韓国の働き方改革 日本との違い
韓国版「働き方改革」が7月からスタート
韓国版の「働き方改革」が7月からスタートしました。労働時間(残業含む)が週最大52時間にまで短縮されたのです。違反すれば事業主が処罰されるというもの。
これまでの上限は最大68時間。つまり、今回の法改正で16時間の短縮となります。週68時間ということは、平日5日間とすると1日平均「13.6時間」。8時間の労働時間に、毎日平均5.6時間の残業プラスです。
9時ー18時の勤務時間で考えれば、だいたい平均して24時ごろまで働く計算で、いくら上限とはいえ、とても多い印象を受けます。OECD加盟国の中では、平均労働時間が2番めに多い韓国(日本は4番め)。日本よりも長時間労働が常態化していると言えます。
これを16時間減らして「52時間」にすることが、今回の法改正の目玉。上限が、毎日平均「5.6時間 → 2.4時間」の残業にまで減ったことになり、ひとり当たりの労働時間が大幅ダウンすると言っていいでしょう。
若年失業率の改善へ
長時間労働をアテにして事業を進めてきた雇用主には、大きな打撃です。労働時間がこれほどダウンすれば、代替分の労働リソースを確保できない限り、事業を維持できません。生産性を上げればいい、という声が聞こえてきそうですが、そう簡単な話ではないのです。
それでも政府が法改正に踏み切ったのは、若者の失業率改善を狙っているからです。若年失業率が10%を超える韓国は、日本の事情と正反対。韓国の若者は就職難ですが、日本の場合は採用難。空前の人手不足で、倒産する企業が出てくる日本とは抱えている問題が異なります。
ひとり当たりの労働時間を減らした分だけ、雇用増で補い、総労働時間を維持する。これが企業側がとるべき施策です。とはいえ、人間は機械ではありません。とくにクリエイティビティの高い仕事に従事している人(日本で話題となっている高度プロフェッショナル)を補うのは簡単ではないでしょう。全事業所が対象となるのは2021年以降とはいえ、育成プログラムが未整備な中小企業では、時間的余裕がない。
「超学歴社会」の代償
なぜ韓国の若年失業率がこれほど高いのか? 日本のそれとは比較にならないほどの「大企業志向」が原因です。近年、韓国の大企業は新規採用を渋り、極端に門戸を狭くしています。大企業と中小企業の賃金格差が著しい韓国では、高学歴の若者ほど大企業志向が強く、そのせいで就職難民が増えているのです。
事実、韓国の中小企業の労働生産性は、OECD内で最低レベル。日本の格差とは比較にならないほど大きいのです。優秀な人材ほど大企業へ偏るため、今回の法改正で労働時間を是正すれば、韓国の中小企業は壊滅的な打撃を受ける可能性もあります。
優秀な人材を雇用することも、生産性を上げるための工夫も、かなり困難であると推測します。
長時間労働が常態化している韓国においても「働き方改革」は不可欠。しかし政府は、これを機に大企業と中小企業との賃金格差を是正するための、何らかの処置をすべきでしょう。