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「ヤバイよ…ママ見てるよ…!」とイタズラする犬にハラハラする猫。動物行動学的に考えると

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
提供:ゆに&メッシ(@UNI_BorderC)さん

SNSの中には、犬と猫の投稿がたくさんあります。そんななか、話題になっている犬と猫がまるで人間のきょうだいのように愉快に振る舞っている動画を紹介します。

猫がイタズラをする犬の隣で「飼い主に見られているよ」と、ハラハラしています。猫が犬のイタズラを止めているのです。なぜ猫が犬のイタズラを止めるのかを動物行動学的に見ていきましょう。

「イッヌ、ヤバイよ…ママ見てるよ…!」

提供:ゆに&メッシさん

左側にいる犬がボーダーコリーのゆにちゃんで、右側にいる猫がメッシくんです。

この2匹のTwitterの動画は、123.8万回再生され、11.5万いいねが付いています(2月27日時点)。

そこでは、一生懸命に畳を掘っているゆにちゃんの姿があり、隣ではメッシくんが困った顔してカメラの方を見ています。メッシくんは「ぼくは、ゆにちゃんに注意しているのよ」と飼い主にアピール。

ゆにちゃんは、傍らでメッシくんに懸命に畳を掘るのをやめた方がいいと片方の前脚でトントンされていますが、止める気配もなく楽しそうに続けています。最後は、メッシくんは両前脚でゆにちゃんに掘るのを止めるように訴えています。

Twitterのユーザーからは「猫さんのわたしは止めているのだからというアピールがかわいい」「この猫さん、知性があります」などたくさんのコメントが寄せられています。

なぜ、この動画がかわいいか?

猫のメッシくんの知性に感動します。

猫は、本来は単独行動する動物です。本来の猫なら犬がイタズラをしていたら、高いところから「あぁあ、またイタズラをして」と眺めているだけです。犬と一緒に遊んだりすることは、少ないです。

犬と猫を室内で飼っている人は、割合にいます。診察室で、犬と猫が共同してイタズラをするのを聞きます。たとえば、戸棚の上に置いてある食べ物を猫が落として、犬と猫が一緒に食べるなどです。このメッシくんのように、犬のイタズラを止める子は、ほとんどいないです。

なぜ、メッシくんは知的なのか?

まいどなニュースによりますと、もともと飼い主さんは猫も好きだったそうで、ゆにちゃんが落ち着いてきた生後8カ月の頃に、保護団体からメッシくんを迎えたそうです。そのときの保護団体にお願いしたのは、「大きな犬と仲良く過ごせそうな猫を」でした。

それで、メッシくんがゆにちゃんと一緒に暮らすようになりました。飼い主さんも、メッシくんの知的さに驚いている様子です。飼い主さんが、キッチンに入ったメッシくんに「戻って」というとメッシくんはリビングへ戻っていくそうです。

メッシくんがどのような経由で保護団体に来たかはわかりませんが、保護されてから、ずっと人間に話しかけられて育ったのでしょう。幼いときから、人間が言葉をかけていない猫(犬も)は、なかなか言葉を理解できないものです。

そして、生後3カ月という社会性ができるときに、ゆにちゃんと遊びながら室内で育ったので、このような知的な子になったのでしょう。

もともと知的でも環境が整わないと、犬と猫を一緒に飼ったからといって、このように、犬のイタズラを注意する猫にはならないものです。

ゆにちゃんは、なぜあのとき、畳を掘ったのか?

ゆにちゃんの名誉にために伝えておきますが、毎日、ゆにちゃんは畳を掘っているわけではありません。ゆにちゃんは小さい頃は掘っていましたが、やめるよう教えたので最近は掘っていないそうです。

なぜ、この日は畳を掘ったのか?それは、この日、ドッグランに連れていけなかったそうです。それぐらいで、こんなイタズラをするかなと思うかもしれませんが、ゆにちゃんは、ボーダーコリーなので運動量が多い犬種です。次にボーダーコリーとは、どんな犬かを見てみましょう。

ゆにちゃんは、ボーダーコリーなので

提供:ゆに&メッシさん

ボーダーコリーは、スコットランドで何世紀にもわたって牧羊犬として働いていました。羊を追う犬です。主人の命令で、羊の群れの移動を止めたり、左や右に回らせたりしていた非常に優秀な犬です。

羊を追って生活していた犬なので、運動量が多いです。そのため、できれば毎日、ドッグランなどに行って走らせてあげた方がいいですね。

時間がないときは、フリスビーなどを投げて取ってくる運動なども喜びます。この点が、チワワなどの小型犬と違うところです。

このゆにちゃんとメッシくんの動画を見て、ボーダーコリーを飼いたくなった人もいるかもしれませんが、運動時間が取れない人には不向きです。

ボーダーコリーは、体高は約46~53cm、体重は約14~22kgありますので、中型犬です。

提供:ゆに&メッシさん

ゆにちゃんとメッシくんは、犬と猫という違う種ですが、幼いときから、一緒に暮らしているので、同じ種のように思っているのかもしれません。

猫はもともとエジプトにいました。古代ローマ軍が、エジプトを征服したので猫は地中海からヨーロッパに、さらにアジアにも広まり、その後中国を経て日本に渡ってきたというのがおおよその経過です。

猫が日本にやってきたのは、中国から仏教が伝えられた際、経典をネズミの害から守るため船に一緒に乗せられてきたという説もあります。猫は、ネズミを人間の近くに寄せ付けないために飼われていますが、いまでは猫は室内飼いになり、人間のいうことをよく理解するよき伴侶になっています。

人間や犬と群れて組んで生活する動物になりつつありますね。

ゆにちゃんとメッシくんの愉快な動画で、ほっこりする人も多くいます。こんな風に保護猫を大切にしている投稿は、本当にありがたいです。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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