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【Bリーグ】一貫した判定基準がレフェリーたちにまだ浸透していない?

青木崇Basketball Writer
難しい仕事といえ、レフェリーには判定基準の一貫性が必要(文中人物とは無関係)(写真:田村翔/アフロスポーツ)

 Bリーグを担当するレフェリーたちが、試合前の準備と試合後の復習で努力していることは、以前の記事で紹介した。今季からFIBAルールの一部改正が適用されたこともあり、その対応で苦労しているのは容易に想像できる。その中でベストの仕事をしようとしているものの、判定基準の一貫性でまだまだ課題があると思わざるを得ない。それは、以下の3試合に起こったことが理由である。

●9月30日:琉球ゴールデンキングス対サンロッカーズ渋谷

 4Q残り5分49秒、ロバート・サクレのシュートフェイクにジャンプしてしまったアイラ・ブラウンは、着地の際に腕が首のあたりにぶつかった。サクレはフロアに倒れたが、短時間で立ち上がった。

●1月21日:横浜ビー・コルセアーズ対千葉ジェッツ

 2Q残り1分8秒、千葉の伊藤俊亮がゴール下でボールをもらった際、ハシーム・サビート・マンカはフェイクに引っかかった。ジャンプした後の着地で伊藤に激しく激突し、サビートの腕が首に入ってしまった勢いで、そのままフロアに叩きつけられる。伊藤はフロアにしばらく倒れていた。

●4月14日:栃木ブレックス対富山グラウジーズ

 3Q残り7分49秒、デクスター・ピットマンからゴール下でパスをもらった青木ブレイクは、シュートを打つ前にフェイクを入れた。それに田臥勇太が反応した結果、シュートを試みた青木の背中に乗る形になるのとほぼ同時に、右腕が前頭部に当たっていた。バランスを崩した田臥はフロアに叩きつけられた一方で、青木は頭を抱えながらも倒れなかった。

この3つのプレーに対するレフェリーが下した判定は次の通り。

ブラウン:アンスポーツマンライク・ファウル

サビート:ディスクォリフィケーション・ファウル(一発退場)

田臥:シューティング・ファウル

 ファウルとなったプレーのパターンはいずれも同じだが、その基準に一貫性がないと思えた。サビートが一発退場というのは、決して故意でなかったから不運という印象もあるし、伊藤が受けた衝撃のインパクトからすれば仕方がない部分もある。サビートの場合はB1のだれよりも背が高く、体も大きいために損していることも見逃せない。逆に、田臥は小さい体でもタフにプレーし続ける選手ということで、だれからもリスペクトされている。前頭部に腕が当たっても倒れなかった青木に対し、小さい田臥がしばらくフロアに立ち上がらなかったために、アンスポーツマンライク・ファウルにならなかったという気がした。

「小さい選手はビッグマンからチャージングをもらいやすいけど、ビッグマンに対して激しいファウルを犯してもアンスポになりにくい」

 これはBリーグに限ったことでなく、NBAを含めたバスケットボールというスポーツならばいつでも起こりうるもの。それでも、腕が首に入ることや顔、頭部にぶつかるというシーンをレフェリーが見た場合は、やはりアンスポーツマンライク・ファウルの可能性があると認識すべきでないか?

 実は琉球対渋谷、栃木対富山のクルーチーフは同一人物だった。FIBAでレフェリーのスーパーバイザーを務め、NBAのサマーリーグで笛を吹いた経験のある日本バスケットボール協会審判部の上田篤拓は、昨年夏のS級講習会で「経験値としてシェアし、蓄積していく」ことの大事さを強調していた。残念ながらこのクルーチーフは、沖縄で起きたことが経験値として蓄積されず、生かされなかったと思われても仕方ない。田臥のファウルが起こったあと、レフェリーたちはアンスポーツマンライク・ファウルか否かの協議をしていなかった。

 しかし、例としてあげたパターンと違うファウルであっても、危険と認識される肩より上に手や腕がぶつかった場合は、レフェリー3人がすぐに協議する習慣を徹底することが必要。レフェリーの質を上げるための一環として、このケースは経験値としてシェアしてくれるだろうと期待したい。

 コート上でプレーする選手たち、指揮するコーチ、見ている観客たちがレフェリーに求めるのは判定基準の一貫性。人間がやる以上、日によってちょっとした違いが出てしまうのは仕方ない。しかし、今回は判断基準に一貫性がなかった典型的な例として紹介させてもらった。より質の高いゲームがBリーグで展開され、日本バスケットボール界のための問題提起であることも、改めて強調しておきたい。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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