ストライカーの系譜と変遷。レヴァンドフスキの決定力と「9.5番」のポジション。
得点を奪う、という仕事に終始しない。
現在、ストライカーのタスクというのは、多岐に渡っている。ゴール、アシスト、フリーランニング、ハードワーク、プレッシング…。チームに必要な一つのピースとして、稼働しなければならない。
■レヴァンドフスキの例
この夏、バルセロナがロベルト・レヴァンドフスキを獲得した。
獲得当時、33歳だったストライカーを、移籍金4500万ユーロで確保したのは驚きだった。その決断には、当初批判もあったが、リーガエスパニョーラで開幕から15試合で13得点をマークして、周囲の声をねじ伏せた。
レヴァンドフスキは、稀有な選手である。彼のプレーからは、確かなヒエラルキーが感じられる。他の選手を圧倒するような雰囲気がある。
リオネル・メッシ、キリアン・エムバペに同じような雰囲気は感じる。しかし、彼らはストライカータイプではない。そういった意味で、レヴァンドフスキというのは、やはり珍しいタイプの選手だ。
ボックス内で強さを発揮する。それがレヴァンドフスキである。決定率、ゴール前での効果性というのは、バイエルン・ミュンヘン、ボルシア・ドルトムント、レフ・ポズナンで証明されてきた。
バイエルンを離れるという決断は、奇妙なものだった。レヴァンドフスキはバイエルンで全てを勝ち取った。昨季、ブンデスリーガで34試合35得点。公式戦では、46試合50得点。1試合平均1.04得点という驚異的な数字だった。
(レヴァンドフスキの囮の動き)
(スペースランニング)
■カタールW杯とアルバレス
一方、カタール・ワールドカップで象徴的だったのはフリアン・アルバレスの台頭だ。
アルゼンチンは大会の当初、ラウタロ・マルティネスがレギュラーのFWだった。しかし、リオネル・スカローニ監督は初戦のサウジアラビア戦で敗れた後、チームに梃入れをしていく。
そのひとつが、アルバレスの起用だった。
アルバレスは身長170cmと決して大柄な選手ではない。奇しくも、マンチェスター・シティでは、アーリング・ハーランドとポジションを争っていて、スタメン奪取には至っていない。
だが、その選手を、スカローニ監督は重宝した。理由はシンプルで、走れるからである。
ハードワークを厭わないアタッカーが、メッシと相互関係を築く上で、必要だった。
9番タイプのガブリエウ・ジェズスが負傷離脱してベスト8敗退に終わったブラジルとは対照的に、アルゼンチンはアルバレスを起用しながら勝ち残っていった。
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■メッシを生かすために
アルバレスの起用。これによって、アルゼンチンはメッシをファルソ・ヌエベ(偽背番号9/ゼロトップ)に据えられるようになった。
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