今年のMVPはシルバースラッガーも受賞したが、MVPの野手が全員そうだったわけではない
MVPを受賞したムーキー・ベッツ(ボストン・レッドソックス)とクリスチャン・イェリッチ(ミルウォーキー・ブルワーズ)の2人は、シルバースラッガーにも選ばれている。前年のホゼ・アルトゥーベ(ヒューストン・アストロズ)とジャンカルロ・スタントン(当時マイアミ・マーリンズ/現ニューヨーク・ヤンキース)も、そうだった。
ちなみに、この4人のなかで、MVPとシルバースラッガーとともにゴールドグラブも手にしたのは、ベッツだけだ。この3つのアウォードの同年受賞は、2009年のジョー・マウアー以来のことで、外野手となると、2001年のイチローまで遡る。
シルバースラッガーにしても、どのMVPも受賞しているわけではない。シルバースラッガーの選出が始まった1980年以降、MVPの野手は延べ72人に上る。そのうちの6人(8.3%)は、シルバースラッガーに選ばれなかった(ゴールドグラブも得ていない)。
6度の「MVP≠シルバースラッガー」に共通するのは、MVPの選手がいたチームは地区優勝を飾り、MVPの選手を抑えてシルバースラッガーを受賞した選手のチームはポストシーズンを逃していることだ。また、シルバースラッガーの6人中4人、ハワード・ジョンソン(1991年)、アレックス・ロドリゲス(2002年)、アルバート・プーホルス(2010年)、ノーラン・アレナード(2016年)は、本塁打と打点の両タイトルを獲得した。一方、6人のMVPには、本塁打王も打点王もいない。プーホルスは、打撃三冠のタイトルがない2005年と2008年、本塁打王の2009年にMVPとなったが、本塁打王&打点王の2010年は2位に終わった。
2002年にMVPを受賞したミゲル・テハダの場合、ホームランはA-RODより23本少なく、打率はわずかに上回ったものの、出塁率と長打率はいずれも劣り、2つを合算したOPSは154ポイントの差をつけられた。守備と走塁を含めた総合指標のWARも――個人的にはWARを全面的に信用してはいないが――A-RODの8.8/10.0(ベールボール・リファレンス版/ファングラフス版)に対し、テハダは5.6/4.5。この年のA-RODは、ゴールドグラブも手にしている。MVPの投票で、テハダは2位のA-RODを100ポイント以上も上回ったが、今日であれば、シルバースラッガーだけでなく、MVPも逃していてもおかしくなかった。
ただ、記者投票のMVPと違い、シルバースラッガーは監督とコーチの投票によって決まる。彼らはそれぞれ、自分がいるチーム以外の選手に票を投じる。