GoTo Travelキャンペーンに対するTwitter上の反応
Go To Travelキャンペーンの開始
コロナ禍で疲弊した観光業を復興させるべくGo To Travelキャンペーンが行われることになりました.
JTBのGoto Travel キャンペーンページによると,
とのことですから,旅行需要が喚起されそうなお話です.
その一方で,東京都の新型コロナ感染者数が7月9日から12日まで4日連続で200名を超えるなど感染拡大の第二波が心配されている時期です.第二波なのか,コントロールされている感染拡大なのかはよくわかりませんが,数だけ見るとなかなか心配になっても仕方がない気がします.
Twitter上での扱い
そんなわけで,世の中の意見を見るためにツイッターを見てみることにしましょう.
データは,GoToキャンペーン,GoToトラベルが含まれているツイートを収集しました.
2020年7月4日20時から7月13日17時くらいまでで,134,150アカウントによる346,128件のツイートが集まりました.
現時点では,どちらかといえば小規模な拡散のようです.
ツイートのうち49,432がオリジナルツイートで,296,696件がリツイートでした.
関係したアカウントのうち,36,969がオリジナルのツイートを行い,105,115アカウントが拡散を行いました.拡散もツイートもしたアカウントは8,000くらいですね.案外少ない.
ちなみに,50%の拡散を上位11%のアカウントが行っていたので,それなりに一生懸命関連情報を拡散したアカウントがあったようです.とはいえ,ある程度話題になったトピックだと,このくらいは普通ですが.
さて,早速拡散数が多いツイートから見てみましょう.
Go To Travelキャンペーン関係で一番拡散されたのは,
という政権批判を絡めた内容のツイートでこのタイミングで1.5万回ほど拡散されているようです.
収集したツイートの中で1000回以上RTされたツイート57件を見てみましたが,うち50件が否定的なツイート,7件がニュースのツイートや,無関係なツイート,中立なツイートでした.
肯定的なツイートはゼロ.肯定的意見は大規模には拡散していませんでした.
ツイート集合の分析
次に,どんな内容のツイートがよく拡散されたのか,収集したツイートの中から,リツイート数が多かったツイート上位200ツイートについて,類似情報ごとに分類しました.
手法について簡単に説明すると,リツイートしたユーザが20%以上被っている二つのツイートをリンクでつないでネットワークを作成し,そこから類似情報群を抽出しています.分類手法の詳細についてご興味がある方は,こちらの論文バースト現象におけるトピック分析をご覧ください.
こちらが分析の結果です.
ネットワークのノード(円)が一つのツイートを表し,つながっているリンク(線)が2つのツイートが似たようなアカウントによって拡散されていることを示しています.
また,円の色の濃さは,そのツイートを拡散したアカウントの偏りを示します.
色が濃いほど,特定のコミュニティに所属する人たちによって拡散されたことを示し,色が薄いほど一般的な人々によって拡散されたことを示します.
この結果,巨大なツイートの塊(A)と,それ以外のツイートがいくつか存在することがわかりました.
巨大なツイートの塊は,似たようなアカウントによって拡散されていることを示していますので,類似した視点からのツイートであるということができます.
実際,ここに含まれるツイートを見ると,GoToキャンペーンに否定的なツイートがほとんどであることがわかります.
もし,GoToキャンペーンに肯定的なアカウントが数多く存在し,情報を拡散していれば,もう一つ塊が現れるはずなのですが,そのようなものは見当たりませんでした.
では,この塊(A)に含まれないツイートはどうでしょうか.例えば,図中Bは以下のようなニュースツイートでした.
このように,否定的なツイート群以外のツイートも,ニュースのような中立的なツイートがほとんどで,GoToキャンペーンに肯定的なツイートは見つかりませんでした.
というわけで,やはりツイッター上で多数拡散されたツイートはGoToキャンペーンに否定的なものであることがわかりました.
オリジナルツイートの根性マイニング
情報の拡散は,ワンクリックで可能なため,特定の情報だけが拡散しがちですし,拡散した情報は多くの人の目に触れるため,より多くの拡散が行われる,という現象があることがわかっています.
そこで,拡散ではなく書いた人の気持ちがダイレクトに出るであろう,オリジナルツイートについてどのくらいが肯定的でどのくらいが否定的なのかを見てみましょう.
なお,オリジナルツイートは,リツイートではなく,リプライでもなく,URLも含んでいないツイートとします.
この条件に当てはまるツイートをランダムに124件抽出して根性マイニング(著者が目で見て確認する手法)によって分析しました.
その結果がこちらです.
およそ13%程度が,
のような,比較的肯定的なツイートでしたが,67%は
といった,否定的なツイートでした.
この結果から,GoToキャンペーンで遊びに行こうという肯定的な捉え方をしているツイートがないわけではないが,おおむねはこのキャンペーンに否定的だったといってよいかと思います.
GoToキャンペーンには否定的な意見が多い
以上,拡散とオリジナルツイート双方を分析してみました.
結果は以下の通りです.
・大規模な拡散はほとんどが否定的な内容
・中立的なニュースを拡散したアカウントは一般的なアカウント
・オリジナルツイートに肯定的なツイートは13%程度しか含まれない
ツイートが必ずしも社会の状況を表しているわけではありませんが,少なくともツイッター上では肯定的なツイートが多数を占めるということは無かったようです.
否定的な情報の拡散は偏ったアカウントによって行われているとはいえ,全体的にツイッター上の意見もGoToキャンペーンには否定的と言ってよいのではないでしょうか.
これだけだと,「肯定派はわざわざ意思表明しない」というサイレントマジョリティー現象である可能性もあるのですが,Yahooのアンケートでも73.6%の人が「キャンペーンを利用して旅行をしたくない」と答えているようなので,少なくともネット上ではキャンペーンに対して否定的な人が多いようです.
これらのデータを総合すると,キャンペーンによる新型コロナの拡散も心配ですが,そもそも経済効果が表れるのかが心配ですね.