6月は申請の時期、重い教育費負担をカバーしてくれる公的支援制度
◆国の「高等学校等就学支援金制度」
子どものいるご家庭にとって、家計に重くのしかかるのが教育費です。教育は子どもの将来にも大きく影響することですから、親としては家計の許すかぎり良い教育を受けさせたいと望むところでしょう。
しかし、教育費負担がネックになって、2人目以降の子どもを産むのをためらうケースも現実には少なくありません。「少子化」の一因になっていると考えられています。
また、家庭の経済状況により受けられる教育が違ってくるのは、教育の機会の平等とは言えません。貧困の連鎖にもつながります。
その流れにストップをかけようと、教育費負担を軽減する施策が行われています。そのひとつが、国の「高等学校等就学支援金制度」です。
支援の対象者は、国公私立問わず、月の初めに高等学校や専修学校高等課程等に在籍している生徒。義務教育以降の教育費を支援し、将来を担う子どもを社会全体で育てる狙いがあります。
経済的にゆとりがある家庭には遠慮してもらおうということで、保護者の所得制限が設けられています。「親権者」の市町村民税所得割額(東京都の場合は区民税、住民税のうち所得額に応じて計算される分)が30万4200円以上の場合は対象外となります。給与所得者の場合、対象外となる目安の年収は910万円程度ですが、家族構成などによっても違ってくるので、市町村民税所得割額を確認したほうが確かです。
また、一般的に「親権者」は両親のケースが多いと思われますが、父母とも収入がある場合、市町村民税所得割額は父母の合計額が適用されます。
就学支援金額は年額11万8800円(月額9900円)。ただし、公立高校の定時制は3万2400円(月額2700円)、通信制は6240円(月額520円)です(私立高校は全日制・定時制・通信制とも11万8800円)。
私立高校に通う場合は市町村民税所得割額により加算金があり、非課税世帯(目安の年収250万円未満程度)の場合は、基本額の2.5倍(全日制は年額29万7000円)、0~5万1300円未満(年収250~350万円程度)の場合、基本額の2倍(同、年額23万7600円)、5万1300~15万4500円未満(年収350~590万円程度)の場合は基本額の 1.5倍 (同、年額17万8200円)となっています。
この春、高校に入学したばかりという子どもがいるご家庭では、入学時に申請手続きの説明を受けているでしょう。申請書や保護者の所得を証明する書類など必要書類を学校に提出すれば、就学支援金が受けられます。
なお、就学支援金は学校が受け取って授業料と相殺する仕組みになっていますから、生徒や保護者が直接受け取ることはできません。
書類の提出は入学時だけで終わりません。2年生、3年生に進級したのち継続して就学支援金を受けるには、6月頃に学校から配布される「届出書」と所得証明書類の提出が必要です。まもなく案内があるはずですから、うっかり提出を忘れるといったことのないようにしましょう。
◆自治体の私立高校授業料支援制度
公立高校に通うより私立高校に通うほうが、家計への負担が大きいのはご承知のとおりです。文部科学省の『平成28年度子供の学習費調査』によると、全日制高校の場合、公立と私立の学習費総額の差は2.3倍で、保護者が支出した1年間の子ども1人当たりの学習費総額は、公立が45.1万円(うち学校教育費27.6万円、学校外活動費17.5万円)で私立は104万円(同75.5万円と28.5万円)となっています。
国の制度だけでは私立高校に通うための教育費を十分カバーしきれない負担の重さですが、自治体が実施する私立高校授業料の支援制度もあります。制度の名称や内容は自治体によって違うので、住んでいる自治体のHPなどで確認してみましょう。
たとえば東京都の場合、「私立高校等授業料軽減助成金」という制度を運営しており、都内に住む生徒・保護者を対象に(通う高校は都外でも可)国の「高等学校等就学支援金」の上乗せを行います。全日制・定時制のほか、東京都認可の通信制高校も助成の対象です。
2018年度の助成金額は、国の「高等学校等就学支援金」との合計で、学校の授業料を上限に年額44万9000円(通信制は22万3000円)。目安の年収760万円(都民税と区市町村民税の合計額により審査)までの世帯が対象です。
前述のように、私立高校に通う生徒の就学支援金には年収によって加算金がありますが、年収が高くなるほど加算金額が少なくなり、目安の年収590万円以上だと加算金はゼロ。国の就学支援金だけだと11万8800円のみですが、東京都の助成金が33万200円上乗せされ、44万9000円の教育費がカバーされることになります。多くの子育て世帯を支援する、かなり手厚い制度と言えるでしょう。
◆教育費無償化の流れ
「人づくりこそが次なる時代を切り拓く原動力」ということで、政府の方針は人材への投資に舵を切っています。教育費無償化の流れは今後も続き、消費税増税後の2020年4月から、幼児教育・高等教育の無償化が本格的に実施される見込みです。
幼児教育については、0~2歳児は住民税非課税世帯(目安の年収250万円未満)、3~5歳児は所得にかかわらず幼稚園、認可保育園、認定こども園を無償化します。
私立高校については、目安の年収590万円未満の世帯を対象に支援金を増額し、実質無償化するもようです。
大学についても、住民税非課税世帯を対象に国立大学の授業料・入学金を免除、私立大学は上限を設けての授業料免除などの実施が予定されています。