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サンウルブズで世界を相手に大活躍!学習院大出身FB江見「アタックはスーパーラグビーでも通用する」

斉藤健仁スポーツライター
今年、SRデビューを果たしたFB江見。力強いランでチームに勢いを与えている(写真:Haruhiko Otsuka/アフロ)

スーパーラグビー参入2年目の日本を本拠地とするサンウルブズ。アタックでは通用しているシーンも多く善戦しているが、開幕から5戦全敗と結果に恵まれていない。

そんなチームのなかで、スーパーラグビーデビューとなった開幕戦から持ち前の力強いランで世界を舞台に躍動している選手がいる。それは身長180cm、体重95kgのWTB/FB江見翔太(サントリーサンゴリアス)だ。

5試合が終わった時点で江見は、スーパーラグビー全選手の中で

・ボールを持って走った距離は2位タイの407m

・タックルされながらパスをする「オフロードパス」は11回でトップタイ

・ディフェンスを突破した回数は19回で4位タイ

・ラインブレイクした回数もトップと2差の10回

と世界のトップ選手と肩を並べており、上記のように堂々と個人ランキングで上位に名を連ねている。 

シンガポールと南アフリカ遠征を終えて帰国した江見は「南アフリカのチームはフィジカルが強く、やっぱり真正面から当たると太刀打ちできないが、ずらしたり、タイミングをずらせばラインブレイクできたり、半身前に出たりとゲインでき。オフロード(パス)は外側にチャンスがあれば狙っていこうと話しています」と振り返った。

またサンウルブズでは、主戦場としているWTBではなくFBでのプレー時間が長かったことに関して「ステップは右でも左でも切れますし、どっちがいいということではない。FBで出たときは、その仕事に順応しなければいけないと思ってやっていましたし、両WTBとコミュニケーションが取れていました。最後のストーマーズ戦は(WTBで出場し)FBがJJ(ジェイミー-ジェリー・タウランギ)で、もう少しコミュニケーションが取れていれば、もっとスムーズに連携できたと思います」。

さらに「(WTB福岡)堅樹のようにトライを取りきるキャラではないので、次のアタックで勢いをつけられればと思ってやっていましたね」と続けた。

江見と言えば、決して強豪校とは言えない関東大学対抗戦Bグループ(2部)の学習院大出身の選手として知られている。中学までは野球やサッカーをしていたが学習院高校時代にラグビーを始めて、大学1年時にたまたま7人制日本代表と練習試合をしたことをきっかけに、その能力が買われて7人制日本代表入り。U20日本代表にも選ばれたが、まだ15人制では日本代表歴はない。

社会人では、誘われたのではなく「自ら売り込んで」トップチームの一つであるサントリーに入部。2年目の2015年度はワールドカップイヤーで変則的なシーズンだったがトライ王とベスト15に輝き、3年目の2016年度は主に左WTBとして先発し6トライを挙げて2冠に貢献。ただ、どちらかと言えばトップリーグのMVPにも輝いた右WTB中鶴隆彰の陰に隠れた存在だった。

それでもトップリーグでの活躍が評価されて、江見は1月末に中鶴とともに追加選手としてサンウルブズ入りを果たした。

開幕戦のハリケーンズ戦では、控えメンバーながら、昨年は全試合出場したFBリアン・フィルヨーンが負傷したこともあり、後半から出場。昨年の王者相手に得意のランで仕掛けてファンを魅了した。

「途中から出ましたが、ラインブレイクだったり、強みのランだったりとアタックはスーパーラグビーでは通用するんだなと。だから自信を持って南アフリカのチームにもできました」(江見)

本人の言葉通り、2戦目から4戦目はFB、5戦目はWTBとして試合に4試合連続先発し、力強いランを繰り返してチームに勢いを与えた。4戦目のブルズ(南アフリカ)戦では21-34で敗れたもののMOM(マン・オブ・ザ・マッチ)にも選出された。

選手個人としては栄誉なことだが、江見は決して破顔することはなく「MOMに選んでもらって正直嬉しいですが、この遠征で、惜しい、惜しいと言われながらも全敗してしまった。MOMをもらうよりも勝ちたかった」とチームとして勝てなかったという事実に悔しそうな表情を見せた。

スーパーラグビー参入2年目を迎えたサンウルブズは、今年から、2019年の自国開催のワールドカップに向けて日本代表強化のために、ほぼ全員が日本代表、もしくは今後日本代表になり得る選手で構成されることになり、サンウルブズ=日本代表となった。

ただ、今回の遠征は、コンディション調整や負傷の関係で決してベストメンバーとは言えない中で、江見やHO庭井祐輔といった若い力が台頭してきたことは、サンウルブズ、ひいては日本代表のポジション争いやチーム力向上という点では大きな意味を持つ。

サンウルブズのフィロ・ティアティアHCは「今回のツアーメンバーは期待値をはるかに超えてくれました。日本代表コーチもそう言っています。スコッド内で良い競争があります。また次回のツアーに向けてメンバーには変更を加えて行きますが、今年は大人数のスコッドで良いポジション争いができています」とチーム内競争を歓迎している。

また江見はFBのポジション争いに関しては「(昨秋の欧州遠征で日本代表のFBを務め、サントリーでもチームメイトの松島)幸太朗はボールを持ったらラインブレイクしますし、笹倉(康誉/パナソニック)さんは安定感があります。2人とは違ったインパクトを残せることができたら、それでいいと思う」と冷静にコメントし、相手を特に意識することなく、自分の持ち味で勝負する。

サンウルブズで世界を相手に大活躍中の江見。その視線は、もちろん日本代表、そして2019年のワールドカップに向いている。ただ、決して足下を疎かにすることはない。

「日本代表に入りたい気持ちは強いですし、今年は2019年に向けてステップアップするためにも大事な年だと思っています。ただ、日本代表を狙うというより、サンウルブズで経験を積み上げていって、それが日本代表につながればいいと思います」(江見)

やはり、スーパーラグビーはトップリーグよりも「体に残っているダメージは多い」(江見)という。サンウルブズは1週間のbyeウィーク(休みの週)を挟んで、4月2日に再合流し、4月8日(土)、ホームの東京・秩父宮ラグビー場で行われるブルズ戦に備える。

江見は遠征の勢いのまま、チーム内競争に勝ち、再び先発のジャージーを着ることができるか。そして、この試合でこそ、サンウルブズの勝利につながるラン、オフロードパス、そしてトライを――それがファンだけでなく、何より江見本人の強い思いである。

スポーツライター

ラグビーとサッカーを中心に新聞、雑誌、Web等で執筆。大学(西洋史学専攻)卒業後、印刷会社を経てスポーツライターに。サッカーは「ピッチ外」、ラグビーは「ピッチ内」を中心に取材(エディージャパン全57試合を現地取材)。「高校生スポーツ」「Rugby Japan 365」の記者も務める。「ラグビー『観戦力』が高まる」「ラグビーは頭脳が9割」「高校ラグビーは頭脳が9割」「日本ラグビーの戦術・システムを教えましょう」(4冊とも東邦出版)「世界のサッカー愛称のひみつ」(光文社)「世界最強のGK論」(出版芸術社)など著書多数。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。1975年生まれ。

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