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知的障害の12歳少女が性的暴行を受け2度妊娠。問われる当局の対応

宮崎紀秀ジャーナリスト
知的障害の少女への性的暴行事件があった信宜市。(同市人民政府のHPより)

 中国で知的障害者の12歳の少女が、何者かに性的暴行を受け僅か8か月の間に2度妊娠していたことが明らかになった。1度目の被害を覚知しながら、2度目の被害を防げなかった地元警察の対応などに、批判が出ている。

少女の両親も知的障害者

 この問題を詳細に取材、報じているネットメディア滂湃新聞などによると、事件があったのは、広東省にある人口約150万の信宜市。少女は、両親と兄の4人暮らし。家族4人は、いずれも知的障害があり、収入の面では生活保護を受けている。両親は、簡単なコミュニケーションしかできず、記者は事件の経緯を、少女の叔母らから取材せざるを得なかったとしている。

 今年3月中旬、その12歳の少女の妊娠が分かった。すでに9週目だった。叔母らが、病院に連れて行き中絶手術を受けさせるとともに、居民委員会と警察に通報した。居民委員会とは、地元政府の下部組織だ。

 少女は、その風貌をうまく説明はできなかったが、相手の男たちは5、6人と話した。また、手に障害のある男と、劉という姓の老人がおり、場所は、近くの路地や学校のトイレと話した。

 親戚の話によれば、警察は何人かの身柄を拘束したが、DNA鑑定の結果が一致せず、すぐに釈放してしまった。

 少女は、それまで自宅から300メートルくらいにある学校に一人で通っていたが、心配した家族は、その後、少女を学校にも行かせず、家から出さないようにした。少女が1人の時には、家に鍵をかけた。

8か月の間に再び妊娠

 ところが、先月10月下旬、再び少女が妊娠していたことが分かった。

 その1か月ほど前、少女がゴミを捨てに行くと言って家を出て行き、そのまま逃げ出して、午後11時過ぎまで帰宅しなかった日があった。父親は、はっきりとは見えなかったものの、その日、バイクで娘を送ってきた背の高い男の姿を目にしていた。

 親戚らが尋ねると、少女は、痩せて背が高く、前髪の長い男に家から1キロほど離れた草むらに連れ込まれ、バナナの木の下で暴行を受けたと話した。警察は少女を連れその現場に行ったが、重要な証拠は得られたかった。

 少女は、性的暴行を受けた男たちについて、食べ物を買ってもらったり、海鮮料理を食べに連れて行ってもらったりしたとも話した。

 1回目の妊娠の後に、警察が事態を重く見なかったと感じている親戚らの疑念に対し、信宜市の宣伝部は、「知的障害のある少女の僅かな証言は、真偽を判断しかねるものもあり、捜査を難しくしている。2回目の妊娠の後には、専門のチームを作り、範囲を広げ捜査している」という旨の発言をしている。

求められる弱者保護の仕組み

 中国では知的障害を持つ者や、親が出稼ぎに行ってしまって、農村に残された「留守児童」と呼ばれる子供たちなどが、セーフティネットにかからず放置されている現状が少なからずある。先月も安徽省で15歳の知的障害の少女が、60歳を過ぎる男など複数人から多数に亘って性的暴行を受けていた事件があったばかり。

 今回の事件では、1回目の妊娠が発覚した後に、事件を解決できなかったこと、両親に知的障害があり、保護責任能力がないのが明白であるにもかかわらず、何の手も打たれなかったことなどが明らかになり、中国メディアや知的障害者の団体などから、対応を促す声が上がっている。

ジャーナリスト

日本テレビ入社後、報道局社会部、調査報道班を経て中国総局長。毒入り冷凍餃子事件、北京五輪などを取材。2010年フリーになり、その後も中国社会の問題や共産党体制の歪みなどをルポ。中国での取材歴は10年以上、映像作品をNNN系列「真相報道バンキシャ!」他で発表。寄稿は「東洋経済オンライン」「月刊Hanada」他。2023年より台湾をベースに。著書に「習近平vs.中国人」(新潮新書)他。調査報道NPO「インファクト」編集委員。

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