東京五輪無観客開催「ワクチン接種を早期に開始しなかった政府の失敗。都議選が“最後の一撃”に」米有力紙
4回目の緊急事態宣言が出されたことを受けて、東京五輪が無観客で開催されることになった。
海外メディアも相次いで無観客開催ついて報じているが、特に、7月8日付米有力紙ワシントン・ポスト電子版が、様々な観点から、その背景について斬り込んでおり興味深い。
都議選の結果が“最後の一撃”に
先週末行われた都議選では自民公明が過半数の議席を獲得できなかったが、同紙は、都議選での与党のパフォーマンスが“最後の一撃”になったとするメディアの指摘を紹介している。
「観客数は最大1万人、収容可能人数の50%に設定されていたが、感染者が増えれば方針を変更すると警告されていた。その通りになったが、先週末行われた都議選での与党のがっかりするパフォーマンスは五輪をめぐる不安のせいであるともされており、最後の一撃になったかもしれないとメディアが報じている」
また、無観客開催は日本の人々や日本経済にとって全然有益にはならないことにも触れている。
「無観客開催は、新たに建設された68000人収容の国立競技場が五輪の間空っぽになり、日本の人々や国の経済にとって全然有益にはならないのに五輪に莫大なお金が投資されたことを象徴することになる」
IOCの寄与はわずか
さらには、東京五輪の総コストの大半は公金で、IOCは東京五輪のコストにわずかにしか寄与していないことも指摘している。
「スタジアム建設にかかったコストは14億ドル。東京五輪の総コストは公式には154億ドルと見積もられているが、実際のコストは2倍と政府の査定が示唆している。67億ドル以外は公金で、IOCは約15億ドルしか寄与していない」
ちなみに、コストについては、筆者は先日、『文藝春秋』7月号"「IOC貴族に日本は搾取されている」ワシントン・ポスト紙名物コラムニストの警告”という記事で、バッハIOC会長を“ぼったくり男爵”と命名して揶揄したワシントン・ポストのスポーツ・コラムニスト、サリー・ジェンキンス氏にインタビューしたが、同氏が、コロナ禍の五輪関係者の医療コストは日本側ではなく、IOC側が負担すべきだと主張していたことにも触れておきたい。
「IOCは日本の医療システムをハイジャックしようとしているかに見えます。しかし、彼らはハイジャックすべきではありません。
また、日本側はハイジャックしようとしているIOCに『東京五輪では、日本側は他国から入国する五輪関係者の治療に対する責任を負わない』と主張する権利があると思います。彼らの医療責任を負うべきは、東京側ではなくバッハ氏やコーツ氏なのです。
日本の指導者や組織委員会がIOCに東京の医療施設の使用を止めるよう求めたところで、地球上の誰がそれを責めるでしょうか? 日本側はIOCの言いなりにならず、もっと要求していいのです」
日本政府の失敗
7月8日付ワシントン・ポストは無観客開催は日本政府の失敗であるとも明言している。
「無観客開催の発表は、観客を入れて安全に五輪を行えるよう早期にワクチン接種を開始しなかった政府の失敗を浮き彫りにしている」
日本のワクチン接種は迅速化しており、1日の新規感染者数はイギリスと比べて少ないものの、1日の死者数はイギリスとほぼ同じくらいであるという日本の現状にも言及。
「日本の新規感染者数は1日2000人以下で、イギリスの水曜日の新規感染者数32000人のほんの一部だ。
日本で多くの人々がワクチン接種を受けていないという事実は、日本ではより感染する危険があることを意味する。日本の死者数は先週1日平均約20人だったが、それはイギリスとほぼ同じくらいの数だ」
また、莫大な支払いをしてきたスポンサー企業が東京五輪に乗り気ではなくなっていることも示唆している。
「約60の企業がスポンサーシップ権のために30億ドル以上という記録的な支払いをし、五輪が延期されたあとは契約更新のためにさらに2億ドルを支払った。しかし、企業は、観客禁止や五輪をめぐる陰気なムードにより、得られる利益がじょじょに損なわれているのを目の当たりにして来た」
安倍氏の“反日”発言
そして、1年しか五輪を延期しなかった前首相の安倍氏の決断について、
「問題は2年ではなく1年しか五輪を延期しなかったという、物議を醸している決断も浮き彫りにしている。決断は、今年の五輪時にはパンデミックが沈静化し、まだ在任することに掛けていた元首相の安倍氏が下したものだ」
とし、先日、雑誌インタビューで安倍氏がした発言についても、
「安倍氏は今年の五輪開催を批判している人々を非難し、五輪開催に反対している人々を“反日”と呼んだ」と言及している。
東京五輪の無観客開催は、新型コロナのワクチン対策をめぐる日本政府の失策や安倍前首相の間違った判断を世界に知らしめる結果となったようだ。
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