食品ロスの最新値は?食料自給率は過去最低37% 新型コロナで世界の食料供給はどうなる?
食品ロス、2012年度以降、最少の年間612万トン
2020年4月14日、農林水産省と環境省は、食品廃棄物等及び食品ロスの発生量の推計値(平成29年度・2017年度)を発表した。年間612万トン(家庭系284万トン、事業系328万トン)。2012年度(平成24年度)以降、最少となった。
農林水産省は、公式サイトで「食品ロス量及び事業系食品ロス量は、食品ロス量の推計を開始した平成24年度以降最少となりました」と発表した。
環境省は、公式サイトで、2012年度以降の値をまとめて表にしている。
2011年度より前はどうだったの?
農水省が書いている通り、政府がピンポイントの食品ロス推計値を開始したのは、2012年(平成24年)以降である。
では、それまではどうだったのか?
筆者が食品ロス問題に本格的に関わり始めたのが2008年初旬。当時、広報の責任者として勤めていたグローバル食品企業で、商品として流通できない食品をフードバンクに寄付し始めた年だ。
2008年当時、フードバンクに協力していることを大々的に広報する企業はほとんどいなかった。マスメディアの取材を受ける企業も少なかった。なぜなら「食品ロスを出している企業」というのはネガティブにとられる懸念があったからだ。また、取引先である小売業(コンビニ・スーパー・百貨店など)がメディア露出を見た場合、「うちには高く売っているくせに、なんで、ただ(無料)であげてるんだ」と言われることを懸念し、営業部隊は特にメディア取材を受けることを好まなかった。
筆者は2011年9月までメーカー広報を務め、震災を機に退職して独立し、その後の3年間は、食品を寄付していたフードバンクから声をかけてもらい、フードバンクの広報の責任者としてメディア取材を受けていた。
そこで、2008年から2011年まで、メディアが使っていた数字も含め、今回、政府が発表した値とまとめたのが下記の表である。
当時の食品ロス量は幅表示だった。それにしても、やけに幅が広過ぎると思う。「500〜900万トン」から「500〜800万トン」へと変わった時期は明確ではないが、2011年当時、農林水産省で食品ロスを担当していた方に、なぜ900から800へ変えたのか、その理由を質問したところ、「計算し直したらこうなった」との回答だった。
いずれにしても、今回、数字が下がったことは喜ばしい。関係者が削減に向けて尽力してきたことが、ようやく見えてきたと言えるだろう。
ただ、全国レベルで厳密な数字を出すのは難しい。それに、毎年、政府が発表する食品ロスの値には、畑や港で捨てられる一次生産品(農産物や魚介類など)のロスは含まれていない。総務省の調査で判明しているような、全国で廃棄されている備蓄食品のロスもカウントされていない。したがって、「推計値」という言葉の通り、筆者は「目安」として考えている。
新型コロナで余剰となった食品の転用は?
昨今の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応による食品ロスの発生で、筆者のところにも様々な相談が寄せられている。
たとえば、居酒屋がやむなく休業せざるを得なくなり、現時点で納入してしまった肉や魚など、生鮮食品の食材が余ってしまった。これを販売することができないか。
百貨店でも同様のことが発生していた。企業によってはデパ地下、つまり食料品部門だけは開店し続けているが、全館通して閉店措置となった百貨店もあり、突如として食料品が行き場を失ってしまった。
給食がなくなってしまい、パンに使われている脱脂粉乳が免税措置を受けているため、給食以外の転用が認められていない。このままでは廃棄になってしまう、など。
1つめについては、すでに飲食業界を支援しようとするグループが立ち上がっており、そこで食材を売る動きがある。
2つめの百貨店での食品ロスは、善意の人たちのおかげで完売したとのこと。
3つめについては、給食関係の方から連絡を頂いた。その後、国会議員の竹谷とし子さんが調べてくださり、一般と同じ関税を払えば給食以外の用途(販売など)は可能になることがわかった。
すでに飲食業界では、外出自粛に伴い、持ち帰りを始める店が進んでいる。緊急事態に際し、食品ロスや廃棄を生み出さない、柔軟な対応が求められる。
新型コロナ対応の一環として福祉への活用は?
新型コロナ対策として、日頃は受けている食の支援が受けられなくなる状況は、世界的に生じている。米国・フィラデルフィアでは、3月17日以降、フードバンクに求める食品の量が、普段の10倍にも膨らんだ。一方、外出自粛に伴い、フードバンクで働くボランティアの数は減ってしまっている。
日本で最も報道されることの多いアメリカの都市、ニューヨーク市は、公式サイトで「Free Meals」の案内を掲載し、食事に困る人が無料で3食分、受け取ることのできる時間帯と場所を示している。
日本は「最貧困者を国が助けるべき」と答える人が47か国中、最も少ない
ロイター通信は、2020年4月9日、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響により1日1.90ドル(約200円)以下で生活する貧困層が約5億人増えるとの見方を、国際非政府組織(NGO)のオックスファムが示した、と報じた。世界銀行の定義では、1日1.90USドル以下で暮らす人は「絶対貧困層」とされている。現在の貧困層に加えてさらに増え、9億2,200万人になるということだ。
米国のシンクタンク、Pew Global Attitudes Projectの調査(2007年10月発表)によると、「政府(国)は、最も貧困状態にある人を援助すべきである(State Should Take Care of the Very Poor)」という質問に対し、「完全に同意する(Completely agree)」と回答した人の割合が、調査対象47カ国中、最も低かったのが日本(15%)という結果になっている(上記棒グラフ参照)。「ほとんど同意(Mostly agree)」の割合を合わせても、日本が最低(59%)である。
日本でも、食の支援のニーズは増えている。しかし、外出自粛に伴い、支援できる人も限られている。ニューヨーク市やその他の市のように、行政が前面に立って、毎日、1日3食の支援を公式サイトで呼びかけ、実践できている自治体は、ほとんどないだろう。
食品ロス削減推進法にはフードバンクへの積極的な支援が盛り込まれたが、食の支援がよりいっそう求められるのは、今回のような非常事態だろう。
シンガポールは食料生産企業に22億8500万円の資金援助、政府が食品ロス削減の重要性を強調
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により、食料供給が不安定になる恐れが指摘されている。
シンガポールは、食料自給率が10%未満と、かなり低い。シンガポール政府は、2030年までに30%に引き上げる目表を立てている。今回の新型コロナの感染拡大を受け、シンガポールの環境・水資源省とシンガポール食品庁(SFA)は、4月8日、食料生産を営む地場の企業に3,000万シンガポールドル(約22億8,500万円)を援助する施策を導入すると発表した(2020年4月9日付、NNAアジア経済情報による)。
シンガポールのヘン・スイキャット副首相兼財務相は、食品ロス削減の重要性を強調し、比較的短時間で行える対策の一つとして、専門家から、住民が自分たちで食べる野菜を育てる家庭菜園を勧める声も上がっているという(4月9日付ストレーツ・タイムズ紙、4月13日付時事通信アジアビジネス情報より)。
食料自給率(カロリーベース)は過去最低水準の37%、食料供給は?
では、日本はどうかというと、食料自給率(カロリーベース、2018年度)は過去最低水準の37%である。1960年度には79%あった食料自給率は、自給率の高いコメの消費の減少や、農地や農家の減少による供給減により、どんどん落ちていった。
世界各国に食料を依存している日本だが、地球温暖化による干ばつの影響で穀物価格が上昇し、食料不足や飢餓のリスク増が懸念されている(2020年4月5日付、高知新聞「社説」)。安倍政権は2020年4月1日に「農林水産物・食品輸出本部」を立ち上げ、輸出増を目指したが、新型コロナウイルス感染症の影響で、輸出額は前年割れで推移している(2020年4月12日付、山陽新聞「社説」)。
現に、一部の農産物は、海外諸国での外出規制により、輸出作業が滞り、スーパーなどで品薄になっているものも見られる。
食料自給率を上昇させるために必要なことの一つが「食品ロスの削減」である。先日、食品ロスと政治資金は関係ないと書き込んでいた人を見かけたが、食品ロス削減と国民の食料確保、そのための財源確保は政治の問題でもある。何より、食品ロス削減推進法は議員立法により2019年5月に成立、10月に施行されている。
日本政府は、2030年度までに、2000年度比で半減の490万トンまで下げることを目標としている。食料の確保のためにも、よりいっそう、食品ロス削減に緊迫感を持って取り組みたい。
参考情報
2020年4月14日 農林水産省 食品ロス量(平成29年度推計値)の公表について
2020年4月14日 環境省 我が国の食品廃棄物等及び食品ロスの発生量の推計値(平成29年度)の公表について
2020年4月14日付 日本経済新聞 食品ロス、17年度は最少に 食品産業が7%減
2020年4月14日付 共同通信 食品ロス、17年度612万トン 12年度以降で最少