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ハッカ油だけじゃない!猫飼いが夏に気を付けたい危険な香りとは?

いわさきはるかサイエンスライター
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毎年夏になると、虫除けや涼感などの用途から、ハッカ油をはじめとする香り製品が話題になります。しかし動物を飼っている人なら、ハッカ油が動物の健康に悪影響を与えると聞いたことがあるかもしれません。過去に動物関連施設に貼られた「ハッカ油をつけたマスクやハンカチでの入場をお断り」との文言が話題になったこともありました。

ハッカ油に関してはその動物への危険性が浸透してきていますが、実はハッカ油に限らず多くの植物由来の香りが動物に悪影響を及ぼす可能性があります。特に、猫は植物性の香りで健康を害しやすい動物です。

猫にとってどんな香りが危険で、どのくらいの量から影響が出るのでしょうか?またなぜ猫は植物性の香りで健康を害しやすいのでしょうか?

この記事では、サイエンスライターである筆者が、猫にとって危険な香りとその理由をわかりやすく解説します。愛猫との快適な夏のために、ぜひ最後までお読みください。

ハッカ以外もメントールはNG!猫の健康を害する香り

Pixabay
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夏によく使われる香りの中でも、特に猫にとって危険なのが、メントール系の香りです。代表的なのはハッカ油ですが、他にもユーカリなどがあり、どちらも涼感や虫よけの用途でよく用いられます。これらは猫の呼吸器系や中枢神経系に作用し、呼吸困難や痙攣などを引き起こし、非常に危険です。

メントール系とよく似た症状を引き起こす香りにはティーツリーもあります。ティーツリーは清涼感のある樹木の香りを持ち、虫よけなどにもよく用いられますが、メントール系と同様、猫にとっては非常に危険な香りです。

メントール系やティーツリーによる中毒は非常に危険性が高く、呼吸困難や神経症状が急速に進行するため、緊急の対応が求められます。もし、これらの香りで猫に異常が出た際にはすぐに動物病院に向かってください。

また、シトラス系の香りにも要注意です。レモンやオレンジ、ライムなどの柑橘系の香りは、爽快感があり、消臭の目的で夏場によく使われますが、猫の消化器系や皮膚に深刻な影響を与えます。

そのほかにも、ラベンダー、シナモン、クローブ、タイムなどは猫にとっては危険な香りです。これらは夏以外でもよく使用される香りなので注意しておきましょう。

このように猫に危険な香りをもつ植物を、精油として使用する場合に特に危険です。精油は植物から抽出された非常に濃縮された成分であり、わずかな量でも猫の体に大きな負担をかける可能性があります。

精油をなめた場合はごく少量でも危険です。精油をなめるだけでなく、ニオイをかぐだけで症状が出る場合もあります。香りが部屋全体に充満するレベルになると猫にとっては十分危険です。ディフューザーなどを使って精油を使用する際にも、猫がその部屋にいないようにするか、完全に換気された空間で使用することが推奨されます。

しかし、精油だけでなく、これらの香り成分を含む市販の製品にも注意が必要です。虫よけスプレーや芳香剤、さらには掃除用品にも、これらの危険な香り成分が含まれていることがあります。特に「子どもや赤ちゃんにも安心」として売られている植物由来成分を歌った虫よけグッズは猫にとって危険であることが多いので注意しましょう。製品のラベルをよく確認し、上記の成分が含まれているものは猫のいないところで使ってください。

次の見出しでは、なぜ猫がこれらの香りに敏感なのか、その理由について解説します。

犬より嗅覚は鈍いのにどうして?猫に香りが危険な理由

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植物由来の香りは人間にとっては「自然で安全」というイメージがありますが、前述の通り精油は成分が濃縮されているので、人間よりも体の小さいペットたちの健康を害する可能性があります。中でも猫は、ごく微量の香りでも大きな影響が出やすいとされています。

香りは鼻で嗅ぐものですが、犬と猫で比較すると猫の方が香りに対してより敏感な反応を示します。猫の嗅覚は犬の1/10程度にも関わらず、猫の方が香りの影響を受けてしまうのです。

これは、香りによる健康被害が嗅覚ではなく、体内での処理能力、つまり肝臓の働きに関わっていることに由来します。

猫は完全な肉食動物ですが、犬は時には果実や野草なども口にする雑食性の動物です。このため、犬の肝臓は肉だけでなく植物由来の成分も処理できるようになっています。しかし、猫の肝臓は肉を処理するのに特化しており、植物由来の成分を効率的に分解する能力がほとんどありません。

特に、植物精油に含まれるテルペン類やフェノール類といった化合物は、猫の肝臓にとって大きな負担となります。このため、犬なら問題なく処理できる量の精油でも、猫の体内に入ると分解されずに蓄積され、様々な健康問題を引き起こす可能性があるのです。

さらに、猫の皮膚は犬に比べて物質を吸収しやすいという特徴もあります。このため、空気中の香り成分や、皮膚に付着した精油などが体内に入りやすく、さらに分解することはできないため、より少量でも影響を受けやすいのです。

同じ理由で、完全肉食動物であるフェレットなども植物性の香りには特に気を付ける必要があります。

虫よけなどを使うときは猫が大丈夫なものかチェックを

暑い夏、虫よけや消臭など、つい香り製品に手が伸びてしまいますよね。でも、愛猫のことを思うと、ちょっと待った方がいいかもしれません。

「自然由来」や「オーガニック」というラベルがついていても、猫にとってはむしろ危険な場合があります。新しい香り製品を使う前に、猫への安全性を確認してください。心配なときは獣医さんに相談するのがいいでしょう。猫に安全な代替品があるかもしれません。また、安全かどうか確信が持てない場合は、猫がいないところで使ったり、使わないという選択も大切です。

過去に使って大丈夫だったことがあったとしても、猫の体重や体調によって、香りへの反応は変わります。体重が少ないほど敏感になりますし、高齢で内臓が弱ってくることで影響がでる場合もあるので注意が必要です。

植物性の精油は猫だけでなく、あらゆる動物にとってリスクがあります。特に肉食動物や体の小さい小鳥や小動物などは影響がでやすいものです。飼い主さんが使う際にはぜひ、人間への安全性だけでなく、動物への影響も考えてあげてくださいね。

サイエンスライター

保護猫2匹と暮らす理系ライター。猫や犬などペットとして身近な動物の研究をわかりやすく発信します。動物に関する研究は日々進んでいます。最新研究を知っておくと、きっとペットとの生活がより豊かなものになるはず。読めば人も動物もWin-Winになるような記事を書いていきたいと思います。

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