アストロズの選手が、サインを盗むのではなく、サインが出る前に塁を盗もうとする
数年前、ヒューストン・アストロズは、相手バッテリーのサインを盗んでいた。今回も、「アストロズ」「相手バッテリーのサイン」「盗む」のキーワードは同じだ。もっとも、再犯ではない。その行為は、まったく異なる。
6月30日の3回裏、2死二、三塁の場面だ。マウンドにいたルイス・セベリーノ(ニューヨーク・ヤンキース)は、サインがよく聞こえなかったようで、キャップを脱いでピッチコムの音量を調整しようとした。ピッチコムは、無線によってサインを伝達する機器だ。サイン盗みの防止を目的としていて、今シーズンから採用された。
セベリーノがそうしているのを見て、三塁走者のカイル・タッカー(アストロズ)は、スタートを切った。セベリーノは、キャップを持ったままの右手でグラブからボールを取り出し、本塁へ送球した。捕手が素早くタッチし、タッカーはアウトになったが、タイミングは紙一重だった。タッカーのナイス・トライ、といったところだろう。
ちなみに、サイン盗みを行っていたアストロズが、ワールドシリーズで優勝したのは、2017年のことだ。タッカーは、翌年の夏にメジャーデビューした。
一方、セベリーノは、2017年のリーグ・チャンピオンシップ・シリーズで、アストロズを相手に投げている。第2戦と第6戦に、どちらもアストロズのホームで先発マウンドに上がった。第2戦は4イニングを投げ、カルロス・コレイア(現ミネソタ・ツインズ)に打たれたホームランによる1失点ながら、第6戦は0対0で迎えた5回裏に3点を取られ、イニングの途中で降板した。この3失点には、被安打2本に与四球3が絡んでいるので、サイン盗みが行われていたとしても、その影響があったかどうかは不明だ。ちなみに、アストロズはこのシリーズで、ホームの4試合すべてに勝ち、アウェーの3試合はいずれも敗れた。