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BIGBANGのT.O.Pに大麻吸引容疑。“芸能人の兵役”にもたらす余波とは?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
大麻吸引容疑で書類送検されたT.O.P(写真:Lee Jae-Won/アフロ)

韓国はもちろん、日本のK-POPファンたちも驚きを隠せないニュースが起きている。絶大な人気を誇るス―パーグループ“BIG BANG”のメンバーであるT.O.Pに大麻使用容疑がかけられ、所属事務所YGエンターテインメントがその事実を認めたのだ。

そもそもT.O.Pは今年2月に兵役のために芸能活動を一時中断。ただ、一般の軍隊ではなく、東方神起のチャンミンやJYJのジュンスらと同じく“義務警察”で兵役を務めていた。

義務警察とは兵役のひとつとして見なされる軍代替え制度で、特技兵枠で“義務警察”に入隊したT.O.Pは、ソウル地方警察庁の広報担当官室管轄の警察楽隊に所属し、江南(カンナム)警察庁に勤務していた。

(参考記事:BIGBANGのT.O.Pが兵役のために受験した「義務警察」と「特技兵枠」とは?)

T.O.Pが大麻を吸っていたのは兵役前のことだったらしい。

昨年10月にソウル市内の自宅で芸能界デビューを目指す女性練習生A氏と大麻を数回吸ったという。A氏が今年3月に麻薬所持で逮捕されたことで捜査線上にT.O.Pの名が上がり、訓練中の彼の毛髪を回収して鑑定した結果、大麻吸引の陽性反応が出て書類送検となった。

数か月前のこととはいえ、人気アーティストの大麻使用にファンはもちろん、多くの韓国人がショックを隠せない。

というのも、日本同様に韓国でも大麻使用は合法ではなく、非合法。特に韓国では「国民がもっとも反感を抱く3大犯罪」のひとつに“麻薬の常用”があり、芸能人がそれに手を染めると社会全体に大きな波紋を呼ぶことになる。

過去にも人気俳優が深刻な麻薬常習者に成り下がり、韓国芸能界の薬物汚染の深刻度が問題視されたことがあった。

(参考記事:深刻な麻薬常習者の逮捕で浮き彫りになった韓国芸能界の“薬物汚染”)

T.O.Pが籍を置くソウル地方警察の警察楽隊側は、「入隊前のことなので今回のことに関連して処罰することはない。今後の状況は検察の調査を見守る必要がある」としているが、T.O.P自身のイメージに大きな傷がついたことは間違いないだろう。

さらに言えば兵役中の芸能人に対する世間の見方も厳しくなりそうな気配でもある。

というのも、昨年6月には人気グループJYJのメンバーで俳優としても高い評価を得ていたパク・ユチョンの不祥事が発覚。ユチョンは軍代替制度のひとつである“社会服務要員”として兵役を務める中、女性A氏への性的暴行疑惑が取り沙汰された。

この事件はA氏の虚偽告訴で、なおかつA氏の交際相手B氏がユチョンを恐喝していたことが判明し、A氏、B氏ともに有罪判決を受けたが、ユチョンが被ったイメージダウンは計り知れず、“芸能人の兵役”に対する世間の目を厳しくさせた。

実際、その厳しい大衆世論がキッカケになって“芸能人の兵役”環境が変わってしまった例もある。2013年7月に廃止されてしまった“芸能兵”がそれだ。

当時、熱愛関係にあった(今年1月にめでたく結婚)歌手RAINと人気女優キム・テヒの密会デートや、歌手SE7ENらの飲酒・風俗店通いなどが問題となり、それまで芸能人の受け皿だった“芸能兵”が廃止されてしまったのだ。

こうした前例があるだけに、今回のT.O.Pの大麻吸引容疑がキッカケになって“芸能人の兵役”の在り方にふたたび新たなメスが入る可能性も否定できないのだ。今年も韓国では多くのスター俳優、人気アイドルたちの入隊が予定されているが、彼らの入隊方法や時期にも支障が出るかもしれない。

(参考記事:来る者拒まず、去る者追えず…。2017年除隊・入隊予定の韓国芸能人たち)

果たして、T.O.Pの大麻吸引容疑は今後、どんな余波を残していくのだろうか。今後の進展に注目していきたい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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