べる状況も生まれた。
そのため、超高層マンションを中心に分譲価格が上がっている場所と認識している人が多いことは前述したとおりだ。
それは事実なのだが、じつは昨年あたりから供給過多の状況が生まれてしまった。一気に大量の新築分譲マンションを出しすぎたのだ。
といっても、これは、スケールの大きな再開発が進む場所で往々にして起きる現象である。
再開発で大きく生まれ変わる場所では、その開発初期、マンション購入者が増える前に、新築マンションの供給のほうが増えてしまい、「いくらなんでも多すぎる」という状況が生まれがちだ。
首都圏の湾岸エリアでも、神奈川県の武蔵小杉やみなとみらい21地区でも開発初期に供給過多が生じた。その結果、一時的に販売価格が下がった期間があった。
たとえば、湾岸エリアでは2005年頃に供給過多が起き、豊洲駅に近い場所で「スターコート豊洲」と「プライヴブルー東京」がほぼ同時に3000万円台で購入できる3LDKを売り出したことがある。
当時、その価格でも販売はゆっくり進んだので、購入者はどちらにしようかじっくり考えた、という今では考えられないような状況があった。
横浜駅に近いみなとみらい21地区では、2005年から2006年にかけて供給過多となり、「ブリリアグランデみなとみらい」の約42平米1LDKが2680万円から。横浜駅から徒歩4分の「パークタワー横浜ステーションプレミア」も、約41平米の1LDKが2850万円からの価格設定だった。
武蔵小杉では2010年頃が供給過多で、駅徒歩2分のマンションで約63平米の2LDKが5000万円で売り出された事例がある。
その後、供給過多が解消され、いずれの地域もマンション価格が回復。暴落に至らなかったことはご存じの通りだ。
供給過多で価格が下がっても
今では考えられないが、上記3エリアでは供給過多が起きて、安いマンションが売られていた期間があった。それと同じ現象が、今、名古屋駅周辺に起きているわけだ。
不動産会社としてはあまり書き立てて欲しくないかもしれないが、予想よりも多くの物件が売り出されてしまったので、当初計画よりも価格設定を下げざるを得ない状況が生まれるわけだ。不動産会社には気の毒だが、好条件の住まいが低価格で手に入るチャンスが生じることになる。
供給過多が起きた場所では、注目価格の物件が出てきやすいのだ。
しかしながら、供給過多でお買い得物件を購入できるのは、需要が旺盛な都心部や再開発エリアであることが条件。需要が少ないエリアで供給過多が起き、価格が下がると……つまり、ポテンシャルが低くマンション購入者が少ない場所で安くなった物件は、その後、中古でさらに値段が下がる可能性があるので、要注意なのである。