猫は本当に「冬太り」してるのか?夏より多く食べても意外と大丈夫な理由
寒くなってくると、愛猫の食欲がどんどん増してきて心配になってしまうことはありませんか。我が家の猫も、秋の深まりとともにエサのおねだりが増えてきました。
「猫は冬になると太る」というのは、もはや猫を飼っている人にとっては定説です。しかし、本当にそうなのでしょうか。ロイヤルカナン研究センターが行った猫の食事量や体重に関する研究では、その定説を裏返す結果が明らかとなりました。
この記事では猫の食事量と体重が季節に伴ってどう変化するのか、サイエンスライターの筆者がわかりやすく解説します。
参考:Seasonal Variation in the Voluntary Food Intake of Domesticated Cats (Felis Catus)
冬の猫は夏より多く食べるけど……
ロイヤルカナン研究センターは、38匹の猫を対象に4年間にわたって食事量と体重を継続的に測定する調査を行いました。
まず、食事量について比較すると猫たちは夏場に比べて冬場は約15%も多くエサを食べていました。私を含む、多くの猫の飼い主が感じているのと同様に、確かに猫は冬にかけて、エサを多く食べるようです。
しかし、食事量がこれだけ変化しているにもかかわらず、猫たちの体重には季節的な変動が見られませんでした。つまり、猫たちは冬になると食べる量が増えるものの、太ってはいなかったのです。
私たち飼い主が「冬になると猫が太った」と感じるのは、おそらく短い夏毛から長くて密な冬毛への生え変わりによって体が大きく見えるためだと考えられます。「猫の冬太り」の多くは見た目から来る思い込みだったのかもしれません。
それにしても、なぜ猫は冬に食欲が増して夏より多く食べても、体重は変化しないのでしょうか。ここからは寒くなると猫の食事量が増える理由について解説していきましょう。
寒くなると食欲が増す理由
寒い時期、猫たちは体温を維持するために多くのエネルギーを必要とします。研究によると、猫の体温保持には気温だけでなく、日照時間も関係していることがわかりました。
一般に冬は夏に比べて日照時間が短く、気温も低くなります。この研究が行われたフランス南部でも、夏は1日約15時間の日照があるのに対し、冬は約9時間までかなり短くなっており、気温の月間平均を見ても7月は25.1度、1月は6.7度と大きく下がっていました。
猫たちが冬に多く食べるようになるのは、こうした冬の環境から体温を保持するために必要なエネルギーを補っているからだと考えられます。一方で、夏場になると猫たちは暑さを避けて活動を控えめにする傾向にあると言います。このような季節に応じた活動量とエネルギー消費の違いによって、夏と冬で最大15%もの食事量の差が生まれるのでしょう。
つまり、冬場に食事量が増えるのには「寒い環境でも体温を保持するため」というれっきとした理由があり、増えた食事量はそのまま体を温めるためのエネルギーとして消費されるため、体重の増加にはつながらないのです。
冬なら猫が多めに食べても大丈夫かも
寒い季節、熱烈な猫のおねだりに負けて、つい多めに食事を与えてしまい、心配になることもあるでしょう。しかし、冬場に増える食事量は猫たちが寒い環境で体温を保つのに必要なエネルギーを補うものだということが今回の研究によって示されています。研究の調査対象となった猫が夏に比べて15%ほど多く食べても体重増加につながらなかったことを考えると、一度多めにエサを与えたくらいなら心配いらないのかもしれません。
猫の体重を増やさないことは大切な健康管理の一つですが、もし食欲が増した時期が冬ならその分消費してしまうことも十分に考えられます。「猫は冬に太る」と思いこまず、体重をこまめに測りながら季節ごとの最適な食事量を考えてあげてくださいね。