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「村田諒太vsゴロフキンは信じられない結末になる」 海外の専門家が語った予想とは

三浦勝夫ボクシング・ビート米国通信員
村田はゴロフキンに勝てる!(写真:松尾/アフロスポーツ)

50-50の試合?

 村田諒太(帝拳)vsゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)の世界ミドル級統一戦が近づいてきた。2年半ぶりのリングながら万全の仕上がり状態が伝えられるWBAスーパー王者村田に対し、ビッグネーム、IBF王者ゴロフキンも米国フロリダ州南部で最終調整に余念がない。日本ボクシング史上最大のイベントになるとも言われる対決はどんな結末が待っているのか?海外の専門家2人に試合を占ってもらった。

 まず、ゴロフキンがキャンプを敢行するフォートローダーデールに近いマイアミで「ムンド・ボクシング」を主宰するキューバ人トレーナー、ペドロ・ディアス氏。そう、村田がWBA王座を獲得するために2度戦った元王者アッサン・エンダム(カメルーン=フランス)を指導した人物。その後の村田の熟達ぶりや挫折を考慮しながら同氏は持論を展開してくれた。

――どんな試合展開を予想しますか?

ディアス氏「いい試合になると思う。なぜなら2人ともゲレロ(好戦的な選手)だからだ。ゴロフキンは並外れたボクサー。ムラタも例外的な選手。ハードパンチャー同士だし、ファンには堪えられない素晴らしいファイトが展開されると期待している」

――プロの実績からゴロフキン有利の予想が主流ですが。

ディアス氏「私は両陣営が立てる作戦が重要になると考えている。それが展開や勝敗を左右する。だから両者に勝つチャンスが生まれる。信じられない試合、結末が待っているかもしれない。私は50-50の試合を予想している」

ムラタは信じられないボクサー

――作戦がキーポイントになると……。

ディアス氏「それと関係するけど、各チームの総合力、化学変化が勝敗に直結する気がする。ムラタはいいチームに恵まれている。トレーナーやスタッフもそうだし、プロモーターのミスター・ホンダ(帝拳ジム本田明彦会長)も含めてね。ゴロフキンの方もいいチームが控えている。トレーナーのジョナサン・バンクス、プロモーターのトム・ローファーとね。彼らが授けるゲームプランに注目したい。ムラタ、ゴロフキンともそれをどう実行するかだ」

――ゴロフキンにはボディー攻撃が有効とも言われてますが。

ディアス氏「それは両者に当てはまる。たぶん経験ではアマチュアとプロを合わせてゴロフキンに分があるだろう。でもオリンピック・チャンピオンのムラタも負けていない。アマチュアの経験はプロのリングでも役立つから。アッサン(エンダム)と日本に行った時、それを感じた。ムラタはいろいろな意味で信じられないボクサーだ。勝つチャンスは十分にある。でもディフェンスに気を抜いてはいけない」

――ノックアウト決着と考えていいでしょうか?

ディアス氏「2人ともパンチャーだからね。ムラタは年齢はもちろん、肉体的にゴロフキンと比べてまだ若いと思うし、素晴らしいサポートチームに恵まれている。ビッグステージだけどリラックスしてリングに上がれると思う。それと両者ともインテリジェンスを兼ね備えた選手だからポイントを計算しながら戦う可能性も出てくる。だから意外と判定決着もあるかもしれないよ」

エンダム(左)を指導したディアス氏(写真:BoxingScene.com)
エンダム(左)を指導したディアス氏(写真:BoxingScene.com)

短期決戦それとも消耗戦?

 続いて米国の老舗ボクシング専門誌「リング誌」のダグ・フィッシャー編集長に聞いた。

――どのような試合展開を予想されますか?

フィッシャー氏「ワールドクラスのアクション満載のファイトを期待している。ゴロフキンはリング誌のミドル級ナンバーワンにランクされ、しかも8年以上それを継続している。一方ムラタはリング誌で5位を占める。2人とも世界チャンピオン。アグレッシブなスタイルを売り物に戦い、相手にプレスをかけながらねじ伏せてしまう。このようなマッチアップは撃ち合いが必至で、同時に消耗戦に持ち込まれる可能性が高い」

――ゴロフキンは不動の地位を築く強敵ですが、村田は勝つチャンスがあるでしょうか?

フィッシャー氏「イエス。彼にはチャンスがある。しかしムラタは常に最善を尽くさなければならない。先制攻撃も効果的だろう。ロブ・ブラントとのリマッチ、スティーブン・バトラーとの試合で披露したように。それと対ゴロフキンには顔面の防御が何より重要になる。それでも厳しいプレッシャーをかけ、素早いワンツー・コンビネーションが決まれば勝利への道が拓けると思う。同様にベテラン、GGG(トリプルジー=ゴロフキンのニックネーム)の40歳という年齢を考えるとボディーアタックが非常に有効だと思える」

ゴロフキンとバンクス・トレーナー(写真:BSО Entertainment) 
ゴロフキンとバンクス・トレーナー(写真:BSО Entertainment) 

6-1のオッズが覆る可能性は?

――ズバリ、あなたの予想は?

フィッシャー氏「私は将来の殿堂入りボクサー、ゴロフキンの終盤のストップ勝ちか判定勝ちに傾く。もし序盤から打撃戦になれば、ムラタがベテランを捕まえる、それも一撃でアップセットを起こす見込みもある。だけど消耗戦になってもゴロフキンの大舞台で培った経験とまだまだ上質なジャブが次第に威力を発揮しタフな試合を乗り切るとみる」

 米国のオッズメーカーが出している数字は6-1あるいは7-2でゴロフキン有利となっている。GGGはすでに9月17日、スーパーミドル級4団体統一王者サウル“カネロ”アルバレス(メキシコ)に挑む交渉が進展中。もちろん村田に勝つことが条件だが、メディアが煽り、ファンの関心が一段と高まっている。決戦まで2週間あまり。4月9日のさいたまスーパーアリーナから世界を揺るがすニュースが発信されることはあるだろうか。

ボクシング・ビート米国通信員

岩手県奥州市出身。近所にアマチュアの名将、佐々木達彦氏が住んでいたためボクシングの魅力と凄さにハマる。上京後、学生時代から外国人の草サッカーチーム「スペインクラブ」でプレー。81年メキシコへ渡り現地レポートをボクシング・ビートの前身ワールドボクシングへ寄稿。90年代に入り拠点を米国カリフォルニアへ移し、フロイド・メイウェザー、ロイ・ジョーンズなどを取材。メジャーリーグもペドロ・マルティネス、アルバート・プホルスら主にラテン系選手をスポーツ紙向けにインタビュー。好物はカツ丼。愛読書は佐伯泰英氏の現代もの。

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